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森林開拓日誌  作者: tanuki
猫目石
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七日目・完成、ユナハウス⑧

 「ふむ、やはり量が足らないな。今ある量と同じくらいは必要だろうな」

 ログハウス予定地に並んだ木材を見て、リリティアさんが言った。今ある木材は、小屋に残っていたものと、食器棚を作った際に返却されたものだ。これと同じだけ集めるとなると、一体どれだけ木を伐採しないといけないだろう。木の太さにもよるが、30本くらいは必要かな。

 「それなら、神の門で一気に木材を集めてしまいましょうか。ついでに家具を作れますし」

 「いや、少々手間だが、一本一本伐採しよう。バールのようなものを使って、根っこから引き抜いてくれ。樹木の間引きにもなって丁度いいだろう」

 神の門を利用して家具を作り、ついでに余った木材を回収する。そうすれば一石二鳥だと思うのだが、リリティアさんがそう言うのならば仕方がない。家具に必要な量も伐採するとなれば、40本くらいだろうか。結構時間がかかりそうだ。

 「木々を伐採することは不可能ですが、つる草などを取り除くくらいならばできます。そちらは、わたくしにお任せ下さい」

 ユナさんもこう言ってくれているので、頑張るとしよう。元々、ユナさんへのお礼だ。面倒がってはいけない。

 「上は私がやるから、お前は燃えろノコギリで木を切り倒せ。ユナは私をつる草の近くまで上げることと、切り倒す方向の微調整を頼む」

 今回も、高所作業はリリティアさんの仕事となった。ワンピースを着たユナさんには高いところへは上がらせられないという、リリティアさんの配慮だ。俺は木を切り倒して、根っこを引き抜くのが仕事だ。一緒につる草を切れば速いと思ったが、それはしなくていいと言われたため、切り倒せるようになるまで待ちである。

 水に持ち上げられたリリティアさんが、5メートルくらいの高さでつる草を切っている。時折、ユナさんに位置を変えるようお願いしている。俺はやることがないので、水を操作しているユナさんを眺めていた。

 水色の長い髪、整った顔立ち。神話に出てくる泉の精というイメージそのもののようだ。そして、ゆったりとしたワンピースの下からでも大きな存在感があり、目が引き寄せられる2つの膨らみ。

 そういえば、上は着けていないようだったな。となると、気になるのはやはり・・・。どうなんだろうか、非常に興味がある。気にはなるけれどさすがに聞けないし、よもや見せてくれとは絶対に言えない。さり気なく斜め後ろから凝視してみても、さすがにわからなかった。あまり見つめていると、上にいるリリティアさんに気付かれる恐れがある。あまり長時間見ることはできない。

 下着問題も気になるが、あのワンピースについても気になる。ユナさんがこの森に住み始めて、170年くらいという話だ。シャールの町に買いに行っているとは思いにくいし、元々住んでいた場所はかなり遠いと言っていた。この森で布が手に入るとも思いにくい。まさか、ずっと同じワンピースを着ているのだろうか。170年も着続けられる服があるとは思いにくいけれど。

 「そう言えば、この前町に行った時なんですけど、服を買いに行ったんですよ。その時、今履いているズボンに店員さんがすごく興味を持ったみたいで、値引きするからもっとよく見せてくれって言われたんですよ」

 「あらあら、そんなことがあったんですね」

 「はい、結局銅貨10枚もの値引きをしてもらいました。それで気になったんですけど、この服装はこの世界だと珍しいんでしょうか。シャールの町では結構ジロジロ見られてるな、とは思ってたんですけど」

 正確に言えば、今履いているジーパンは町へ行った時とは別のものだ。だが、似たようなジーパンだし、同じものと言ってしまってもいいだろう。

 「わたくしはこの世界の全ての地域を知っているわけではありませんから、正確なことは言えません。ですが、オストーンやその周辺の国々では、今の守くんの装いは珍しいでしょう」

 「なるほど。それでジロジロ見られてたんですね。ところで、服というと、ユナさんの着ているワンピースなんですけど・・・」

 「あら、これがどうかしました?」

 今までの会話は、この話をするための導入だ。いきなり服の、それも肌に直接身に着けているものの話をするのは躊躇したからだ。それで、ワンクッションあった方がいいだろうと、ジーパンの話を持ち出したのだ。

 「どこで手に入れたのかなと、ちょっと気になりまして。確か、170年くらい前からこの森に住んでいるんですよね?手に入る場所があるようには思えなくて」

 「そうですね。この森のわたくしが知っている範囲には、店などの建物は存在しませんね。行商人も通るような所ではありませんし」

 「では、自分で作ったんですか?それとも、どこかへ買いに行っているんですか?」

 「いえ、どちらも違います。この服はウンディーネの里で作られたもので、里を離れた時から着ております。少々特殊な技法で厚めの生地にしておりますが、人間の衣服と大きな違いはありません。わたくしは糸を紡ぐことも布を織ることもできませんので、他のものに作ってもらいました」

 「170年も着られるんですか?普通ならその半分ももたないと思いますが」

 170年も同じ服が着られる。そんなことが可能なのだろうか。毎日同じ服を着ているようだし、なおさらすぐにダメになりそうだけど。

 「服に薄く癒やしの水をまとわせることによって、生地が傷むことを防いでいるのです。そうすることで、擦れて破れてしまうことや、経年劣化による摩耗を抑えております。そして、汚れも防ぐことができるので、洗濯をしなくても清潔にしていられます」

 「なるほど。癒やしの水は服にも効果があるんですね」

 「ええ。植物から採ったものにも、毛皮などの動物から採ったものにも使えます。他にも、生き物に由来するものであれば、大抵のものの保存状態を保つために使えます。守くんの頼みならば用意しますから、必要があれば言って下さいね」

 「ありがとうございます。必要な時は是非お願いします」

 もう既に大量に貰っているのに、そう言ってくれるのが嬉しい。

 「つる草は全部切り終わったから、この木を切り倒してくれ」

 ユナさんと話しているうちに、リリティアさんの作業が終わったようだ。

投稿した後で気が付きましたが、これが丁度100部分目になります。何度も同じことを書いていますが、本当に閲覧して下さる皆様が投稿の励みになっております。今後ともお付き合いいただけましたら幸いです。

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