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死にたがりと君  作者: アズキ


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第12話「淡い期待」

暗い教室で中村は目覚めた。

自分は何をしていたっけと思い返す。雪と一緒にお菓子を食べていて、その後、机の上で手を枕にしてみたっけ。お互いに目が合って恥ずかしくなった。

そのまま2人とも眠ってしまった。

授業中に眠ってしまったかのようだ。

隣を見るとまだ雪はスースーと寝息を立てて眠っている。暗くてよく見えないけれど、その姿が愛おしく思えた。だから、彼女の頭を手で撫でてみたんだ。ずっとしていたらそのうち手が疲れてきた。けれども、辞めたくなくて、腕の痛みなんか気にせずに彼女のことを撫でていた。


「俺さ、分かんないんだ。どうしたらいいのか。ユキと出会ってから変なことが起きてる気がして。まだ親指の傷だって治ってないし、今日はお腹が減った。なんでなんだろう。なぁ、ユキ、俺どうしたらいいと思う?教えて欲しい。」


相変わらず、寝息を立てて雪は眠っている。ことの言葉を彼女が聞けていたらどれだけ幸福だったことだろうか。けれども彼女は深い眠りの中にいた。何も答えない彼女を見て中村は頼りきってしまっている自分に腹が立ってしまう。それがあらぬ方向へと向いてしまうのだ。


「そうだよな。お前に託すなんて、人任せがすぎるよな。自分で答えを出す。俺頑張るからさ、最後まで一緒にいてくれよ。ユキ。」


しばらくすると彼女の目が開いた。

起き上がり、周りを見渡す。暗くて戸惑っている様子だった。暗くても、しばらくその場にいれば、目が慣れてくるものだ。

雪がスマホを取り出し、ライトをつけた。


「あぁ、もうこんな時間。そろそろ家に彼らなきゃ。」


「そうだね。校門まで送るよ。また明日もこの場所に来てくれる?」


「もちろんだよ。約束する。」


「ユキ。」


「何?」


「帰る前に、俺のことを殺してくれないかな?」


「え?なんで?」


「またねって、したくなくて。信じてないわけじゃない。明日、ユキが来てくれるって。でも、なんだか怖いんだ。もし、何かがあって、ユキが明日俺の前に現れなかったらって。」


「分かった。」


「ありがとう。」


2人は教室を出て、グラウンドに出た。校門まで歩く。ただそれだけなのに、その距離が愛おしくて仕方ない。あの場所まで辿り着きたくない、辿り着いてしまえば、恋人と一旦の別れになってしまうから。それでも2人は歩いた。

何も言わずとも、2人は自然と手を繋いでいた。「手、繋いでもいいかな?」とか、そんな野暮な質問をする必要なんてどこにもなかったみたいだ。

月明かりが2人を照らしてくれている。昨日と変わらない星空。別々の場所から見ていた景色を今は2人で見ている。


「これ、今度はさ、お腹、刺してくれるかな?難しかったらまた首でいいよ。」


「やってみる。」


暗がりだからなのか、それとも中村が言ったことを守っただけなのか分からないが、躊躇せずに、中村の腹部を刺した。指す瞬間に、「また明日ね。」そう言われた。

刺したあと、彼女は家へと帰っていった。中村は腹部を手で抑えてグラウンドの真ん中まで歩いた。昨日の屋上でしたみたいに大の字で寝転がってみた。

上には満点の星空。そしてまた問いかける。


「なぁ、星さん。恋人ができたよ。俺が望んでいたよりもずっといい恋人が。いや、恋人なんか求めてなかったかも、でも、寂しさを埋めてくれる人が出来たんだ。ずっと大事にしてあげたい。そうするためにはどうしたらいい?」


帰り道、雪も同じ星空を見て語りかけていた。


「ねえ、お星様。恋人ができたの。でもね、彼は私と生きようとはしてくれないの。恋人と死ぬことって幸せかもしれないけど、もっと思い出を作りたいって思うのは私だけなのかな?彼のことを大切にしたいの。どうしたらいいのかしら?」



中村「もし、こんな悲惨な状況じゃなくて」


雪「もっといい環境で出会えていたら」


中村「こんなことで悩まずに済んだのかな。」


雪「彼との日々をもっと過ごしたい。」


中村「彼女のことを大事にしたい。」


雪「でも考えても考えても」


中村「答えが出ない。」


雪「でも、気持ちは変わらない。」


中村「俺は」


雪「私は」


中村「ユキと」


雪「中村くんと」


中村「死にたい。」


雪「生きたい。」

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