表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔族の少女と青年兵士の物語  作者: 黒斬行弘


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/11

イリーナ救出作戦

 間一髪と言うのはこういう事を言うのだろう。ランディーは心底ほっとしていた。


 リサーナが誰かの声が聴こえるといった瞬間、神経を集中させたレオンがイリーナの居場所と、そして他の何かが動いている音を察知したのだ。


 急いで馬を走らせると、イリーナに襲いかかろうとしていたポイズナーを発見した。


 レオンはすぐさま魔法の詠唱を開始した。爆発力は少ないが、視覚効果と聴覚に及ぼす影響を最重要視したチョイスだった。


 とにかく、あの毒蜘蛛の注意をこちらに向けなければならない。まずはそれからだ。


 レオンは完成した魔法を、すぐさまモンスターの付近へと狙いを定めて開放した。そして彼の狙い通り、モンスターの側で爆発した魔法は、イリーナを何一つ傷つけること無く、毒蜘蛛の注意だけをレオン達に向ける事が出来た。


 そして直ぐ様、リサーナは周囲を明るく照らすライトの魔法を上空に掲げた。これで少しは戦いやすくなるし、この光を見たウェイン達が来てくれるかもしれない。


 「リサーナ!レオン!パビエル!あと、人間の兵士君!」


 イリーナは無事だった。かなり疲れきった顔をしてはいるが、恐らくは走り続けた疲労によるものだろう。


 「イリーナ!少しだけ待ってて!」


 リサーナは、そうイリーナに告げると、魔法の詠唱の準備に入る。


 しかし、あの毒蜘蛛がイリーナの側から離れずにいるので、どういう組み立て方で戦闘に入ればいいのか、正直レオンとパビエルは悩んでいた。


 ポイズナーという生き物はみかけによらず頭が良い。他のモンスターならエルフを見かけた瞬間襲いかかっていくだろう。しかし彼らは、相対する敵の能力を見極めようとするのだ。そして最善の行動を取ろうとする。


 「イリーナが無事なのは幸運だったが、これは難しいな・・・」


 「なんとかして回り込めないでしょうか?」


 イリーナの言葉にパビエルが反応する。


 「じゃあ俺が行こう。昔レンジャー部隊に居た時にこういう訓練は受けてある。」


 「頼む。だが気をつけろよ。」


 「おうよ。」


 そう言いながら、パビエルは後方に静かに移動していく。一旦見えない位置まで下がってから回り込むつもりらしい。


 「さてと、ではあのクモの注意をこちら側に惹きつけますか」


 そういうと、レオンはランディーとリサーナに、左右に適当で良いので移動を繰り返すよう指示する。とにかく、敵の注意を引きさえすれば何でも良いとの事だ。


 なので、ランディーとリサーナは、横に動いたり、時には前へ出てみたりと、一見意味不明な行動を繰り返していた。


 「よし、そのまま続けてくれ。クモのやつ、案の定こっちに気を取られている」


 ポイズナーは、前に横に繰り返し動いているリサーナと、そしてパビエルが回りこんだのとは反対側で魔法の光を消したり付けたりしているレオンに完全に注意を取られていた。


 それを見たパビエルは、この作戦の成功を確信した。そして、ついにイリーナの背後に回りこんだその時だった。


 「イリーナ!」


 イリーナの背後に迫っていたパビエルのさらに背後から声が聞こえたのだ。


 それは、リサーナが上空に掲げた魔法のライトに気付いたウェイン達一行だった。


 そしてその声は、パビエルだけでなく、ポイズナーにも聞こえていた。このクモが、ウェインの声に気付き振り向いた時、そこにはパビエルが迫っていたのだ。


 ポイズナーは焦った。そして焦りのあまり、パビエルとポイズナーの間に、苦労して手に入れた獲物であるイリーナが居ることも忘れて毒を吐こうとしていた。


 (まずい!)


 このままではイリーナまで巻き込んでしまうと判断したパビエルは、咄嗟にイリーナの真後ろから横方向へとジャンプした。


 「シャアアアアアアアアアアッ!」


 その瞬間、横方向へジャンプしたパビエルに向かって紫色の液体が吐かれた。


 「あっっぶねえ!」


 本当に危なかった。もう少し判断が遅かったら、自分だけでなくイリーナまで巻き込んでしまうところだった。


 「パビエル!」


 すぐにウェイン達が駆け寄ってきた。


 「パビエル!これはどういうことなのだ!?イリーナは無事なのか?」


 ウェインはしまった!と思っていた。パビエルがイリーナの背後に忍び寄っているのを見て、これは何かある、と彼自身はすぐに気付いたのだが、イリーナの姿を見つけたルイスがたまらず叫んでしまったのだ。こちら側からはポイズナーの姿が岩山の影に位置していた為に、気付くのが遅れてしまった。


 「大丈夫だ。疲弊してはいるが、毒を食らったわけでも怪我をしてるわけでもない」


 見ると、確かにイリーナは無事なようだった。しかし・・


 「イリーナ!イリーナ無事なのか!」


 娘がポイズナーに捕らわれているのを見るや、ルイスは完全に平常心を失ってしまっていた。そしてポイズナーに向かって突撃しようとする。


 「落ち着けルイス!今行けば、イリーナまで毒にやられてしまうぞ!」


 「これが落ち着いていられるか!娘が、娘がモンスターの餌食になろうとしているのだぞ!」


 見れば、父ルイスの姿を見つけたイリーナは、安堵感と恐怖心が入り混じったくしゃくしゃの泣き顔でこちらを見ていた。


 「あいつのあんな顔を、俺は今までに一度だって見たことはない!」


 「わかっている!だが落ち着け!お前がどっしり構えていなければ、イリーナは余計に不安になる!」


 ウェインのその言葉で、ようやくルイスは多少の冷静さを取り戻す。だが、それで事態が好転したわけでは無かった。


 

 レオンは天を仰いでいた。ようやく駆けつけてくれた仲間だったが、一番最悪な状況で現れてしまった。


 (どうすればいいんだ・・・・)


 イリーナ救出作戦は、非常に困難な状況に陥っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