第3話『神様お願いします』※アポロン・シヴァ・ロキ・月読
軽くキャラ紹介&説明(2回目)です。
この話以降は基本的にヒロイン+男キャラ1名で話が進みます。
(明日も大学だし! バイトの面接もあるし! 蒼野日和は帰りますねっ)
最近クセになってしまった脳内シャウトをしながら、「出口はどちらでしょうか」と弱々しく小声で尋ねる。……なんせ見当たらないの。
「あーダメダメ、待たせてごめんね。帰るならこの薬を飲んでからだよ」
立ち上がりかけると席を外していた一人がこちらに向かってきて、引き留めてきた。
金髪に翠色の瞳をした、いかにも活躍中の若き白人モデルといった男性で。
たぶんどの時代でも理想って言われそうな、完璧な姿かたちをしている。
その手に輝くグラスは、琥珀色の液体で満たされて──わたしに差し出された。
「……あの。こちらは?」
「俺はアポロン。さすがに知ってるでしょ? 《医学の神》による手作りだよ。飲んだら治るのは、神話が証明してくれるってものでしょ」
「ああ、アポロン……おやつの………」
「ち、ちょっと違うかな。いや、由来的にそうとも言い切れないけど」
(ギリシャ神話ですよね、分かってはいたけど。素直に受け入れたくなくて…)
知らない人から渡されたものを口にするのは、絶対危ないよね……とグラスを持ったまま悩んでしまう。
結婚とかなんとか異常なことを要求されているけど、この薬に関しては善意の気配がするから断りにくくて。
それでも教師を目指すものとして、未来の生徒に「断らなきゃダメ」と教えるためにも。
ここはビシッと言わなければと意を決して!
「あの、お気持ちは嬉しいのですが」と小声でゴニョゴニョ言いかけると、先に助け船を出してくれたのは意外な人だった。
筋肉質で褐色の肌をした、首筋や指にタトゥーが入っていて一番大柄で年上そうな彼。
三十代だよね、赤茶けて少し癖のある髪とグラスの中身よりも濃い金色の瞳をしていて、意思が強そうに見える。
「オイ、知らない男から渡されて飲めるワケねーだろ。……貸してみなって」
ああ良かったと渡せば、それを仰いで──軽く口に含んだのか少し量が減って。
また、わたしに手渡された。
「ほら、大丈夫だろ? 飲んだらダルいの治るから」
「あー、シヴァ勝手に減らすなよ~」
(……はい~? ……ええとですね、いきなり効果が表れるものとも限らないですし!)
ニコニコと笑っているシヴァと呼ばれた人は、何度見ても人間離れした男前だけど。
ものすごく圧が強い。
正直あまりお近づきになりたくないタイプ。
◆◆◆◆
プレッシャーにどうにか負けまいと悩んでいるわたしに、耳と唇にいくつもピアスをした軽そうな見た目の人がのんびりした口調で話しかけてくれた。わたしと同い年くらいかな。
ふわふわの薄茶髪の毛先がピンクで、それが妙に似合っていて。
うっすら色違いの茶系の瞳はどこか掴みどころがない。
「ん~、やっぱり怖いよねえ。飲まなくていいよ、ふつうに人間の薬で治そ? 残りの話も短く済まそうぜ~? 早く帰らせてあげたいし」
「!!! はい、ぜひそのように……!」
ありがたいっ! 話の分かる人だ!
「ぼくはロキ。しんどい時にごめんねえ。あのさ、これって突飛な話だと思うよ~。いきなり理解しろなんて言わないさ」
「……はい。ちょっと色々、受け止められないです」
「だよね、そゆことで理解は追い追いで! とりあえずぼくら七人から一人をきみが選んで、結婚しよ? そしたら世界は平和になるし☆ しないと人類……数年で滅亡しちゃいそうだし~?」
ダメだこれ! やっぱりおかしい人だ!
「い、意味わかりませんし、わたしは普通の人間ですし、忙しいですし。そもそもみなさんのこと、よく知りませんし」
我ながらもうちょっと大きな声で力強く拒否できないのかと、ガッカリする。
「それなら大丈夫! 曜日制にしてるから、日替わりでデートしてくれたらいいよん?」
もう無理、誰か助けて……と周囲を見渡すと。
パチリと目が合ったのは、今の今までしゃべってない酔っ払いの手を振り解いてくれた人。
一番日本人っぽくて馴染みのある顔立ち──というには並外れた美形だけど。
いくつか年上かな、夜を思わせる深い紫の瞳が印象的で、少し堅そうな真っすぐの黒髪をしている。
すごく常識的なことを言ってくれそうな、誠実に見える容姿。
そんな彼がゆっくり口を開いたと思えば、こうだった。
「………日和が生まれたのは、日本なんだから。おれ……月読を選べば、揉めないよ」
その人は無表情のまま「ぜったい一番、大事にするから」と添えたけど。
わたしの思考は完全にストップして目の前が真っ暗になったみたい。
でもくじけずに、ようやく大きな声で本心を捻り出す。
「こんなの絶対イヤです! わたし、結婚しないって決めてますからっ!」
体力を使い果たしたのか、どっと疲れてベッドに倒れこんだ。
神様、助けて下さい。
ここにいる自称の人達じゃなくて、本物のどなたかに言ってます。
──って、ううん、違う!
わたしには女神のごとき親友がいた。
マリちゃん助けて……!




