63/100
氷雨 (散)
指が切れるほど寒い。割引を狙って買い出しに出かけた午後9時過ぎ、川沿いの道を下りながら早くも後悔が芽生えていた。漆黒の空に雲は見えないが、いやに風が水を含んでいる。傘を忘れたことを確認して、足早にスーパーへ向かった。
ちらりと視界の端をかすめる白、振り向けば花が散るよう、しかしそれも胡蝶の夢。ばたばたと霙が肩を打つ。触れた先から凍るようで、慌てて店内へ逃げ込んだ。誘蛾灯のごとく赤いシールに引かれ、ふと我に返る。限られた予算。重複を弾いて、レジに回る。いつもの金額にほっとして外を見やると、雨はまだ降り続いていた。
散文詩?