本の紹介34『ループ』鈴木光司/著
巡る呪いの果てに待ち受ける未知なる世界。3部作衝撃の完結編。
「リング」、「らせん」に続くシリーズ3作目にして完結編です。その後、第2シリーズが始まっているので、正確には第1部完と言った方が正しいかもしれませんが、呪いのビデオを巡るストーリーとしては本作で一つの完結を迎えています。
主人公は二見馨という青年で、前2作には登場していない新キャラクターですが、終盤で前2作のキャラクターとの意外な関係が明かされることになります。ちなみに、馨の読みは「かおる」です。
舞台は現代から近未来に移っており、世界規模でウイルスが猛威を振るい、人間だけでなく動物や植物までもが感染し次々に死滅する終末的状況の中で物語は展開して行きます。
ウイルスに感染し志半ばで亡くなった父親との約束を果たすため、そして愛する女性と子供を救うため、馨はウイルスの謎を追ってアメリカ大陸をバイクで駆け抜けることになります。
これまでの作品から物語は大幅にスケールアップし、主人公は世界の存亡に関わる事態に立ち向かうことになるのですが、もはやホラーという枠を完全に飛び越えているところが面白いです。
映画や小説などに対して、これはミステリーとしては失格だとか、こんなのはSFじゃないとか苦言を呈する人もいますが、ジャンル分けというのは、便宜的なレッテルのようなもので、そこに囚われずに物語が拡大していく様子は非常に興味深いです。既成概念を飛び越えることが物語の醍醐味であると思うのですが、案外保守的な人が多いのでしょうか。
シリーズの中心を占めているのは貞子によって齎される呪いですが、本題はその恐怖を描くことではなく、呪いや暴力といった脅威に晒された時、大切なものを守るために人間はどのように立ち向かうべきかということを描くことにあると感じました。
呪いのメカニズムやガジェットだけでも十分に魅力的なのですが、その上で、人間の生き様を率直に描いていることに本作の魅力があるように思います。語るべきテーマがしっかりと物語に根を張っているために、人を惹きつける魅力が生まれているのだと思います。
大切な命を救うためにバイクで荒野を駆け抜ける主人公の姿には、前2作以上に人間の持つたくましさを感じさせられます。これまでの主人公たちも強い意思を持って行動をしているのですが、それがより顕著に表現されているという意味です。
馨がアメリカ大陸で直面することになる世界の真実は衝撃的で、1998年の本作発表当時はあまり受け入れられなかったのではないかと思います。むしろ現代で読んでこそ、その凄さが実感できる作品のように感じます。使い古された言い方になってしまいますが、時代を先取りし過ぎた作品とでも言いましょうか。
ラストシーンでの主人公のモノローグは胸を打たれるものがあるのですが、これまでの2作品を読んでいればこその感動なので、是非とも3作を一つの作品として読むことをお勧めします。
余談ですが、近年の映画ではネタ的に扱われている貞子というキャラクターですが、原作の設定からするとそのような形で人々の間に広まっていくことにこそ大きな意味があるため、ちょっと笑えない気持ちになるかもしれません。終わり




