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憧憬の……
とんびの鳴く声を
呆然と聞く
藤波の揺れる幻
病葉はまた増えて
かぼそい雨の
恵みを乞う
黒い斑
ふわふわと甘い
クチナシの香に
酔うようで
ざっくりと消えた
水の気配
何の罪咎で、
いや
罰なのか、
無関心
だった
そこにある
はずの輝き
命の尊厳を
ゴミのように、捨てて。
箱の中で朽ちた亡骸
受け取れなかった
想いの名を
くちびるで紡いだ
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空梅雨に咲く
彼の花は
色移りもせず
やつれて
足りぬままの
ひとの心
在りし日だけ
残した光