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森林開拓日誌  作者: tanuki
猫目石
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九日目・洞窟②

 「インストール中って出て、操作が何もできませんね」

 「専用端末は初期設定を自動で行ってくれるが、少々時間がかかる。しばらくはそのままだろう」

 リリティアさんにそう言われたので、専用端末を袋にしまって放置することにした。

 待っている間、マナポイントを貯めるために木々を伐採することになった。専用端末は一定時間操作されないと、勝手に待機モードになるらしい。だから、初期設定を行っている状態で放っておいても構わない。

 間引きも兼ねているので、神の門でまとめて処理するという方法は採らない。マナを吸収した木材は使っていない小屋に放り込み、わかるようにメモを挟んでおく。こうしないとマナを含んだ木材と、マナが空になった木材とが区別できない。リリティアさんは見ただけでわかるらしいのだが、俺にはそんな芸当はできない。マナを扱えるようになったから、わかるようになっていくかもしれないと言われたが、どうなんだろうか。

 間引き作業を続けていくと、少しずつポイントと木材が貯まっていく。この木材の利用法も、今後考えていかないといけないな。例外はあるらしいが、一定量のマナを含んでいないと、神の門の材料として使用することができないらしい。神の門を使わずに木材を利用するとなると・・・どうしていいか何も思いつかないな。木材はシャールの町ではそれほど価値がないらしいから、わざわざ売りに行くのも微妙だ。

 薪にでもするか?そもそも薪自体を使うことがないか。森の中だしバーベキューとかをするなら使えるかな?いや、それなら炭を使いたいか。木材を炭に変えられればいいけど。

 燃やすという方向で考えるならキャンプファイヤーもありだな。それならある程度薪を使えるかもしれない。いや、ダメだな。2人でキャンプファイヤーをやっても盛り上がらない。ユナさんに参加してもらっても、最大で3人か。キャンプファイヤー案はボツだ。

 「ある程度ポイントも貯まってきたな。そろそろ何か交換してみるか?」

 木材を小屋に運び入れていると、リリティアさんがそう言った。作業の手を止めて専用端末を取り出し、スイッチを入れる。

 2等級と書かれた場所をタップする。次に現れた文字は、「オーダーメイド」と「ポイント交換」だった。ポイント交換をタップする。

 ・・・この専用端末、本当にタブレットと同じだな。

 「結構色々ありますね」

 「ああ。ポイント交換できるものだけで十分生活できるくらい、種類は豊富だ」

 今表示されているのは、商品カテゴリーを選択するページだが、カテゴリーだけでも10種類以上ある。食料品や衣料品などの日常的なものから、家電や医療品など幅広く取り扱っているようだ。

 「さて、何を交換しましょう。リリティアさんは何かほしいものとかありますか?」

 「そうだな・・・そういえば、爪切りとクッキングシートがなかった。それと、エチケットセットも頼む」

 エチケットセットというのは、鼻紙やウェットティッシュなどがセットになったものだ。外出時に使うもののようで、携帯用のコンパクトサイズと説明がされている。

 こうやって商品一覧を見てみると、これは家になかったなと気づくことも多い。リリティアさんが言ったものと、耳かきとタオルを交換した。タオルは枚数が少なかったから、補充ができてよかった。

 「思いつくのはこれくらいですかね。まあ家電でほしいものはいくつかありますが・・・」

 「さすがにマナが全然足りないな」

 洗濯機や冷蔵庫があると助かるのだが、今あるマナポイントと比べると桁が2つ違う。

 「じゃあこんなもんでいいですかね」

 「・・・私的に欲しいものがあるんだが、交換してもらってもいいか?」

 リリティアさんがおずおずと、遠慮がちに言った。

 「トリートメントが欲しいんだ。あまり手入れができなくて、髪が傷んできてしまってな」

 「わかりました。交換しましょう」

 「いいのか?ありがとう」

 快諾すると、リリティアさんは嬉しそうにしていた。

 リリティアさんが希望したトリートメントは、結構なポイントが必要だった。具体的には、残りポイントの8割以上だ。だが、リリティアさんが喜んでいるので、決して無駄だとは思わなかった。

 家の近くに戻って魔法陣を描く。ポイント交換用の魔法陣だ。注文画面を表示した状態の専用端末を置いて魔法陣を起動すれば、商品を送ってくれるらしい。

 魔法陣を起動すると、いつもどおり魔法陣が眩しく光り輝いた後、注文した商品と専用端末が置かれていた。

 「おお、交換できましたね」

 注文した商品は、透明の袋で一つにまとめられていた。トリートメントとクッキングシートは、箱詰めされている。タオルも個別包装してほしいところだが、されていなかった。一番安いタオルだからだろうか。

 「よし、では片付けてこよう。その間、お前は休んでいていいぞ」

 交換した商品の整理を、リリティアさんが引き受けてくれた。

 リリティアさんはああ言ってくれたが、いない間も作業を続けよう。今日は特にやることがないので、明るいうちはずっと間引きがてらにマナポイントを貯めてもいいかもしれない。

 「こんにちはー」

 そう思っていると、後ろから声をかけられた。

 驚いて振り返ると、そこには2頭の鹿がいた。

 「君がウンディーネのお姉ちゃんが言っていた人間かな?」

 ・・・鹿が喋ってる!?

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