渡邊センセー
校門の前の桜がヒラヒラと澪の目の前に落ちる
澪は、鞄を教室に残したまま帰る事にした
直樹に後でメールして鞄とってきてもらお・・・・
ケータイのディスプレィを見ると9時30分を示していた
冷たくなった手をポケットに突っ込み駅へと向かう澪
確か11時に終わると言っていたはずだから・・・・と澪は、電車表を開く
藍の通っている私立高までは、電車とバスを使って20分程度で付くが
澪にとってその20分間は何十倍も何百倍も長く感じた
「電車が来るまであと10分もあんのかよ・・・・」
イライラしながらも時計を睨みつづける足が小刻みに一定のリズムで刻んでいく
そんな時だった・・・・
「お!澪じゃーん!!」
遠くからでも分かるような目立つ赤茶の髪の男が澪に向かって手を振ってくる
その後ろには、何人ものチンピラを引き連れている
「レン久しぶり」
澪は、その男の肩に手をまわし無造作に立てられた髪をくしゃくしゃと撫でる
「つか,澪お前その格好中学生だった訳??」
見下すようにニヤニヤと澪に向かって怪しげな笑みを浮かべる男
そもそも、澪と彼があったのは、澪が中学に入学してまだ間もない頃だった・・・・・
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「こら、奥谷何処へ行くんだッ!!!!」
一人の教師が澪に向かって叫ぶ
「オメーに関係ねぇだろ・・・・」
入学そうそう全学年の先生に目をつけられていた澪は、毎日教師と喧嘩の日々に明け暮れていた
澪は、小柄な方だが喧嘩は、誰にも負けた事が無かった
高校生、社会人でさえも澪に傷をつけられる者はおそらく今まで1人もいなかっただろう
澪は、こんな毎日を送っていたが、学校を休んだ事は、1度も無かった
どんなに熱がでようと、どんなにダルくても
澪は、毎朝一人の女の為にだけ早起きし、一人の女だけの為につまらない学校に来ていた
その彼女と一緒に行く通勤時間は、なんとも言えぬ幸福感で澪にとってはたった一瞬のように毎朝終わってしまっていた
澪は、毎日きちんと学校には来ていたが、いつも途中で帰っていた
「今日はサボらせないぞ!!!奥谷席に着けッ!!」
その日は、一段と粘り強かった社会の渡邊
いつもは、帰らせまいと頑張るもののいつも澪には勝てなかった
小柄な澪とは、対照的にいつも着ている青い無メーカーのジャージが張り裂けそうの渡邊体を見ていつも噴出しそうになる澪
今日に限っては、かなりケツにジャージがめり込んでいて笑いを堪えるのに必死だった
しかし、澪にとってこの教師と張り合う時間が案外楽しみだったりもする
今日は、一段としつこく澪の右手を離さなかった
澪は、その社会のデブ教師に向かって
「センセーさよーなら、みなさんさよーなら」
とよくいる幼稚園児のマネをして、ダッシュで教室を出た
いつものように走って追いかけてくる渡邊だがいつも途中で息を切らし同じ台詞を言う
「明日もちゃんと学校来いよ!!!!」
叫びながらも渡邊はいつも優しい笑顔で澪を見送る
そして、澪もそんな渡邊の表情を思い浮かべながら少し口元を緩ませた