意外な敵
(無事着きましたね!)
ベルが嬉しそうに言う。どこがだ!なんでランもスライムも普通に着地してるのに、俺だけ顔面で着地しなきゃいけないんだよ!顔がいてー!俺に何か恨みでもあるのか!
「…んでこの世界ではどうすればいいんだ?」
ランが本当に知らないところに飛んだ!と騒いでるが気にしない。
(ここでも倒してもらいたい者がいます。それは…)
魔王か何か?
(勇者です!)
ふーん。
(あ、あれ?驚いていませんね。)
「いや、驚いているぞ?とうとう人殺しかあ…。」
竜とかだったら罪悪感が無かったんだがな…。
(い、いえそこじゃないですよ!勇者ですよ!?なにも知らずに聞けば普通驚くでしょう!)
そうかな?俺は小説をよく読むが勇者が敵の話なんてたまにあるぞ?
それに勇者の肩書きがあれば正義とは限らないだろう?俺の親友のなかにヤンキー顔なのに、実はよく苛められていたという激しいギャップの持ち主がいる。少し違うが、そのせいで見た目や肩書きで判断したりしない。
でも、何故勇者を倒さないといけないのか気になるな。
「この世界の歴史を教えてくれ。」
(あっ、はい。この世界は人族と魔族がいたんですが、魔族は既に滅んでいます。人族と魔族といっても魔法が使えるか否かの違いだけですが。昔、二つの種族は対立していたんですが、ある日互いに和平を結ぼうとしたんです。しかし、暗殺を恐れた人族の王は、勇者を召喚しました。そして、勇者を和平の使者として送ったのですが、勇者は魔族を滅ぼして帰ってきました。そして、翌日今度は人族の王を暗殺。人族の国は勇者に乗っ取られました。その後、平和だった国は一変。国民には重い税をかけ、兵士には遊び相手と評し殺されています。度々国民が勇者を暗殺しようとしているんですが、圧倒的に実力に差があって毎回返り討ちにあっています。)
…それは勇者なのか?魔王だろ、絶対。いや、魔王より質が悪い気がする。
今思えばまずいな…。人間が相手ということは、俺の攻撃当たらないんじゃないのか?俺は剣道やその道のプロではない。謂わば子どものチャンバラだ。竜は的が大きいから大丈夫だったが…。スキルで誤魔化せるか?
「レベルは?」
(50ですね。)
俺の1,5ばーい!早く上げないとな。
(手頃な狩り場がありますから、いう通りに進んでください。)
へーい。ランのレベルも上げないとな。
それから、二日間レベル上げに励んだ。仲間に経験値をいれるには、一度でも相手に触れる必要があるらしい。ランには、空間魔法に手を突っ込んでもらって、魔物に触らせてから俺とスライムが倒す。これを繰り返した。少し面倒だが、ランには頼りになる仲間になってほしいから仕方がない。
ひたすらレベル上げに励んだ二人と一匹はレベルを確認するのを忘れ、とんでもない成長を遂げていたことに気づかなかった。




