27.4人の朝
朝、外がほんのり明るくなったころ。
家の外から何か音がする気がした。
そっと窓を覗くとレオン君が腕立て伏せをしていた。
レオン君は私に気がついてくれて、おはよう って手を振ってくれた。
私も窓を開けておはよう!って挨拶をした。
レオン君はすごいなぁ、朝から全力だ。
まだ眠たくて目をこすっている私とは大違い。
「お兄ちゃんおはよ〜!レオンくん起きてるよ~」
台所に向かうと、お兄ちゃんがいつもの難しい顔で鍋をかき混ぜていた。
「だろうな。あいつ寝れるタイプじゃねぇだろ。
ヒヨリ、悪いけどそこの皿取ってくれる?その後ヒカルの様子も見てきてくれ」
「はいどうぞ!ヒカルちゃんの事は任せて!」
なんだか……にぎやかだ。
昨日まで三人だった家が、急に賑やかになった。
私は階段をとん、とん、と上っていき、
ヒカルちゃんの部屋の前で一度深呼吸した。
「……ヒカルちゃーん、起きてる……?」
そっとドアを開けると、ヒカルちゃんは布団の中で目を開けた。
でも、まだ少ししんどそうで――見てるだけで胸がきゅっとなる。
「体調……どう? 痛かったりしない……?」
ヒカルちゃんは、私に心配をかけない為なのか、ふわっと笑う。
「ヒヨリ、おはよう。大丈夫だよ」
その笑顔にほっとして、私はすぐに手を差し出す。
「じゃあ、一緒に行こ!」
二人で下に戻ると、すっかり朝の匂いができあがっていた。
ほかほかのごはん、スープ、それに焼いたお肉のいい匂い。
「おー!来たな二人とも!ヒカル、座れ座れ!」
レオン君が嬉しそうに椅子を引き、
お兄ちゃんは 焦らなくていい と小さく言って皿を並べている。
私は急いでヒカルちゃんの前にコップを置いた。
四人で食卓を囲むのは、なんだか初めてなのに……
もうずっと前からこうだったみたいで、あったかかった。
ギルドに向かう道は、朝の光がきらきらしていて、なんだかわくわくした。
レオンくんはヒカルちゃんの後ろをちょこちょこ歩いてて、まるで大きい子犬みたい。
お兄ちゃんはその後ろを歩きながら
「そんなに急ぐなっての。転ぶぞ」
なんて言うけど、声がちょっと笑ってる。
ヒカルちゃんはいつも通り、眠たそうで静か……なんだけど、昨日よりずっと元気そうで、私はそれが嬉しかった。
ギルドに着き、レオンくんの登録が終わるまで、私はヒカルちゃんと椅子に座って待っていた。
登録を終えたレオンくんが元気よく走ってきて、
「なぁ!ヒヨリ!オレもう正式な冒険者だってよ!」
と、胸を張って言ったので、思わず「すごいね!」って手をぱちぱち叩いちゃった。
今日の依頼は、みんなで選ぶことにした。
壁に貼られた紙の中から、お兄ちゃんが一枚を指で軽く叩いた。
「これなんかいいんじゃねぇか? 初心者向けだし」
そこには『草原地帯に出るグリーンウィスプの討伐』と書いてあった。
ヒカルちゃんは紙を覗きこみ、ぼそっと、
「ふわふわしてるやつ……だよね。危なくはないし」
と呟いたので、私は思わず胸が軽くなる。
レオンくんはというと、目を輝かせて、
「ふわふわ!? 倒すのにふわふわって何だ!? 楽しみすぎる!」
ともうはしゃいでいて、
お兄ちゃんが「騒ぐなバカ」と軽く頭をぽんと叩いていた。




