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第6話『火曜日/シヴァ ①-1』

 月読(つくよみ)さんと仲直りをして、彼が()れてくれたお茶を飲んで。わたしが取り()めのない話をしても、彼はちょうどいい相槌(あいづち)を打ってくれるので話すのが楽しかった。

この人は聞き上手なんだなあと素敵な一面を発見する。


そして気付けば一時間を過ぎ、火曜日になる頃。


「名残惜しいけど、そろそろ帰るね」

と、窓を開けながら悲しそうに微笑まれたと思ったら、月読さんは夜に()けるように一瞬で消えた。


(本当に神様……かも? 少なくとも人間ではないのね)


驚くことばっかりの一日だった。

なんだかんだ最後は楽しかったけど、今日はすっかり疲れちゃったよ。

とりあえずお風呂にゆっくり入ろうかなとお湯を張っていると、真夜中にも関わらずインターフォンが鳴った。


恐る恐るドアスコープを覗き込むと、見覚えのある怪しい人が立っている。

まさかこんなに間髪(かんぱつ)置かずにいらっしゃるとは……。


無視するにも誰かに見つかったら通報されそうだし、神様(?)に警察が通用するのか分からないし。

月読さんがなんだかんだ無茶する人では無かったので、悩んだ結果『大嫌い』という保険の言葉を信じて開けてみる。


「よう、ヒヨ」


「こんばん、は。シヴァさん……ですよね」


「そうそう。インド神話に出てくる《破壊と再生の神》。……やっぱ疲れてそうだな? そうだよなあ……まあ、ちょっと座れよ」


「はいっ……」


ワンルームに2メートル近くある、タトゥーだらけの人がいるから圧迫感がすごくて。

「はあ? 命令ですか? 家主(やぬし)はわたしですけどー?」とマリちゃんみたいに突っぱねる勇気なんて起きなかった。


その赤茶の長髪は無造作に後ろに流されてて、(さま)になっている。

健康的な褐色の肌に男性らしさの良い所ばかり集めたような目鼻立ち。

そんな精悍(せいかん)な風貌なのに、笑顔はやたらと気さくそう……だけど油断はできないよね。


(いざとなったら例の言葉──『大嫌い』の試し撃ちをしてみよう……)


◆◆◆◆


 深夜。お風呂場から聞こえるお湯を張った音に耳を傾けながら。


(明日の講義は遅めだから良かった、でもゴミ出しがあるから早く起きないと~)


なんて現実逃避をしていると。


「今夜はすぐに帰らないといけないから、そんなに身構えるなって」


シヴァさんから玄関先で嬉しいお言葉を頂けた。

たしかにスーツ姿じゃなくて首元がゆったりとした焦げ茶色の……ほのかに異国を感じる部屋着をまとっている。オフって感じはする。


「そうなんですねっ。ではでは、また来週ということで」


「いや、待て待て。………あのな、オレには子供がいるから。夜に一人はマズいだろ」


「も、もちろんです!」


この人なんてこと言い出すの!?

お子さんはいくつなのか知らないけど、絶対にお帰り頂かないと。

教師を目指す身としては聞き捨てならない。

すると、なんてことの無いように言われた。


「だから、連れてきた」


「えっ」


よく見たら大柄なシヴァさんの後ろに人影が……。

「ほら、挨拶しなって」と(うなが)されて、おずおずと出てきたのは八歳くらいの大きな目をした男の子だった。

あんまり彼には似ていないけど、将来きっと賢い人になるんだろうなという顔立ち。


怖がらせないように、出来るだけ優しい声で話しかけてみる。


「こんばんは、わたしは蒼野日和(あおのひより)です」


「あっ……こんばんは、です」


こちらを警戒しながら興味津々(しんしん)でもあるみたい。じーっと見つめてくる。


「あの、シヴァさん。こんな遅い時間にお子さんを起こしておくのはどうかなって思います」


「そうだろ? だから早く帰るんだって。まあコイツ……カイは、百歳超えてるけどな」


ああ~、それなら安心ですね……って。

「ひゃく!?」と思わず大声を出して、自分の口を押える。ご近所迷惑……!


半神(はんしん)だから成長が遅いんだわ。まあ、それはさておき……。今夜オレが来ないままだったら、ヒヨのこと後回しにしてるって思われるだろ? だからまずは挨拶だけ。来週からはカイが学校行ってる朝昼(あさひる)に来るからさ」


お子さんを一人にしないあたりは、まあまあ常識人かもしれない。

せっかくカッコいいのに怖そうな見た目で損をしている気がする。

わたしは少し見直して返事をした。


「お気遣いありがとうございます。でも、お昼過ぎから大学に行きますよ」


「あー、そうだよなあ……まあ手は考えておく。んじゃ、とにかく朝にまた来るぜ」


なんだか一番、朝が似合わない人なのに。

ちょっと面白いと思ってしまう自分がいて。

そんな風に感じたのは、白い空間でシヴァさんが他の人たちに話しかけていた時より、優しくゆっくりとした口調を意識してるって気づいたからかもしれない。


たぶん、さっきわたしがカイくんに話しかけたのと同じで、怖がらせないように配慮してくれている。

──月読さんといい、意外と神様たちって、話せば分かってくれるのかも。


(結婚する気がないって、もう一度言えば受け入れてくれるんじゃないのかなあ!?)


なんて嬉しく思っていたら、


「お? 風呂入れてんのか。帰る前に三人で一緒に入るか?」


「…………ありえないです」


サラッととんでもないハラスメントを受ける。

予想通りの反応として楽しんでいるあたり、いかにも女慣れしてますという雰囲気。


「『大嫌い』って言いますよ」と脅せば、

「それはやめてくれ」と笑われた。

やっぱり神様たちは、どこかおかしいみたい。

シヴァ:インド神話《破壊と再生の神》

193cm/外見年齢34歳

ややクセのある赤茶の長髪、金色の瞳

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