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魔族の少女と青年兵士の物語  作者: 黒斬行弘


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2/11

魔族の村への招かれざる客

人間の国家「クルド」の志願兵ランディーは、国境付近での敵国「ヘレス」との戦いで、舞台は壊滅したものの、彼自身はその場から離脱することに成功していた。


しかし、敵国内で迷ってしまい、崖から落ちて重症を負っていた所を、魔族の少女に助けられる。

 エルフを魔族と呼び、その魔族を忌み嫌う人間の国家「クルド」


 人間を蛮族と呼び、下等な生物として人間を見下しているエルフの国家「ヘレス」


 この2つの国が戦争を始めてからどれくらいの月日が経っただろうか?


 元々そんなに仲の良い国同士では無い。過去にも戦争は行っており、その度に停戦交渉やら和平条約やら結んでは来た。


 が、今回の戦争は、過去に例を見ないほど大規模かつ長期に渡っていて、双方の戦死者の数も相当数に上っており、両国とも、簡単には引けない一因となっている。


 しかし、そんな戦争の影響など微塵も感じさせないこの集落では、とある大事件が発生していた。


 

 「だから!なぜあのような人間を村に連れてきたのかと聞いておるのです!」


 少し神経質そうなエルフの男性は、まだ少女とも思える同族のエルフに対して、テーブルに拳を突き立てて怒鳴りつけていた。彼の怒りはこれ以上ないくらい彼女に向けられており、それは周りのエルフ達も同様だった。


 「彼は崖から落ちて怪我をしているのです。それを黙って見過ごすわけにはいかないでしょう?」


 怒鳴られた少女は、少しばかり申し訳無さそうにしながらも、はっきりとそう答えた。


 そう、この少女はとても優しい。それは彼もわかっているだ。しかし、それとこれは別だ。


 「レオン!お前が付いていながらどういうことだ!こういう事態にならないようにお前がいつも一緒にいるのだろう!?」


 「しかし長老、リサーナが怪我をしている彼を発見してしまったんだ。どうしようも無いだろう?」


 レオンと呼ばれた男は、矛先が突然自分に向けられた事にも特に何の反応も示さず、そう言って方をすくめて見せた。


 「実際リサーナが言い出したら、あんただって止めるのは無理だろうが」


 そう付け加える。


 事実、レオンは昨日、リサーナが人間の青年を発見した時、関わらないようリサーナには進言したのだ。しかし彼女は、「怪我している人を見過ごすなど断じて出来ません!」とレオンの進言を全く聞こうとはしなかった。


 (どうせ何言ったってリサーナが聞くわけないんだから、この会議自体無駄だと思うがね)


 そんな事を考えながら、


 (人間の青年・・ランディーと言ったか?)


 彼が軟禁されている住宅へと目線を移した。





(俺はこれから一体どうなってしまうんだ・・・・)


 ランディーは、軟禁された部屋の中でそればかりを繰り返し考えていた。そして昨日、崖から落ちて、魔族の少女に助けられた時のやり取りを思い出していた。


 ランディーは、自分を助けた少女の正体が魔族であることがわかり、慌てて立ち上がった。色んな所がひどく痛んだが、そんな事は言ってられない。何しろ目の前にいるのは、さっきまで自分が散々戦ってきた魔族そのものなのだ。


 「ダメですよ、あなたは大怪我をして・・・」


 「何故だ!」


 ランディーは、彼女が最後まで言い終わらない内に叫んだ。


 「何故だ!何が目的だ!なぜ俺を助けた!?」


そう、一気にまくし立てる。自分が人間であることは明らかである。俺を何かに利用しようと考えているのか?しかし、政府高官やその親族でもない俺を捕らえたからと言って利用価値を見出せるとは思えない。自分に価値が無いとわかれば、すぐにでも殺されるかもしれない。



 「あの、あなたは崖から落ちて大怪我をしていたんです。それでその、助けなきゃと思って私必死で・・・」


 何か怒らせてしまったのならごめんなさい、と、最後には謝罪までしてくる。


 「そうじゃない!俺は人間であんたは魔族だ!戦争中だろ?わかんないのか?」


 なんなんだこの女は!全く話が噛み合わない!


 「あの、私は今日あなたとお会いして、それで初めて人間という種族を目の当たりにしているんです。」


 少女は青年の言いたいことがようやく理解できたのか、彼に向かって話し始めた。


 「ですので、私は、人間を敵対の目で見たことは当然ありませんし、あなたに対してもそうなのです。」


 これが答えになるでしょうか?そう少女はランディーに答える。


 しかしランディーは、彼女の言葉をそのまま受け取る気にはならなかった。もしかしたら、自分達に心を許したランディーに、仲間の所に誘導させようとか考えてるのかもしれない。


 (くそっ、どうすればいい・・・)


 「リサーナ、今戻った。お、そいつ目が覚めたのか」


 ランディーがどう対応すれば良いか思案に暮れていると別の方向から声が聞こえてきた。ランディーはとっさに彼の瞳を確認した。


 (紅い瞳、こっちは成人した魔族か・・・)


 魔族は、その年令に応じて瞳の色が変化することは人間界でも知られていた。碧色の瞳は、まだ成人していない証で、紅い瞳は成人した証だという。もっとも、成人してないと言っても、魔族の事だからランディーより年齢は上かもしれない。


 「レオン、もう暗くなってしまったし、村へ戻るとしましょう」


 ランディーがそんなことを考えていると、リサーナはレオンと呼ばれた男性魔族に向かってそう提案した。


 「そうだな」


 そう言うと、レオンはランディーに向かって何事かをつぶやく。その瞬間ランディーは、体から急激に力が抜けていくのを感じた。


 「ぐっ、何を・・したんだ・・」


 「悪いな。まあ、大丈夫だとは思ったんだが、村へ行くまでに暴れられるとあれなんでな。」


 そういうとレオンはランディーをかつぎ上げ、村と思われる方向へ歩き出したのである。

今回もお読みいただきありがとうございました

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