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森林開拓日誌  作者: tanuki
猫目石
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七日目・完成、ユナハウス⑬

 ログハウスが完成した。神々の技術を使っているので、ログハウスとは異なる工法なのかもしれない。けれど、丸太を壁材に使用して屋根も木製だ。ログハウス風建築物と呼ぶべきなんだろうけれど、呼ぶには長いしひとまずログハウスと呼称しておこう。

 「早速、中に入って内装を見てみましょうか」

 階段を上がって、玄関扉に手をかけた。

 「そういえば、鍵はどこにあるんですかね」

 小屋の時は敢えて、鍵のないものを作った。鍵がある小屋よりも、魔法陣が簡単で必要な材料も少なかったからだ。それに、どうせ人なんて近くにいないだろうと思っていたし。だが、今回は住居用の建築物だ。さすがに鍵くらい付いているだろう。施錠されているならば、鍵がないと入れない。

 「玄関に下駄箱があり、その上に鍵が置いてあるはずだ」

 人間モードに戻ったリリティアさんがそう教えてくれた。

 「そうなんですか。じゃあ最初は開いてるんですね。なら入りましょうか」

 玄関扉のドアノブはレバーハンドルだ。下に下げて引くと、当然だが扉が開いた。木製の厚い扉だが、全く抵抗がなくスムーズに開く。一人暮らしをしていたワンルームマンションの扉は、開けるとギシギシ音が鳴ったことを思い出す。新築と築40年の賃貸住宅を同じように考えてはいけないが、こういう細かい部分からも神々の高い技術力を感じる。

 玄関を入って右手側に下駄箱があり、その上に鍵があった。鍵は2つあり、リングで繋がっている。鍵の表面には、いくつもの穴がある。実物を見たことはないが、日本ではディンプルキーと呼ばれるものと同じようだ。

 今立っている畳2枚ほどスペースだけ、床の材質が異なっている。スリッパが4足置かれていることから、土足で上がるのはこの畳2枚のスペースだけということなのだろう。

 「ここではきものをぬいでください」

 ユナさんはキョトンとした目で、リリティアさんは何言ってるんだこいつはという目でこちらを見た。ジャパニーズジョークだから、さすがに通じるわけないよね。ここでは着物を脱ぐわけないし、そもそもユナさんは履物を履いていない。素足で森を歩くのは危険ではないかと思うのだが、水を薄くまとっているから大丈夫なのだそうだ。水を操る能力って便利だなぁ。

 スリッパを履いてリビングへ。このスリッパも中々の履き心地だ。足にピタッと張り付くような感触で歩きやすい。にも関わらず、脱ぐ時は簡単に脱ぐことができる。高級感はないが、品質の高さを感じる。

 「リビングは・・・広いですね」

 「確かにそこそこの面積はあるが、広く感じるのは何もないからだろう」

 広いリビングに家具の類が一切置かれていないため、寒々しさすら感じる。

 キッチンも家具家電が殆どなく、二口コンロだけが付いている。家にあるコンロと同じものだろうか、とてもよく似ている。

 「火を使うことが滅多に無いので、わたくしではこの広いキッチンを持て余してしまいそうですね」

 「料理をしたい時だけ使ってもらえばいいですよ。元々、家自体が別荘のように使用してもらうために作ったんですし」

 そんな話をしながら、キッチンを離れた。次は2つの部屋だ。この2つの部屋は見るべきところは特になく、ただ壁で区切ってあるだけの空間だ。床材も壁材も今までと同じで、照明は1つずつ付いている。

 「そういえば収納スペースがないですね」

 6畳ほどの部屋だが、どちらにも押入れやクローゼットのようなものは見当たらない。

 「元々、長期滞在用に作られた家じゃないからな。物置部屋1つで十分と判断されたんじゃないか?もっとも、その物置部屋は設計変更してしまったが」

 その通りだ。あまり設計に手を加えなかったが、物置部屋は別の設備にした。次はいよいよ、それを確認する。

 「おお、割と本格的じゃないですか。日本にあるのとほぼ同じだ」

 「これが、サウナというものなのですね」

 4畳ほどの物置部屋を、サウナに設計変更した。以前に浴室を作った際、ユナさんは入浴を気に入ってくれていたようだった。それで俺が、サウナはどうかと提案したのだ。収納スペースは減るが、隣の2つの部屋は使う予定がない。この2部屋を物置部屋にしてもいい。そもそも、ユナさん自身に持ち物が少ないので、それほど広い収納スペースは不要だ。

 「サウナ室を作ったのはいいが、肝心のサウナストーブも何もない。今はまだ、ただの狭い部屋でしかないな」

 リリティアさんの言う通りだ。作ることができたのはサウナ室だけで、実際に温めるための道具類までは備え付けられていない。それは今後、材料を集めて神の門で作る必要がある。だから、「今はまだ」、使えない空間だ。

 「さて、家の中は大体見たので、家具作りに取り掛かりましょうか。この家にマッチするものを、3人で選びましょう」

 建物だけではただの空間だ。サウナストーブのないサウナ室がいい例だろう。まずは、リビングとして作られた空間を、リビングとして使える空間にする。そのために必要な家具を用意しよう。

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