表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/39

第4話『月曜日/月読 ①-1』

 はっと目を覚ませば、自分の部屋だった。

この安心感のある(なみ)の造りは間違いない。

ああ、やっぱり夢だった。本当に良かった。

──それにしても。


(あれってわたしの願望だったの? かっこいい人たちに求婚されたい、って……)


そんなまさかね、と首を振る。

もちろん恋をしたいって気持ちはコッソリあるけど、難しいのは分かってる。


「結婚する気がないのに恋なんて……。きっと相手を傷つけちゃうよ」


口に出せばズーンと重苦しい気持ちになって。

朝から駄目だなあって気を取り直せば、


「…………日和(ひより)、おはよう」


「ヒッ……!?」


大事にするとか何とか言ってた日本人っぽい男の人が、スーツではなく着流し姿で……ソファに背中を預けていた。

彼の(まと)う青みがかった灰色の生地は気品があって、わたしの格安家具とまるでマッチしていない。

まさか他の六人もいるのかと焦ったけど、ここはワンルーム。見渡すほどの広さもないわけで、他にはいないことが確認できて胸をなでおろした。


「……って違うよ! それでも全然安心できないよ!」


「…………あ、ちょっと大きい声。日和、元気になったみたい」


「!」


たしかに昨夜はあんなに体が重かったのに、不思議なくらい心身ともにシャッキリしてる。

スマホを見れば時刻はまだ朝の六時。

大学に行くまで時間があるので、冷静に話をしてみようと思う。


……だって早朝から警察を呼んだら、マンションの皆さんに迷惑かけてしまうから。

念のために緊急通報できるようスマホは握りしめておく。


彼は一応、わたしが寝てる間に変なことをした訳ではなさそうだし。

ひとまずは穏便(おんびん)に、そして断固とした意志を見せないと! そう意気込んで口火を切る。


「伺ってもよろしいでしょうか。月読(つくよみ)さん、とおっしゃいましたよね」


「…………うん」


「改めまして……わたしは蒼野日和(あおのひより)です」


目の前の人は「知ってるよ?」と言わんばかりに首を(かし)げた。

そう、昨日は他の人も私の名前を呼んでいたよね。知ってるのが本来おかしいと思うの。


「ゆうべ助けて下さったのは感謝します。でも困っているので……出ていって、いただけないでしょうか」


「………………………」


すっごく悲しそうな目をされた。

位置関係から上目遣いをされて。

年上っぽいし背も高いはずなのに……なんだか捨てられた子犬みたい。


見た目が良いって武器なんだなあと実感した。

彼の端麗な顔立ちはすべてのパーツがやり過ぎにならないように、あえて抑えたような品がある。

切れ長の目に()えられた瞳は桔梗(ききょう)みたいな紫色で、吸い込まれそうな美しさ。


──悔しいけど、どうしても気持ち悪いとは思えない。で、でも。

優柔不断で気弱な性格から、変わらないと!


◆◆◆◆


 月読さんは無言のままちっとも動こうとしないので、心の中でマンションの皆さんにお詫びしながら110番しようと決めた。


「け、警察よびますから」


「怖がらないで」


彼はソファから立ち上がって、ふんわりとこちらの両手を取る。

一瞬「あたたかい」と安心しかけたわたしに、彼は言葉を選ぶように、ぽつぽつしゃべった。


「……日和がいいって言うまで、無茶なことしない。それに、おれ──他のヤツもだけど。名前と一緒に『大嫌い』って言われたら、その日は強制送還されるから。……危なくないよ」


「え、えっと、じゃあ早速。『月読さん大きら──』」


そこまで言いかけると、すがるような声で(ささや)かれた。


「お願い待って。悪いことしないから、そばにいさせて? 今日……せっかくの月曜日」


ん? 月曜日って、せっかくって言うのかな? 

そう思っているのが伝わったらしい。


「…………えっとね。ロキが言ってたでしょう? 曜日制にしたって」


「え? 何がです?」


曜日制? なんて言ってたっけ。

頭が記憶することを拒絶していた(くだ)りだから。


「これから曜日ごとの担当が、日和と会えることになったんだ」


「それは、つまり……?」


「…………シフト制、で合ってるのかな? おれが月曜日」


──あ~……はいはい、シフトね。

たしかにわたし、マリちゃんに「自由に決めてもらっていい」みたいなこと、言ったけど! 

それはこういう時まで適用していいってわけじゃなくて……!


「言葉、違ったっけ?」


こてん、と首を傾げられた。

計算してるの? ってくらい、可愛い感じに。

それを受けてわたしは絞り出すように答える。


「…………それで合ってると思います」


いやいや、表現の問題ってわけでも、なくて。

助けて、マリちゃん!

月読つくよみ:日本神話《夜の神》

181cm/外見年齢25歳

少し長い黒髪、紫の瞳

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