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灰色の魔女は、静かな日常を夢見ている  作者: 漆原


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1.始まりの朝

昼下がりの広場には、淡い髪色の子ども達が円をつくり、年配の語り部の本に視線を向けていた。

ページがめくられるたびに、薄い光が舞い、絵本の魔法が子どもたちを包む。


「ーーその日、闇の軍勢は突然、我ら光の領土へと襲いかかってきました」


語り部の声は淡々としているが、子ども達は息をする事を忘れるかのように聞き入っている。


「先頭に立っていたのは、幼い少女の姿をした『魔王』…漆黒の髪、漆黒の瞳、そして、すべてを焼き尽くす漆黒の炎」


絵本や語り部の周囲には、黒い炎に包まれる街が描かれていた。

子ども達は語り部の魔法に不安そうな視線を向ける。


「魔王は、光の民を恐怖に陥れました。理由もなく、情けもなく…混乱を楽しむかのように笑い、奪い、この首都ラールを破壊したのです」

「ーーこれが本性…闇の住人とは、そういう存在なのです」


語り部の言葉に、子ども達は神妙な顔でうなずく。


「だからこそ心に刻まねばなりません。闇の住人には、決して心を許してはなりません」

「彼らはいつかまたーー」


語り部は本を閉じて告げた。


「光の住人を滅ぼしに来るでしょうーー」


静まり返る広場。


「さあ、次はどの物語がいいかな?」


と語り部のにこやかな顔に、神妙な顔をしていた子ども達は「次はこれがいい!」「これも読んで!」と語り部の周囲に集まり楽しんでいる。


その端の木陰で、一人の少女が小さくため息をついた。


灰色の髪を揺らし、フードを軽く整える。

その瞳に浮かんだのは、恐怖でも悲しみでもなく、ただの“苦笑”に近いものだった。

(……また随分と話が盛られてるなぁ。)


気まぐれで耳を傾けていただけだったが、実際にあった物語を語り継ぐという形であれど…あの事件を聞くのは胸が痛む。

(実際に首都が陥落しかけてたのは本当だしな…)


立ち上がり軽く伸びをする。

そろそろ集合場所へ向かうことにするかと考えていると


「ヒカルちゃーーん!!」


明るい声が広場に響く。

振り返ると淡い金色の髪を揺らしながら小柄な少女が駆け寄ってきた。


「もー!探したんだよー!」


「ヒヨリ…?走ってきてどうかしたの?」


まだ集合時間ではないはずだし…ヒヨリが探しにきた理由がわからず困惑していると


「また時間みないでのんびりしてたんでしょ!集合時間過ぎてるよ!」


……変な絵本の話なんて聞くんじゃなかったな


「えーっと〜…ごめん…」


頬を膨らませ、ぷんぷんと起こる様子を見せるヒヨリにただ謝るしかない、が謝る様子を見てクスクスと笑う


「時間見てないから騙されるんだよー本当は10分前で〜す」


ヒヨリがニヤニヤしながら言うのでなんだか笑えてきてしまう。


「騙されてたのか〜!気づかなかった…でも呼びにきてくれてありがとう」


行こっかと手を差し伸べ2人は広場を後にした。

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