5.権高な集団
「ヒカルちゃん!」
ヒヨリが紙袋を抱えて駆けてくる。
「お…噂をすれば、妹ちゃんじゃーん」
ヒヨリは立ち止まり、状況を理解した瞬間に顔を青ざめさせた。
紙袋を抱きしめたまま、わずかに後ずさる。
「おいおい、そんな怯えんなよ〜。ちょっと話すだけだからさ?」
男たちは楽しそうに距離を詰める。
その刹那ーーヒカルが動いた。
男たちとヒヨリの間に庇うように立つ。
男の一人が鼻で笑う。
「は?庇ってんの?お前、自分の事分かってんの?」
「妹ちゃん、光属性でそこそこ魔力あるんだろ?お前なんかよりずっと価値あるよなぁ」
ヒヨリが震える声で叫ぶ。
「や、やめてください……!」
その声に、男がにやりとヒヨリのほうを見る。
「やめて?お願いできる立場かよ。灰色の魔女とつるんでんだぞ?」
ヒヨリの表情が涙で滲む。
その瞬間。
ヒカルの中で、何かが静かに“確定”した。
──これ以上、この子を泣かせるわけにはいかない。
俯いたまま、ヒカルの指先がわずかに動く。
男たちは気づかない。
まだ「沈黙した弱者」を嗤っている。
ヒカルの足元に、ひんやりとした霧がたなびく。
空気が、わずかに重く、冷たく変わる。
ヒカルを中心に円状に、すりガラスのような冷気がじわりと広がる。
男たちの足元にも霧が触れ、っ……!?と反射的に跳ねのけるように下がった。
その直後、彼らは顔をひきつらせながらも、ニヤァ……と、歪んだ笑みを浮かべる。
「見たかよ……!」
「灰色の魔女、本性出したぞ!」
「やっぱ闇系の素質あるんじゃね!こっっわ!!」
ヒカルは眉一つ動かさない。
ただ静かに、ヒヨリを背にかばったまま、冷気を解く。
ヒヨリは震える声で叫んだ。
「ちがう!ヒカルちゃんは……!」
だが男たちは都合よくかき消す。
「ギルドに報告しとくわ!危険な灰色ってな!」
男たちは勝手に勝ち誇ったまま「灰色の魔女、本性出したぞ!」と騒ぎ散らしながら裏庭を去っていく。
残されたヒヨリは、涙をこらえるように唇を噛みしめている。
「大丈夫。ヒヨリに触れさせなかったから……それで十分だよ」
ヒカルはヒヨリの頭をそっと撫でる。
ヒヨリは紙袋を置き、ヒカルの手を両手で優しく握る。
「ソワーネ…!」
ヒヨリの得意とする治癒魔法。
淡い金色の光粒がヒカルの身体を包み、痛みが引いて行く。
ヒヨリの魔法では痛みは和らいでも、内側の疲労や魔力の消耗までは癒せない。
治せない悔しさ、守れない自分への怒り——そんな感情が入り混じった表情をする。
「ヒヨリ…ありがとう」
ヒカルはそれを察し、小さく微笑む
その時、先ほどの男たちが大声でギルド内で、
「灰色の魔女が冷気ぶっ放してきた!」
「あいつ絶対闇の血が混じってんだよ!」
と大袈裟に吹聴する声、ギルドの冒険者たちがざわつく声が庭まで聞こえくる。




