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灰色の魔女は、静かな日常を夢見ている  作者: 漆原


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22/41

22.攻防戦

東の丘を越えてさらに先、草の匂いだけが広がる開けた場所まで来た。


レオンは槍を肩に担いだまま、ずっとワクワクを隠せないみたいに前を歩いている。


「ここならいいだろ!思いっきりやっても誰にも迷惑かからねぇ!」


「……ほんとにやるんだね」


フードを深くかぶり直しながら言うと、レオンは満面の笑みで振り返った。


「当たり前だろ!ずっと楽しみにしてたんだ!」


ヒヨリは少し離れたところで、セイの横にぴとっとくっついて、心配そうにこちらを見つめている。


セイは腕を組んでため息をついた。


「……ヒカル、無茶すんなよ。やるってんなら止めねぇけど、危ねぇと思ったらすぐ下がれ」


「……うん、ほどほどにする」


ほどほどに、ができるかどうかは別として。


レオンは槍をくるりと回し、やる気満々で構えた。


「準備はいいか!? 灰色の魔女!!」


「リヴェール」

右手に氷で出来た剣を作り出す。

細身で、軽くて、耐久もそこそこ。


正直、槍相手にこれ一本で勝てる気はしない。


でも、やると言ったからには退けない。


「……いつでも」


レオンが地を蹴った。


風が起こる。

彼の足元からふっと巻き上がる風魔法の加速。


あたしの目の前に来るまでの時間が、想像よりずっと短かった。


「っ……!」


振り下ろされる槍を、咄嗟に氷剣で受け流す。

金属と氷がぶつかって、キィンと耳に刺さる音が鳴った。


衝撃が腕にびりっと走る。

……思ったより重い。


レオンはすぐに次の攻撃へと繋げてくる。


「もっと来いよ!!本当に強ぇんだろ!?」


「強くないってばっ……!」


受け流すだけで精一杯。

下がれば槍の間合いに入られる。

前に出れば押し切られる。


息がすぐに上がって、手の中の氷剣が汗で滑りそうになる。

(……このままだと、普通に負ける)


イラついたわけじゃない。

ただ、ちょっとだけ悔しかった。


(右手じゃきつい)


あたしは一瞬、剣を浮かせ、左手へ持ち替える。


レオンの槍が振り下ろされる刹那、左手の剣で辛うじて受け止めながら、空いた右手で足元に氷を走らせる。


薄く、透明で見えにくい氷膜が広がり、レオンの足が滑った。


「うおっ——!?」


ほんの一瞬だけ、体勢が崩れる。


その隙を逃さず、あたしは距離を取った。


レオンはすぐに体勢を立て直し、槍を構え直す。


「すげぇ!なんだ今の!」


彼の手が光り、その光が目の前で弾けた。


「目眩まし…!」


白い閃光に視界が焼かれる。


「ヒカルちゃんっ!!」


ヒヨリの声が遠くで響く。


視界が戻る前に、地を蹴る音が聞こえた。


……来る。


「今度は俺の番だッ!!」


風がレオンの足元から爆ぜるように立ち上がり、

速度がさっきの何倍にも跳ね上がった。

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