一日目・食料を採集しよう⑨
「よし、それじゃあやってみますね」
説明もしてもらったことだし木の幹を引き抜く作業に移ろう。木は切り落とされて切り株になっている。
木の幹や枝が切り落とされたまま倒れているが、ひとまず置いておこう。完全に引き抜いた時に泉が湧き出るようになるかどうか、それを確認することのほうが優先だ。
水たまりに入らないギリギリの位置に立つ。軽く体をほぐして狙いを確認する。見えている二つの根っこの間だ。
中腰になってバールのようなものを構える。先ほど持ち上げようとした時に気づいたが、土は水分を含んでいるためかそれほど硬くはない。木の下に差し込むことができれば、バールのようなものを奥まで入れることができるだろう。木に当ててしまったら痛いかもしれないが。
目をつむって一つ息を吐いた。
「えいっ!」
意を決してバールのようなものを突き入れた。
ばしゃりと水しぶきがあがり、水滴がほおに当たった。
バールのようなものがズブリと土の中に入り、先端が木の下に潜り込んだ。
木に当ててしまうことを恐れて少し力を弱めてしまったが、無事に差し込むことができたようだ。
「よし、うまくいった」
バールのようなものは土の中に深く刺さり、しっかりと固定されたようだ。次はテコの原理を利用して木を持ち上げよう。
いや、その前にやることがあるな。
「む、どうかしたか?」
バールのようなものから手を離し、革袋から燃えろノコギリを取り出した俺に、リリティアさんは怪訝そうな顔をした。
「いえ、少し下準備をしようかと思いまして」
そう言って俺は、切り倒した木の幹を燃えろノコギリで適当な大きさにカットした。切り倒された後の木にも問題なく使えるようだ。木の成分を感知しているとか、そういうものなのかな?
ついでに切断面の中央に切り込みを入れる。幅はバールのようなものの太さよりも少しだけ大きい程度だ。
「ふむ、そういうことか。考えたな」
リリティアさんは満足そうに頷いている。意図を察してくれているようだ。言わなくても察してくれるというのは嬉しいものだ。
加工した木の幹をバールのようなものの下に滑り込ませた。支点の位置を考えると、大きさはもう少し大きくてもよかったかもしれないが問題ないだろう。切り込みもいい塩梅だ。
実際に幹を引き抜く作業に入るまでに少し時間がかかってしまったが、そろそろ作業を開始しよう。これで実際に水が湧き出ればありがたい。水の確保という喫緊の課題をクリアできることはとても大きいのだ。