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名もなき物語〜主人公のいない物語〜  作者: 真黒
第一章 「世界の“矛盾”」
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第一章 11話 「反撃の時間」

ずいぶん久しぶりの投稿となりました。

投稿はしばらく不定期ですが,これからもお願いします。

銀髪が鼻にあたり,そのくすぐったさで目が覚める。

目を開けると,すぐ目の前にアメリアの寝顔があった。すうすうと息を立てて熟睡している。そっとその髪を触る。

小さい頃から変わらない,何かの花の香り。彼女が使う,香り付きの石鹸の匂い。少年にとってそれは,慣れ親しんだアメリアの匂いになっていた。

そっとその頭を撫でる。なんの夢を見ているのか,彼女は楽しそうに微笑んだ。


ー朝,だよな?多分。


外はまだ暗く,時間がわからない。


ー確か,アメリアは自分の時計を持ってたな。


ぐっすりと眠っている彼女の細い右腕を(彼女は左利きだ)持ち上げる。

彼女の腕につけられた小さな金の時計を見て,少年は大きく息を呑んだ。


ーやばい。もうすぐ早い奴ら,起きてくる。


昨日の夜,思い切り早く起きようと考えていたにも関わらず,すでに起床時間は間近に迫っていた。

そもそも,就寝時間に寮の自室の外にいると厳罰の対象になる。少年もアメリアも優等生なので,周りは隙あらば蹴落とそうと狙っている。そんな中,彼とアメリアが高速を破り,(しかも2人で)ロビーで寝ていることがバレでもしたら・・・・・・

