31.凍てつく森
セイが後ろのレオンに説明していた。
「この森は連携してくる魔物も多い。注意しろ。……それと槍は、この森じゃ扱いにくい。木が多すぎるからな」
「わかってるけど……うおっ!」
木陰の上から黒い影が落ちてきた。
何も言わず、そのまま前へ突き出す。
冷気が浮かぶ魔物の息を止め、瞬きの間に凍らせた。
カラン と氷が砕ける音だけが響く。
レオンが息を呑む。
「……お、おおう……」
尊敬でもあり、ちょっと引いてる感じも混ざった、なんとも言えない声。
セイは私を見るけど、何も言わない。
ただ、小声でだけ。
「無茶すんなよ……」
返事をする余裕なんてなかった。
返事をしたら崩れそうなくらい、怒りを押し込めてるのが自分でもわかったから。
森の奥へ進むにつれて、魔物が増えていく。
枝の上から飛びかかるもの。
影に紛れて声を真似るもの。
三歩進めば、何かが襲ってくる。
全部凍らせた。
全部、黙らせた。
息が白くなるほど冷気が溢れているのに、胸の奥はどろどろに熱い。
そして…木々が少し途切れた、わずかな開けた場所に出た時……見えた。
赤い髪の男に腕を掴まれて、淡い金色に輝く髪を持つ少女…ヒヨリが顔を青ざめさせている。
ヒヨリがその瞬間、私と目が合って、震えながらも少しだけ息を吐くように肩を落とした。
ヒカルちゃん、と無言で呼ばれている気がした。
私は杖をまっすぐ、赤髪の男へ向ける。
「……ヒヨリを返して」
声が自分でも驚くほど低い。
空気ごと凍りそうに冷たい声だった。
「んだよ、お前……その声……灰色の魔女サンじゃねぇか」
赤い髪の男と私の間に片手を腰に当て、余裕たっぷりの表情で割り込む金色の髪の男。
ギルドの裏庭や祭りの時に絡んできた奴だ…この間名前を聞いた気がする…確か…
「ベリル」




