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Rouge
ちろちろと、赤い舌。
官能のふりをして、反らした目。
狂うほどに君の言葉が過る。
塗り潰した感情。
愛、と君は言い切った。
吹き消されそうな嵐の中で。
ーー男は存外敏感らしく、何度も私を振り向かせた。
遊びの癖に。
子ども染みたライバル心。
気になるなら聞かなければいいのにね。
綺麗と呟くその中に、私はどれだけいるのでしょう?
首を傾げてキスをねだる。
虚しさが振り切れて、帰る算段を始める脳内。
少しでも長くいたかった君と、とっとと帰りたいこの男と。
馬鹿ね、私。
埋め合わせにもならない。
中途半端な始まりは、中途半端な終わりしか迎えなかった。
伸ばされた手をすっと避けて、口紅をひいた。