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題名のない話

侵略

作者: 椎名 倫

随分と昔に書いたものを見つけたので載せてみました。


広い心で読んでいただけましたら幸いです。

 「おい、知ってるか? 一階級上位世界、相当やばいことになってるらしいぞ」


 「やばいって? なにそれ、なにかあったの?」
 


 ーーとある場所、作業も一段落したので休憩がてら、今もっぱらのウワサになっている話題を持ち出したところだった。

 「なにがって、おまえなぁ……。本気か? 知らないほうがおかしいぜ?」

 「え? いや、ごめん……。で、どういうことなの?」



 話に食いついて来たことに気をよくしたのか、少しもったいつけるように咳払いをひとつしてから話し始めた。


 「いやな、おれも他のヤツが話しているところを立ち聞きしたんでな、あまり詳しいわけじゃないんだが……」
 

 と、さらにもったいつける。
 

 「どうやら一階級上位世界のなんとかっていう種族がほかの種族達を狩りまくってるらしいんだ。そのおかげで生態系のバランスがどうしようもなく崩れてしまって、環境が再生力のほとんどを失いかけてるってわけだ。」



 「ああ! その話なら知ってる。あれでしょ、そのせいで二階級上位世界の個体にまで影響を及ぼしてるってやつでしょ。」



 「なんだ知っているじゃないか。そう、その話だよ。周りじゃ、あの種族は滅びを招くために存在してるのではないかって噂だ。ヤツらは結果的に自分達も滅びるということになんの感情も持ち合わせていないじゃないかってな。」



 「実際、ヤツらって狂ってるのかなぁ。信じられないよ……」



 「ああ、お前の気持ちはよく分かる。俺もそう何度も考えたよ。だがな、それ以上に事態はさらに深刻だ。」
 


 「えっ? どういうこと?」


 「奴らこの世界も滅ぼす気だ。てめぇ達のコピーをこの世界に送り込んできやがった!」



 「なんだって? この世界に? そんな馬鹿な! だってこの世界は奴らの……」



 「ああ……、おれにも理解できん。しかしこれは残念ながら噂じゃないだ。おれもこの話を初めに聞いたときは信じられなかった。

だからウラをとってきた。そして判ったことは、コピーはすでに送り込まれている。」



 「ウラをとったって、一体どうやって?」



 「いやな、白部隊の兵士らの会話をちょちょっとな。」



 「白部隊!? なんて危ないことを……!? バレたらただじゃすまないよ!」



 「まぁそう喚きなさんなって。そのかわりかなり詳しく事態が把握できた。いいか?これから話すことを他で漏らすんじゃねえぞ。お前も危ない立場に立たされる。」



 「わかってるよ。今更聞かないというわけにはいかないしね」


 「上等だ。さて、どこから話したものか」



 「そのコピーってどういう奴らなの?」

 


 「そうだな、そこらからいくか。まず、最悪だと言っておこう。やつらの破壊力は絶望的なほどだ。セル隔壁をいともあっさり突破して、飲みこんじまう」



 「飲みこむ……」



 「同化と言った方がいいかもしれん。しかもその後がやっかいだ。そこを基点に次々とまわりと同化してこちらの機能を停止させちまう。

そして、奴らは不死だ。白部隊ですらまったく歯が立たなかった」



 「そんな……」



 「しかしその先が謎だ」



 「つまり?」



 「奴らの勢力がある程度の範囲まで広がると、どういうわけか消えちまうんだ。まわりの空間な。それは奇跡なる助けだと、兵士らはいっていたが、しかし・・・」



 「それは! いいことさ! 奇跡に決まってるじゃないか! きっと奴らがかってに自滅したんだよ!」



 「馬鹿が……。 これを聞いてもまだ奇跡だと言えるか? 消えた空間がどれほどの範囲かわかってるのか? ラルグ州の半分が消えたんだぞ! ストマイク州にいたってはまるごとだ! あれだけの空間がこつ然と消えたんだ。どう考えたって助けなもんか! 奇跡なんかでたまるかよ……」



 「まさか……、そんなことが……」



 「事実だ!くそっ!やつらは一体なんなんだ……」


 その時、ふいにまわりが騒がしくなった。あたりにあらわれた兵士が叫ぶ。



 「お前ら何をしてる、さっさと逃げろ! 死にたいのか!」



 「どういうことだ?・・・まさか・・・!?」



 背後にジワジワと悪意の塊が近づく気配がする。


 レバノイア州が消滅するのも時間の問題だと、彼らは悟った……。

 次々と飲み込まれていく兵士達。そして彼らもやがて。徐々に飲み込まれていく間際、彼は上の世界のことを考えていた。


「こんなものが跋扈する世界って一体・・・」

宇宙もまた一つの原子単位だったり、人の細胞もまた一つの宇宙を形成していたり……、なんてことを考えていた頃だったような。


読んでくださってありがとうございます。

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