落ちてきた女の子
ここは日本。
そして、その中のとある街のとある学校。
ありきたりな教室に、転校生が一人。
どこにでもいるような容姿…黒い長髪、黒い大きな瞳、平均的な身長。
彼女は"普通"を具現化したような人間だった。
「香坂 美咲です!よろしくお願いします!!」
大きく、はきはきした声で言った。
ざわつくクラス。どうやら好印象だったらしい。
「好きな食べ物とかあるー?」
ミーハーな男子からのありきたりな質問。
転勤族であった彼女には普段の会話と等しい。
「甘いものが、大大大大好きです☆」
今度はさっきよりも明るく、すこしおどけた態度で言った。
この文章を答えたのも、もう何回目だろうか。
そんな思考がちらついた時、美咲の視界が大きく揺らいだ。
***
とある国のとある丘。
そこには少女と少年が木の下で腰かけていた。
「…ねぇ」
「……………………。」
「ね~え~!!」
「……何。」
いかにもクールそうな、茶色がかった黒髪の少年が読んでいた本から顔をあげる。
視線の先には、薄いクリーム色のふわふわな髪をした小柄な少女が映っている。
読書の邪魔をされた上、耳元で大声を出されたことでイラついている様子。
「用があるならわかりやすく簡潔に、200字以内で。早くね。」
文字の指定までしてきた。
「にひゃくじ…?んーと、えーと…」
「残り時間、30秒。」
さらに少女を追い詰めるように追い打ちをかける。
頭が混乱し、とにかく本題だけでも伝えようとしたようだ。
「えっと、女の子が落ちてきたの!!」
「…女の子……?それなら広場に腐るほどいるでしょ…………って、今…落ちてきたって言った?」
「うん、落ちてきた♪」
落ちたとすればケガでもしているんじゃないか?
「その子、今はどこに居る?」
「そこにいるじゃん」
少女がそこ、と指さしたのは少年のすぐ隣…
少年が視界に映した"落ちてきた女の子"はまさに、さきほど自己紹介をしていた美咲であった。