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今度の転生先でとうとう人外になってしまったんだが  作者: 味付きゆで卵
部族戦争の章
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第3話「交わされた約束」

「敵は1体!それも何故か回避に専念している!相手が竜種でも勝機は充分にある!魔力切れになった者は後ろに下がって魔素薬(エーテル)で魔力を補充しろ!反撃の隙を与えるな!」


 指揮をするとどんどん兵士が入れ替わっていく。

 熱を集めて熱線として放つ『放熱魔術(ブラスト)』。竜種の装甲が相手ではあまり効果はないと踏んでいたのだが…回避に努めてくるのは以外だった。

 未だに当たっていないもののいつかは当たるだろう。ジワジワと削って行けば良い。

 このまま押し切れば行ける。勝てる。そう思っていた時だった。


「だ、団長!小飛竜(ワイバーン)が消えました!」


「消えた…だと!?」





『左下に降下、その後右に移動してください。』


どわっ!っとと…危ねぇ危ねぇ…全く…いつまで続くんだ…?


『…隊長格がいるようですね。なかなか対処法が上手い。ローテーションもしてますし半永久的に止まないと思いますよ?』


半永久的に…って嘘だろ!?じゃあどうすんだよ…逃げるしかないじゃん…。


『…村の中に入ってみては?迂闊に攻撃はできないでしょうし話をする時間ぐらいは得られるでしょ。…多分。』


いや、どうやって入るんだよ。そこが問題だろ。姿でも消すのか?


『姿を消しても(ホーク)(アイ)持ちがいますからね…3分もすれば微妙な光の変化でバレますよ。いっその事火炎弾で纏めて…』


駄目に決まってんだろ。それしたら交渉する余地が無くなるかもしれないだろ。平和的に行きたいんだよ。


『攻撃されてる時点で平和的も何も無いような気もしますが…解りました。じゃあ隠蔽(ステルス)で姿消して上空…大体1km位まで…出来れば村の真上に飛び上がって下さい。』


姿消しても無駄ってさっき……まぁいいか…平和的に頼むぞ?…『隠蔽(ステルス)


 そう頭の中で唱えると自身の周りにガラスのような膜が現れる。光をどうにかして姿を消しているんだろうか?魔術が使えるのはいいがどういう仕組みなのかは良く分からない。




さて、指示どうり村の真上に来たが…どうするんだ?


『魔力探知の範囲はだいたい半径800m…あの放熱魔術はだいたい10秒ぐらいの詠唱が必要です。まぁ魔術全般いるんですが。』


そうなのか…?じゃあ俺が一言で使えるのは…


魔素(マナ)属性のおかげですね。さて、ここまでくるのに何秒かかりました?』


…15秒くらい?


『…ですね。今から村におりるんですが…減速して着地することを考えると普通にやると20秒とちょっとかかります。まぁ別に攻撃されても大丈夫でしょうが無傷に越したことはありません。ですので…『加速(アクセル)』使って加速…村から300m上で魔術による加速を解除して減速し始めて下さい。』


俺魔術のコントロールとかできないよ…?


『解除する意志があれば大丈夫ですけど…不安なら解除って頭の中で唱えてください。』


おけおけ。んじゃ…やりますか!





「あんなでかい生物が消えるはずがない…どこにいった…」


 魔術で消えた…?いや馬鹿な。詠唱をすれば魔力が集まるし探知出来る。それに言葉として口に出さない詠唱だ。数十秒はかかる。早すぎる。一体どんなトリックを…


「団長!高速で接近する生物が…この形状は…わ、小飛竜(ワイバーン)です!速い…速すぎる…あと6秒ほどで村に辿り着きます!」


 馬鹿な。ありえない。いつ上空に行った。それに3秒?速すぎる。魔術でも使わなければ無理だ。

 まだ消えて40秒程しか経っていない。上空まで…探知の範囲外まで上がるのに15秒はかかる。やはり詠唱が早すぎる。


「迎撃の容易だ!」


「駄目です!『放熱魔術(ブラスト)』は間に合わ…」


「解っている!剣を抜け…白兵戦だ!」


「相手は竜種ですよ!?勝てませんよ!無駄死にするだけです!」


「それでも我々はこの村を守る義務が──」


 ドシン!という巨大な音が会話を遮る。直後に吹き荒れる風。そして目の前に現れた巨大な生物。

 そいつと目を合わせて始めて解った。勝てるはずがない。あぁ、こいつが小飛竜(ワイバーン)…これが竜種か。王女よ、申し訳ありません。私はもう────




なんかみんな黙ってますけど…


 この反応は予想外だった。てっきり「邪竜め、成敗してくれる!」とか言われると思っていたのだが…


『威圧の効果ですね。種族値+経験値量の合計÷10ですから…経験値が無くても竜種ともなればエルフや人間くらいこんなものでしょう。戦闘も最近ようやく過激化してきたみたいですから経験値が少なかったんじゃないですかね?』


は、はぁ…よく分からんな…まぁでもこれで話は出来るんだろ?


『出来ると思いますが…とりあえず威圧を切ってみては?』


ON/OFFないからやり方わからんぞ…


『うーん…回りに漂ってる威圧のオーラを自分の回りに留めるイメージで…』


イメージしづらいな……こんな感じか?ふんっ!


 なんとなく出来たイメージを頭に浮かべ、力んでみる。果たして出来ているのだろうか?

 

『なんだ、出来そうに無いとか言っておきながらすんなり出来てるじゃないですか。面白くない…わざわざイメージしにくい言い方したというのに…』


まぁ俺の才能にかかればね?お前の策になんぞはまらんわ!


