第13話「結論」
また光が見えて目覚めた。また生きたか、そう思ったが今だけはそれで良かったと感じていた。死ぬなら雪の前で死にたい、そう思っていたからだ。
またねをするのが嫌だから突発的に殺してくれと頼んでしまったが、今考えると、アホだったかもしれない。もし死ねれていたら、雪との「またね。」の約束を破ることになってしまうから。
「あれ、俺、何してるんだろう。」
変な気持ちだった。
初めて感じた感覚。ここのところ、初めての感覚が多すぎだと思う。でも、今自分は安心したのか?何に対して?生き返ったことに対して?今まで散々死にたいと思ってたのに、ここにきて生き返ったことを喜んでしまった自分がいたのかと、変な気分になった。
一瞬の気の迷いだ。雪との約束を守れなくなるのが怖かっただけなんだ、そう言い聞かせた。でも、胸のモヤモヤが取れない。あやふやで目的を見失ってしまったみたいだった。
中村は立ち上がり、校舎へと歩いた。腹の辺りがいつもとは違う。お腹が動いている。食べたから当たり前か、けれどもその感覚が懐かしいような気がした。また時間が経てばお腹が空くのだろうか?そしたらまた雪とご飯を食べるのだろうか?
なんでなのか、その光景が愛おしいのは変わらないのに、胸の中に黒い雲がかかってしまっている。自分を悩ませる原因はなんなのか分からない。とりあえずで校舎の中に入り、2人の教室へと向かった。
教室は真っ暗だ。外から微かな月と星の光が入ってくるだけだ。少しの間、この空間にいなければ何も見ることはできないであろう。
中村も机は見えても、2人が掘った名前までは見えなかった。
机を手のひらで触ってみる。掘った時の窪みがあり、次は指でなぞってみる。
『ゆき』『なかむら』
変わらない文字がそこには浮かんでいた。
そう、誰かがここに来て、この机になにかしない限り、変わることの無いこの教室とこの机。
「そうか、こんな簡単なことだったんだ。」
机の文字をなぞって、中村はある結論に辿り着いた。さっきまで心を覆っていた黒い雲は雪の気持ちが変わってしまうこと。自分を捨ててしまうかもしれないということ。その不安が自分を縛っていたことに気づいた。
机はもう一度、手を加えない限り何も変わらない。この2人の名前は永遠に刻まれたまま。だが、こっちの関係はどうなのだろう。信じ続けてある時突然裏切られた時、自分はどうなってしまうのだろうかと考える。今以上に絶望して、さらには死ぬことができないんだから、地獄以上の辛さを味わうのではないのだろうか。
どうしたらいいのか分からずに、中村は雪の椅子に座ってみた。本人はいないが、彼女が座っていた椅子、彼女が名前を掘った机。何も言わずとも雪のことを思い出せる。
2人でこの机に名前を掘った時に、永遠に繋がれた机が完成した。
教室の窓の方へと歩き、星を見上げる。
「星さん。俺、どうしたらいいのか分かったよ。ユキとずっと一緒にいるべきなんだね。そのためには2人で死ぬ必要があったってことなんだ。だから、ユキといる時には不思議なことが起きたんだね。」
2人で死んで、そのまま空に昇って今見ている星のようになりたい。そう願った。




