35.1週間の話
「ヒカルちゃん、ちょっと待っててね。セイとレオンくん呼んでくる!」
そう言うと、パタパタと軽い足音を鳴らして部屋を出ていく。
扉が閉まったあと、私は枕に頭を沈めながら息を吐いた。
(……一週間も、か)
ほんの数十秒後だった。
「ヒカルが起きたって本当か!!?」
ガンッ!!
勢いよくドアが開く。
同時に私はビクッと肩を跳ねさせた。
「レ、レオン……声、大きい……」
「お、おぉ……悪いっ!」
その後から少し落ち着いた足取りでセイも入ってきた。
「……よかった。死んだかと思った」
「セイ、その感想ひどくない?」
「事実だろ」
淡々と言いながらも、セイの表情はどこか柔らかかった。
ほんの少しだけ、安心しているのがわかる。
ヒヨリはセイの後ろから顔を覗かせて、ぱぁっと明るく笑った。
「ほらね?ちゃんと起きてるでしょ!」
レオンはベッドのそばまで駆け寄ると、私の顔を覗き込む。
「ほんとに良かった……!お前、いきなり倒れるから心臓止まるかと思ったんだぞ……!」
「……ごめん」
「謝んなくていい!生きてりゃいい!」
その言い方が妙にレオンらしくて、思わず笑ってしまった。
セイは腕を組んだまま、小さく息を吐く。
「まずは状況を整理する。……ヒカル、座れるか?」
「うん、ゆっくりなら」
枕を背にしながら体を起こすと、ヒヨリがすぐにクッションを持ってきて背中に当ててくれた。
レオンは椅子を、セイは壁にもたれる位置に立つ。
ヒヨリはベッドの隣に座り、私の手をそっと握ったまま離さない。
一呼吸置いて、淡々と説明を始める。
「まず事件の翌日、町全体が朝から晩まで大騒ぎだった。魔王が現れた!ってな」
レオンが横で大きく頷く。
「マジでな。パン屋でも肉屋でもその話しかしなかったぞ……」
「で、噂の中心がな……なぜか金髪の少女が魔王だったって話にまとまっちまったんだよ」
私はヒヨリを見る。
ヒヨリは少ししゅんとしている。
「ギルドには問い合わせが殺到した。魔王は本当に少女だったのか保護しているのではないかとか……面倒な連中ばっかりだ」
セイの溜息は重かった。
「で、それを聞きつけた騎士団が確認のためにギルドへ来た。まあ…俺たちも呼び出されたけど……」
そこまで言って、セイはヒヨリを見る。
「ヒヨリがその場で魔力測定を受けた。結果は――当然、純光属性だ」
ヒヨリが小さく頷く。
「だから騎士団の疑いもひとまずは下がった」
レオンが付け足す。
「町の巡回を増やすって言ってたな」
「……とりあえず、今わかってるのは以上だ。
お前が倒れてる間に、町は一週間ずっとその騒ぎだった」




