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名もなき物語〜主人公のいない物語〜  作者: 真黒
第一章 「世界の“矛盾”」
13/23

第一章 1話 「不穏」

12話投稿前に13話を投稿するという,とんでもないミスをしていました!すみません!

そのため,この12話はすごく短くなってしまいました。

純也が何か訝しむような目で雷を見つめ、手招きをしている。愛美と一瞬視線を交わすと、彼女は緊張した面持ちでうなずいた。

ついて行くと、純也は小さな声で,しかし厳しく問い詰めてきた。


「お前、さっきの花瓶、何でよけれた?」


ーげっ。まずい。

さすがに運動に関してはエキスパート。先ほどの戦闘における不自然さ。純也の目をごまかせるはずもなかった。


「雷、お前さっき、真後ろから飛んできた花瓶をチラリとも見ずによけたよな。それに、あの笹尾とかいうやつの攻撃も受け流してたし。お前、こないだまでは絶対にあんなことできなかっただろ?というか、花瓶に関しては俺でも避けれんぞ。」


ー完全にばれている。僕の身に変化が起きたことが。

雷が言い訳をしようと口を開きかけたとき、先生が戻ってきた。


「みんな、席に着け。笹間は保健室だ。朝から嫌なことがあったが、気持ちを切り替えて朝礼を始めよう。」


先生のおかげで助かった。純也は何か言いたそうに雷を見たが、先生に逆らうことはしなかった。席に戻ると、愛美が不安そうな目でこちらを見ていた。


【大丈夫?怪しまれてたみたいだけど。】


またしても脳内に愛美の声が響く。


ーこれって、こっちからも発信できるのかな。


そう頭の中で言うと、愛美がそっとうなずいた。便利な能力だ。使い方も別ったところで、気になったことを尋ねる。

ー何であいつは、僕は一番最初に襲ったんだろう?僕が特別な立場だと言うことを知っているとしか思えない。

すると、愛美はしばしの沈黙の後に答えた。


【雷くんは、わたしの血を飲んだでしょ?わたしの血には魔力があって、普通の人には魔力がないの。だから、魔力のある雷くんを危険と判断したんじゃないかな。本当だったら操りたかったんだろうけど、わたしがお守りを渡してたからね。】


背筋に、寒いものが走るのを感じた。一歩間違えば、自分が傀儡となって人を襲っていたかもしれないのだ。

皮肉にも,悪魔による襲撃がその可能性を消してくれたようだが。


ーじゃあ、何で愛美は襲われなかったんだ?


【それは、わたしが魔力を隠す訓練をしているから。後で雷くんにも教えてあげるね。】


疑問の答えは出た。ただ、雷はどうにも気持ちが悪かった。さっきの、操られていたときの笹間の表情。人を害することをなんとも思っていなかった。それに、虚ろな目はとても同じ人とは思えなかった。

ー許せない。

純粋な怒りが、彼の心を支配していた。人を人形のように操り、自分は手を汚さない。卑劣さに反吐が出そうだ。

ー黒幕は、誰だ?見つけてぶっ飛ばしてやる。

そんな雷の怒りが伝わったのか、愛美が不安そうな声で語りかけてきた。


【大丈夫?知らない人からしたら、きついよね。これが悪魔なの。人を人と思わない。ただ、自分の糧としてしか見ていない。だから、わたしは戦うの。これ以上、悪魔に苦しめられる人がでないように。】


雷は、怒りの波が引いていくのを感じた。代わりに、悲しさが少しずつ膨らんでいく。

愛美は心配そうに首をかしげる。


【無理しないでね?もちろん、一緒に戦ってくれたら嬉しいけど、無理してまで戦って欲しくはないの。だから・・・・・・】


はっとした。愛美の力になると、誓ったはずだったのに。こんなことで自分の決心は揺らいでしまった。そんな自分が、恥ずかしくなった。ゆっくりと、周りの人にわからないように首を横に振る。

雷の心情を察したのか、愛美は何も言わずにそっと微笑んだ。

その後、授業は何事もなかったかのように続けられた。2限、3限、4限と特別に異常事態が起きることもなく進められた。時は流れ、やがて何も起こらずに昼食の時間がやって来た。

雷は純也と、そのほか数人の男子と談笑しながら手を洗い、教室へと入る。すると、愛美が強張った顔で駆け寄ってきた。


「真雲くん、ちょっといい?」


純也が無言で背中を押す。それとは対照的に周りのやつらはむっとしたような目線を向けてくる。さっきの出来事が脳裏をよぎり、雷は急いで愛美についてその場を離れた。

少し離れたところにいってから、雷は小さな声で尋ねた。


「どうしたの?」


愛美の顔は青ざめており、今にも倒れそうなほどに体を震わせていた。ただならぬ様子に、雷の鼓動もしだいに早まる。彼女はひとつひとつ絞り出すようにして呟いた。


「誰かがみんなのお弁当に毒を入れた・・・の・・・!」


その言葉は、雷の顔をも青ざめさせ、また言葉を失わせるのに十分な力を持っていた。

そして、また一つ日常が瓦解していく。血の契約は、彼の日常をしだいに破壊し、蝕んでいくのだ。

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