 まぁ偶然なんですけどね?と、そんな事はどうでもいい。兵士達をチラッと見てみると全員…いや、1人を除いてみな腰が抜けたかのようにへたりこんだりしていた。

 唯一、目の前の女性だけが立ち、剣を構えていた。まぁ仕方ないわな。いきなり威圧してくるような奴だもんな。とりあえず【変体(メタモルフォーゼ)】で声帯を作ってみる。


「あ〜…っと…」


「なっ、小飛竜(ワイバーン)が喋った!?」

「マジかよ…」

「魔術か…?でも詠唱が…」

「…声可愛くね?実は美少女なんじゃ…」

「馬鹿!罠に決まってんだろ!」


 とりあえず声を出すとへたりこんでいる兵士からどよめきが起こった。いや、なんかおかしい奴もいたけど。


「…この村になんのようだ!あいつの命令で村でも落としに来たか?邪竜めが…命と引換えてでも仕留めてくれるわ!」


 うわ、なんかものすごい剣幕で睨まれた。

 邪竜…に見えなくもないからそれは否定出来ないがあいつというのはなんだろう?ほかの種族とあったのはこれが初めてなんだが…


「…何か勘違いしてるようだけど…あいつが誰か知らないし俺は誰の命令も受けてないよ。」


「とぼけおって…」


 駄目だ。話にならん。とうとう剣を抜かれた。後ろは後ろで俺口調で話した途端一部のやつがなんか騒いでるし…どうすれば…


「大丈夫ですよ、モナーク団長…その方からは悪しき気は見えませんし繋がりも見えません…何か他の目的があるようですがね?」


 横から聞こえてきた声に、そちらを振り向いてみると見るからに可憐な女性が現れた。

 風に棚引く金髪に美しい顔立ち。そして低身長ながら街中にいたら振り向くであろう豊満な体付き。わざと見せてるかのように谷間の見える洋服。やべぇな、これ。体が男…というよりは雄じゃなくて良かったと思う。まぁあるかどうかは知らないが多分息子が反応してた。

 周りの人や剣を抜いた女性が驚いてる所を見ると…


「ご察しの通り、この村を納めているものです。器量はまだまだ何ですが…」


 考え読まれた。あれ?心読めるって事は…


「その…申し訳ありません…予想出来なかったもので…」


 そう呟くと、頬を染めて、顔を逸らした。この反応からして…いや、下衆な野郎ですみません…ほんとごめんなさい。


「何はともかく…モナーク団長、剣をお下げ下さい…」 


「…王女様がそう仰るのであれば…」


 そういうとすんなり剣を納めた。信頼凄いんだな…


「さて、次は…貴方様の目的をお伺いしたいのですが…あ、隠し事は無用…というよりは無意味ですよ?」


 でしょうね。心読んでましたし。いきなり村を貰いに来ました、なんて言いづらい所じゃないが、腹を括るしかないようだ。


「えーっと…村を貰いに来た…みたいな?」


「なっ…!?」

「やっぱり侵略者じゃないか!」

「なんてこった…」


 ざわめきが起こる。まぁいきなり「住処貰いに来ました」なんて言われたらそうなるわ。


「…なぜこの村を?」


「あ〜、いや、国を作ろうと思って…まずは拠点として村の長になって国にしてこうって風に考えてて…近くの村に行こう、って事でこの村に…」


「…虚偽は無いようですね…解りました。…取引致しましょう」


「取引…ですか?」


 一体何と何を取引する気なんだろう。命、とかだったら絶対断るんだが…


「…この村を貴方に明け渡し、我々は貴方の…いえ、貴方様の配下に下ります。…そのかわり、この村に降り掛かっている災厄を取り除いてほしい。」


 …は?正気だろうか。名前も知らない奴に他に人が住んでる住居を明け渡すだけでなく、他人まで巻き込んで配下になると言っているのだ。騒ぎ用からしてやはり信じられない行為なんだろう。


「なっ…王女様、正気ですか!?このような者に国を明け渡すだけでなく、軍門に下るなど…」


「モナーク団長、貴女の言い分も分かります。いきなりそのようなことを言われれば、混乱もするでしょう…ですが、貴女も解っているはずですよ?この村や人々はいずれ魔の手に落ちる…それならば誰に渡そうと同じこと。速いか、遅いかだけです。」


「で、ですが…」


「…それに、私はこの方の背後に光明を見たのです…この方ならきっと間違った道には進まない、と…」


「…解りました。王女様がそこまで仰るのであれば我らも信じて付き従いましょう…貴様ら、異論は無いな?」


「全員異論などありませんよ!」

「王女様が仰るなら大丈夫だよな!」


 何やらしばらく口論をしていたが、結論は出たようだ。…しかし本当にいいんだろうか?


「あーっと…俺は別に予想以上の成果が得られるから良いんだけど…あんたらはいいのかい?こんなことを俺が言うのもなんだけど…言い出した王女様はともかくわざわざアンタらがなる事は無いと思うんだが…」


「我らは女王様に付き従う剣であり盾。異論など無い。その変わり…どうか約束を果たしてほしい。」


 俺がそう言うと先程から団長、と呼ばれている人物が片膝をつき、頭を下げながらそう言った。まぁ俺としては予想以上の収穫なのだ。別にいいだろう。


「よしっ…解った!約束は果たす。その変わり、今日からお前らは俺の配下だ。今更嫌だとか言っても知らんからな!」


 そう言い放つと皆が片膝を付き、頭を下げる。こうして俺は三種類の種族が住む、アルシィラ村の長になったのだった。



 後に名前を変え、世界有数の大国となるのだが、それはまだまだ先のお話…。

魔術と魔法の区別をつけるために魔術は『』魔法は【】で表記いたします。

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