アメリアの立場は危うくなり,少年の目的は果たせなくなってしまう。


「おい!アメリア,起きろ。早くしないとヤバい。」


「うぅ〜ん・・・ふぁぁ・・・」


「・・・おい。」


「・・・zzzz」


「・・・はぁ。」


ー仕方ない。女子寮にこっそり運び込むか。


しかし,そう思って行動を起こそうとした瞬間,寮へ続く廊下の方から足音が聞こえてきた。


ーまずい。このままじゃ,バレる。


あたりを見渡し,一つだけ解決策を見つけた。ただ,一つだけ問題がある。


ーアメリア,怒るなよ。お前が起きないのが悪いんだからな。


アメリアの体に手を伸ばし,一瞬躊躇う。アメリアが顔を赤くして怒る姿が容易に想像できる。しかし,もう時間はない。足音が,刻一刻と近づいてきていた。

迷いを捨てて彼女の体を抱き上げ,ソファーの下に一緒に潜り込む。クッションで入ってきた場所を隠し,隙間から様子を伺う。ロビーに入ってきたのは,女子生徒だった。

少しの間息を潜めていると,生徒は少し離れたところにある長椅子に腰を下ろした。

そっと息を吐き,力を抜く。しかし,休む暇もなく問題は起きた。

銀色のまつ毛が,ぴくぴくと動き始める。


「ふぁぁぁ・・・もうあs,ふぅんぐっ!」


目を覚まし,何かを言いかけたアメリアの口を慌てて塞ぐ。今声を上げられるのはまずい。


ふょっふぉ(ちょっと,)ふぁふぃふんふぉふょ(何すんのよ)。」


くぐもった声でアメリアが何かを言った。

いまだに状況を理解していない彼女の耳元で,できるだけ小さな声で囁く。


「お前が泣き寝入りしたせいで,ロビーで寝るハメになったんだよ。それで,誰か入ってきたからソファーの下に隠れてる。でかい声出したらバレる。」


「ふぇっ,ふぁんふぇふぁんふぁふぁ,ふょふふぃふぃふぁふぁふぁっふぁふぉふょ。」


ー多分,なんで俺が寮に戻らなかったのかって聞いてるな。


込み上げる笑いを得意のポーカーフェイスで噛み殺し,わざと不機嫌な顔を作る。


「本当は寮に戻って,朝のクッソ早い時間帯に起こしにくる予定だったんだよ。でも,お前が俺にくっついてたせいで戻れなくなった。誰のせいだと思ってるんだよ。」


ようやく状況を理解したのか,アメリアは目を丸くすると,声をひそめて言った。


「じゃあ,あたしのせいなのね。で,ここはどこよ。なんであんたとこんな至近距離で話してるわけ?」


「ソファーの下だ。あんまり動くなよ。バレるから。」


そう言うと,彼女は複雑そうな顔をした。続いて,ふてぶてしく言い放つ。


「ちょっと,変な気おこさないでよね。」


「なんで俺がお前に手出すんだよ。」


「だって,あたしみたいに可愛い女子とこんな近距離で,しかも人のいない場所で2人きりなんて。いかにも年頃の男の子が好きそうじゃない。」


尊大な態度で言いながらも頬を染め,目を少しの期待に輝かせる彼女に,全くそんな気が起こらなかったといえば嘘になる。しかし,そんな思いを顔に出すことはしない。

逆に,目の前に横たわる美少女に心の底から軽蔑するような目線を向けてやる。


「俺,別にそういうの興味ねえし。大体どうやったらそんな発想に至るんだよ,おませのお嬢様。」


「あのさぁ。そこは顔真っ赤にしてそっぽを向くのがお約束でしょ?」


「俺マジで興味ねえから,自分で赤くなっとけ。お前のそんな顔見たら,多少は気分も良くなるよ。」


「・・・もうっ!なんであんたには口論で勝てないのよっ・・・!」


アメリアが赤い顔でムキになって言い返し,声が大きくなっていることに気づいて慌てて口を押さえる。

そうやって言い合っているうちに,どちらからともなく顔に笑みが浮かんだ。


「元気,出たみたいだな。」


「・・・ふんっ,ムカつく物言いね。・・・でも,ありがと。」


「・・・そこの人が出ていったら,女子寮に忍び込む。お前の顔見て機嫌良くなったし,特別に裏道を教えてやる。しっかりついてこいよ,お嬢様。」


途端に,明るく可憐だった彼女の笑顔がひきつった。


「あんた,ひょっとして今までも女子寮に忍び込んでたの?」


「余計なことは考えなくていい。」


「いや,でも,だって・・・」


「誰もいなくなった。行こう。」


まだ何かいいたげなアメリアを連れて,彼は誰もいなくなったロビーを抜けた。

隅の壁の前まで歩いて行き,石のくぼみに手をかけさせる。


「ここを上っていけば,誰にも知られていない秘密の通路がある。そこを通れば部屋に行ける。俺が行けるのはここまでだ。」


「えっ,ちょっと待ってよ。あたし1人で行けって言うの?」


「?・・・ああ。女子寮に入ってくるなって言ったのはお前だろ。」


「そうだけど・・・うぅ〜。落ちたらどうすんのよ。」


「はよ行け。俺はちょっとしなきゃいけないことがあるんだ。」


アメリアはしばらく不満そうに少年を睨みつけていたが,どうにもならないと悟ったらしい。

貴族の家のお嬢様の割に,アメリアは運動が得意だ。万が一彼女が壁を登れなかったりしたら抱えて上るところだったが,その心配は不要だったようだ。

彼女が上るのを見届けて,彼は踵を返した。重そうな床石の


ー早くしないと。あいつが寮から出てくる。


彼の目に,暗い光が宿る。


ーレイス・ロスノック。あいつは絶対許さない。


妹のように思っているアメリアを傷つけられて,彼は怒りの絶頂にいた。しかし,それを表情に出すことはしない。いつだって,最後に勝つのは冷静でいられた方なのだから。


ー俺は絶対に取り乱したりしない。アメリアの心を救い,母さんの復讐を果たすまでは。

今の所,謎だらけの二人ですが,ある人物の過去と密接に関わってきます。

個人的には二人のこの関係性が結構好きだったりします。



追記  :1,200PVありがとうございます!

追記Re :1,300PVありがとうございます!

追記ReRe.:1,400PVありがとうございます!

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