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灰色の魔女は、静かな日常を夢見ている  作者: 漆原


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28.討伐依頼

草原に出ると、朝の風がふわぁって吹いてきて、草の匂いがした。

空はすごく青くて、なんだか冒険してるって感じがして、胸がちょっとだけドキドキする。


「おーい!あれだろ!?」

レオンくんが指さした先に、もこもこした 緑の綿菓子みたいなの が、ぷかぷか浮いてた。


なんか……思ったより、かわいい。


「ふわふわしてる……」

思わずつぶやいたら、ヒカルちゃんが苦笑いしてた。


「触ると感電するよ、あれ」

「えっ」

かわいいけど、かわいくなかった……。


レオンくんはというと、もうキラッキラした目で前に出ていく。


「よーし!いっちょやってやる!」


私はちょっと心配だったけど……

レオンくんはもう、全速力で駆けて行っちゃった。


「うおおおおお!!」


ウィスプは、ふよ〜って横に動いただけ。


レオンくんの剣は、スカッ!


「えっ!?」

「レオン、落ち着いて!」


ヒカルちゃんの声が飛ぶ。


「くそっ!なんか上手く当たらねぇ!!」

レオン君はふわふわを追いかけて走り回ってる。


ウィスプはぷかぷか逃げるだけ。

なんか……ちょっと楽しんでるみたいに見える。


「レオン、それ予測して動く魔物だ。勢いだけじゃ当たらない」

セイ兄が言うと、レオンくんは歯を食いしばった。


「くっ……!だったら……!」


レオンくんが一瞬だけ足を止めた。

姿勢を低くして、それからぴょんって前に跳ぶ。


その動きを読んでウィスプがふわっと横へ逃げた瞬間、レオンくんが体をひねって、槍を横へ振った。


ウィスプはぱちん、と小さく弾けて、緑の光がふわぁって散った。


「……っしゃあ!!」


レオンくんの声が草原に響く。


「やったぁ!!レオンくんすごい!!」


思わず手を叩いたら、レオンくんは胸を張ってにかっと笑う。


「へへっ!一匹目、倒したぞ!」


でも、まだ草の影から、もふもふした緑のウィスプが…ひょこって顔を出した。


「……あ、まだいる」

しかも、よく見たら……ひとつ、ふたつ……4匹かな…沢山いる…


レオンくんは一瞬で目を輝かせた。


「よーし!まとめてかかってこい!!」


ウィスプたちは、ふよ〜、ふよよ〜……って好き放題に散って逃げる。

レオンくんはその後ろを、ぐるぐるぐるぐる追いかけて……なんかもう、見てるだけで疲れちゃう。


「レオン、もっと周り見て!」

「む、むずい!!」


でもね……


レオンくん、だんだんコツが掴めてきたみたい。


飛び跳ねたり、止まったり、わざとフェイントしたりして一匹、また一匹って、ウィスプを仕留めていく。


ぱちんって、緑色の光がはじけるたびに、


「やったぁ!」って胸があったかくなる。


全部で五匹。

レオンくん、ひとりでやり切っちゃった。

「はぁっ、はぁっ……!ど、どうだっ!」


汗だくで、でもすごく誇らしそうな顔。


「すごいよレオンくん!全部倒しちゃった!!」


私が言うと、レオンくんは胸をドンッと叩く。


「へへっ、当たり前だろ!!」


「素材もちゃんと拾っておかないとね」

ヒカルちゃんが近づいて、ウィスプが消えたあとに残る小さな光の粒を示した。


ぷるん、とした小さな緑のかけら。


「これ……」

しゃがんで拾うと、ほんのりあったかい。


翠灯すいとうだね。回復ポーションの材料になるやつ」

ヒカルちゃんが優しく教えてくれた。


「おお、これが……!光ってて綺麗だなぁ」

レオンくんは目を丸くしてる。


ひなたみたいにあったかい風が吹いて、草がざわざわ揺れる。


なんか……冒険者って、こういうのなんだなぁって思った。


「じゃ、ギルド戻るか」

セイ兄の声に、みんなで頷いて。


翠灯の光をポケットにしまって、私たちは街へ歩き出した。

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