プロローグ『あってはならない最大の失敗』
-西暦2123年-
世界初の人造人間が天才科学者・テルヨシによって生み出され、世界中はそのニュースで持ちきりになる。
テルヨシ博士はそれからも次々に人造人間の開発に成功し、世界から賞賛の嵐を浴びることになる。
次第に彼には沢山のスポンサーが付き、一度の研究にも多大な額の研究費をかけるようになっていった。
そして…
-西暦2145年-
テルヨシ博士は数々のスポンサーから集めた総額2兆円を手に、かつてない壮大な研究に挑んだ。
22年という歳月をかけた全ての集大成であるカツヨシを完成させるため、ほとんど寝る間も惜しんで研究に没頭した。
そう、前代未聞の最高傑作になる……予定だった。
「ふぉっふぉっふぉ。ワシの可愛い可愛いカツヨシ、ようやくあと少しでおまえとご対面できるのう」
テルヨシは口角がニヤつくのを抑えきれず、怪しい笑みを浮かべながら作業を進める。
「テルヨシ博士、最終チェック整いました!あとは核となるチップを埋め込むだけです!!」
研究員の一人が意気揚々と報告する。
「カツヨシ、おまえはワシの最高傑作じゃ。今からお前に心を入れてやるでな」
テルヨシは核となるチップに手を伸ばし、カツヨシの頭にそれを埋め込もうとする……その時!
「はっ…」
「?」
研究員は不可解なテルヨシの言葉に首をかしげる。
「博士、どうかされましたか?」
「はっ………!」
「ん?」
「ハックショーーーーーーーイ!!!」
その瞬間、博士の痰がカツヨシの頭とチップの間にべちょっと付着し、そのクシャミの反動でチップがガチッと埋め込まれる。
カツヨシにおかしな電流が走る。
ガタガタガタ、プシュー……ボッカーン!!
カツヨシの爆発とともにあたりは爆煙に包まれた。
「カツヨシ!ワシの愛しのカツヨシ!!」
テルヨシはあたまがチリチリになりながらもカツヨシの名前を呼び続けた。
「ン…アなたはダァれ…?」
カツヨシが口を開く。
「ワシはテルヨシ博士じゃ!おまえの生みの親じゃ!」
「テるヨシはかセ?」
「そうじゃ!それよりおまえ、さっき爆発したが本当に大丈夫か?」
「タぶン…だいジョうブ」
ほっとしたテルヨシの肩を研究員が顔を真っ青にしながらポンポンと叩く。
「なんじゃ?どうした?」
「それがですね…非常に言いにくいんですが……」
研究員はテルヨシに耳元でゴニョゴニョ囁く。
「なんじゃと!?」
テルヨシはカツヨシに取り付けられた電極の元にある計測装置の数値を見て口をあんぐり開ける。
「そんなバカな!ワシの最高傑作であるカツヨシの生態パラメータが一般の人間以下じゃと!?」
「ン?ドウしタの?」
カツヨシはあどけない顔でテルヨシを見ている。
「失敗じゃ……」
いつもご覧頂きありがとうございます!