第2話「死ねない。」
中学を卒業して、両親が亡くなり、家を飛び出て人生で初めての自殺を経験した中村。
本来、自殺を経験するのは人生で1度きりだろう。最初で最後ってやつだ。でも、違った。どうやっても死ねない。マンションから飛び降りた時からというもの、眠くもならない。お腹も減らない。体が何も必要としなくなった。永遠に生きれる体を手に入れてしまった。それは中村にとってはいい迷惑だ。
不謹慎になってしまうが、世の中で自殺をした人たちは幸せだな。痛いのは一瞬、一瞬でなかったとしても1回で済む。1回でこのクソみたいな世の中とおさらばすることができる。でも、中村はその苦しみを何回でも味わう事になっている。死ぬ事が出来ずに、この世の中に生かされ続けている。
飛び降りた時の痛みも
首を吊った時の苦しみも
薬を致死量飲んだ時の辛さも
全て知っている。
同じことを何度も繰り返したこともある。
何度落ちようが、何度首を吊ろうが、生きてしまう。何をしたって死ねない。
シュレッダーにでも入れば死ねるのだろうか。最近はずっと死に方を研究しているみたいになっている。もしもまだ学校に通っていたら、この内容を自由研究にでもしようか。「苦しくない死に方」「死ぬ時の怖さと痛さ」こんなタイトルをつけて提出してみたい。反応は想像できる。軽蔑されて、変人扱いされてきたからな。
こんなこと辞めたい。でもそのためには死ななければならない。
死ぬ事にこんなに苦労しているのはこの広い世界のどこを探しても自分しかいないだろう。
1日で死ぬ回数は数えたことがない。
出来ればそんなにやりたくない。慣れたとはいえ、痛いもんは痛い、苦しいものは苦しいのだ。特に、首を吊った時の苦しさは酷いもんだ。高さがある場所から飛び降りて首を吊らない限り即死はできない。
即死できる方法は難しい。
リスカをして水の中にいても、体が段々と冷えて、意識が遠のいていく、その間は気分が悪くて吐き気や目眩に襲われる。
重りをつけて海にでも沈もうかと考えたこともある。でももし、そこで死んで生き返ってを繰り返すことになったら最悪だ。永遠の苦しみを味わうことになる。いや、もう味わっているか。生きるということは辛いこと。死ぬということは楽になること。
この世の中の人たちは生きることを恐れた方がいいということを教えてやりたい。
死んでしまえば楽になれる。
やりたくない勉強からおさらばできる。会社の嫌な上司ともう2度と会わなくて済む。学校の嫌な発表をしなくて済む。
今の自分の状況だからこんな不謹慎なことが言えるんだろうな。人の死に鑑賞するのはやめた方がいいと思う。大切な人が亡くなって、どれだけ悲しもうが何も戻りはしないんだから。それで凹んで生きる気力を無くす方がもったいないと思う。
まぁ、人の気持ちに踏み込むつもりもないから、心底どうでもいいことではある。
今日はどうしようか。
どんな死に方を試してみようか。中村は考えるのに適した場所に行った。廃校になった学校の屋上。こんなところに来る人はいない。
食べなくても生きていける中村はここで死に方が思いつかなくて1週間もただ空を眺めていたこともある。
そしてそのうち喪失感に襲われて屋上から飛び降りる。ある意味ストレス発散みたいになっていたんだと思う。考えても何も出てこなくて、何もしたくなくなった時、死んでみようとするともう一度頭の中をスッキリさせることができる気がしていたんだ。
そして、今日も学校の屋上でどうやって死のうか考えていた。
そんな時、屋上の扉の開く音がした。




