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死にたがりと君  作者: アズキ


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第4話「協力」

いつものように意識が飛んで目の前が真っ暗になり、また光が入り込んできて目覚める。いつもなら空か天井しか見えない光景だが、今回は人がこちらを見つめている。死ぬところを見せた彼女だ。目を開けた中村を見て驚きを隠せない様子だった。


少し後ろへ体を後退させ、声に出ない悲鳴で叫んでいた。


「な?嘘じゃなかっただろ?俺は何回も死んでる。ありとあらゆる方法でこの世から消えようと日々頑張ってる。ほら、怪我だって治ってる、痛みだけは頭で覚えてるから辛いことには変わりないけど。」


「何でそんなこと頑張ってるの?死ぬことを頑張るなんて聞いたことない。」


「じゃあなんで、お前はこんなところに来て、屋上から飛び降りようとしたんだ?」


「それは…死にたかったから。」


中村は彼女に目線を送った。それで理解したようだった。頑張る理由なんて1つしかないだろ。答えは単純だ。「死にたいから。」


その理由は2人とも合致しているはず。だが中村は簡単にそれが出来ない。


「死にたくても、俺にとっては簡単じゃないんだ。だがら、色んな死に方をしてる。でも、どれも失敗だ。餓死できるかと思えば、腹は減らないし、寝なければそのうち体にガタが来ると思っても眠くもならない。悪いね、死ぬの引き止めた。でも、アドバイスはしたよ、即死の方法を選べって。屋上から飛び降りようが君の勝手だけど。」


「私、その、即死の方法なんて知らない。」


「別に即死じゃなくてもいい、麻酔とかを致死量飲めば苦しまずに逝けるだろうよ。」


「あ、ありがとう。」


「こんな不謹慎なことで感謝されるとはね。」


本当に不謹慎だ。だって、「いいな。」って思ったのだから。方法を教えて実践するだけでコロッと死ねるんだ、この女は。俺もそんなふうにコロッとこの地獄から抜け出したいものだ。


面白いもんだろ。ここまで死ぬことができないとネガティブを通り越して何も感じなくなってくる。死ぬ方法を探すことにやりがいを感じることすらあるのではないかと錯覚するほどに。


そして、中村は気になった。


「どうして死のうと思ったわけ?」


何気ない質問だが、空気を読める人間ならこんなこと聞かないんじゃないのかな。親切心で聞いたとして、相手にとってこれが毒の言葉にならないとも言えないから。


嫌な思い出をフラッシュバックさせて悲しませてしまうとか、そういうのは「相談」での話だろう?


今、彼女は死ぬと宣言しているんだ。だから、逆に嫌な思い出をフラッシュバックさせることは彼女の背中を押す行動と捉えることが出来る。ある意味これは中村なりの親切だったのかもしれない。


「何でそんなこと聞くの?」


「気になったから。」


その答えは純粋なものだった。曇りひとつない空のように。悪意も善意もない子どもの質問のように。


「私、高校に通ってるんだけど。クラスのはみ出しモノで。いじめられてきたの。物は良くなくなるし、悪口なんて日常茶飯事。1年の時は頑張って耐えてきた。けど、もう耐えられなくて先生に言っても動いてくれないし、親に迷惑だってかけたくない。こんなことで死ぬのって…」


「別に悪いことじゃないんじゃない?」


「え?」


「君の痛みってさ、誰にも分かってもらえないんだよ。どんな場で発言したところで本人しか分からないことなんだ。周りは『共感した』とか言うけど悪い冗談でしょ。偽善を装った奴らの戯言。俺の痛みが君に分からないように俺も君の心の痛みを分かることなんてできないんだよ。」


「そうだよね。やっぱり、こんな話…」


「でもね、1つだけ分かることがあるよ。君が辛いってこと。今、君がハッキリ『辛い、死にたい』って言ったよね。その言葉に嘘偽りがないなら君は世界中の誰よりも辛いってことになる。人と辛さを比べる必要も無い。人間は比べる生き物だから、辛さを人と比べてもっと頑張れって無理難題を突きつけてくる。そうやって『辛い』って事実を捻じ曲げてくるんだよ。今君は辛いんでしょ?」


「うん。」


彼女の目からは涙が溢れていた。


「だったら、それは間違いじゃないし、その辛さを信じてあげることはできるよ。」


何を言っているんだろう。何を偉そうに語っているんだろう。


別にこの子を救いたい訳ではない。でも、初めて自分と同じような状況の人と話したからだろうか、話さずにはいられなかった。今まで自分の中にあった自論を。


急に抱きしめられた。理解ができなかった。今の状況で抱きしめられるような要素があっただろうか。とりあえず、中村も抱きしめ返した。


「ありがとう。自分に素直になれた気がする。ずっと、不安だった。こんなことで死ぬのって本当に間違ってないのかなって。でもようやく決断できるようになったと思うの。」


「それなら良かったよ。頑張れよ。」


彼女の腕の中から脱出して立ち上がり、また屋上へと戻ろうとした。


「あの!良ければ、何かお礼がしたいの。」


「別にお礼なんていいよ。そんな大層なことした訳じゃないし。」


「大層なことだよ。私が大層なことだって思えばそれは変わらないでしょ?」


無駄なことを教えてしまったなと少し後悔したが、1人でずっとこのままいっても変化のない生活だなと思って、変なことを言った。


「じゃあ、俺が死ぬのを手伝ってくれよ。」



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