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震緑
鋭い現実を包み込む
その豊穣さを
確かに私は
知っていたはずなのに
気が付いたら
穴の空いたバケツになって
止められもしない雨が
通過していく
偽りの皮
幼子が活けた花に憧れて
窓越しに唱える
私の人
もう
絞り出せる心がないわ
焼ける喉から
煙が舞って
嘘つきね
カフェインを慰めにして
都市から都市へと渡り鳥
味気ないグラスから落ちた
雫が一滴
お決まりのスーツに滲みて
消えていった
◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆
駆けるうちに
体から出ていったものを
ときどき思い出すのよ
それは青春
とかいうものだったわ