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名もなき物語〜主人公のいない物語〜  作者: 真黒
序章 「全ての始まりにて,彼らは何を想うのか」
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序章 9話 「世界は彼を中心に廻る」

感想など書いていただけると嬉しいです

暗い部屋の中心には、豪華絢爛な椅子が置かれていて、その周りには数え切れないほどの金銀財宝が積み上げられていた。その椅子に足を組んで座り、ワイングラスをもてあそんでいる青年がいた。血のように赤い液体に口をつけ、しばしの間、目を閉じる。

彼はわかっていた。間もなく、仕事を与えたしもべが帰還するであろうことを。

彼の予想を違うことなく、1分とたたぬうちに目の前に暗い赤色に光る魔方陣が展開された。青年のかけた金縁の眼鏡が、その光を反射して輝く。魔法陣の中から、醜い姿をした生物が1体姿を現した。黒く小さな体のそれは、背骨がエビのように曲がっており、醜く曲がった角を持ち、蝙蝠のような翼を持つ・・・・・・人の言葉で言うところの悪魔のような姿をしていた。


「で、首尾はどうです?」


落ち着いた、よく通る声で青年が尋ねた。


「我ガ主ヨ。ゴ命令通リニ、アノ小僧ヲ殺シニ行キマシタ。」


ざらざらした不快な声を、醜い下僕は発した。


「それは何より。それで?」


青年は優しい笑みを浮かべると、続きを促した。

悪魔はしばらく迷っていたが、やがて口を開いた。


「恐レナガラ、我ガ主。宵月様ガ乱入サレタタメニ、トドメヲ刺スコトハカナイマセンデシタ。」


途端に、青年の表情が一変した。


「それは、わたしの命令を遂行できなかったということ、ですか?」


先程までの温厚な表情は欠片もなく、冷たい殺気だけが場を支配していた。小さい悪魔は縮こまり、震えていたが、おそるおそる続きを述べた。


「アノ小僧ニハ、致命傷ヲ与エマシタ。腹ヲ槍ガ貫通シタノデス。助ルハズガ・・・・・」


次の瞬間、悪魔は首を捕まれ、持ち上げられていた。必死に抵抗するが、青年の握力は万力のように強く、じわじわと首の骨が悲鳴を上げ始める。


「致命傷、ですか。・・・・・・この愚か者。あの子の力のことを忘れたのですか?とどめを刺していないのなら、それは失敗と同義。お前は、人一人を殺すという簡単な命令すらこなせなかった。

役立たずが。私自ら出向きましょう。お前は、もういい。」


そう言うと、青年は何のためらいもなく小悪魔の首を握りつぶした。派手な血しぶきが上がり、床に血が滴るが、青年の服には染み1つつかなかった。

うんざりしたように手から血を払い落とすと、青年は言った。


「貴女が私のものになる日も近い・・・・・・私は手段を選びませんよ、アスモデウス。」


青年の背から漆黒の翼が生えた、と思う間もなく、一陣の風とともにその姿はかき消えた。




爆音とともに、土の香りが鼻をつく。すばやく山を登り始めた紅煉の後を一瞬迷った後に僕も続いてのぼり始める。嫌な予感で吐き気がする。そんな気持ちをごまかすように、体に染みついた記憶のままに再び剣を生成する。爆発の中心に近づくと、そこの中心で戦っているモノたちが見えてきた。それは、美しい1体の白竜と、ぞっとするほどに暗い闇を纏った何かだった。

激しい剣戟の瞬く中、白竜は今にも地に落ちそうなほどにふらふらとしており、必死で応戦しているがそう長くは持たないだろう。考えるまでもなかった。こういった状況の時、誰だって自分の同族を助けるに決まっている。

剣を構えると、不思議なほどにすらすらと口から言葉が出てくる。

1度竜の姿へと変わり、上空へと舞い上がる。空中で再び人の姿へと戻り、力を発動させる。


「空高く舞う水よ。その身を捧げ、我が足となれ。【流雲渡(りゅううんわたり)】」


正直なところ自分が何をしているのかいまいちわかっていなかったので、重力に忠実に自分の体が落下を始めたときには肝が冷えた。ところが驚いたことに、僕の足はしっかりとした足場を捉えた。

まじまじとそれを見つめる。目をこすってもう一度眺めるが、やはり事実は変わらない。

僕は雲の上に立っていた。正確に言えば、僕の足元だけに小さな雲が生成されており、その上に立っているといったかんじだ。

もう迷わなくてもすんだ。僕はその先の、何もない虚空に足を踏み出した。予想通りだった。そのあ氏のしたにも雲ができ、足場となっている。

僕は体を再び記憶にまかせて走りだした。空中を少し下に向かいながら翔る。やがて、対象の真上へと到達する。


「天より下る水の力を、その身に刻め。【雨瀑(うばく)】」


空中歩行の技、【流雲渡】を解除し、体を落下させながら剣を上段に構え、刃に水を纏わせる。

そして、落下の勢いそのままに黒い怪物にそれを叩きつけた。

怪物はとても素早い動きで飛び下がり、応戦してきた。それに対してまたもや体が反応する。


「水よ、我が刃となれ。この技を天に捧げよう。【衝天瀧昇(リュウグウノツカイ)】」


剣を逆手に持ち替え、膨大な水の力で上へと切り上げ、敵を上空へと吹き飛ばす剣技。またしても黒い敵はそれをよけた。だが、その周りのもやが斬撃の勢いですべて吹き飛ばされる。

その中から現れたのは、なんとも驚くべき姿をしたモノだった。

そこにいたのは、夜の闇よりもなお黒い漆黒の鱗を身にまとった黒竜だった。気になるのはそこではなく、その顔だ。なんと、今まさに僕の後ろにいるその白竜と瓜二つなのだ。

黒い竜は怒りのうなり声を上げ、体を人型へと変化させた。闇を纏った刀をさらりと抜き放つと僕へと飛びかかってくる。速い。首を狙って伸ばされてきた刀を剣ではじき、反撃を試みる。が、そこにはすでにその姿はなかった。背中にひやりとする殺気を感じて、振り向く。

いつのまにか、敵は僕の背後へと回り込み、背中を貫こうとしていた。


「邪魔だ、どけ!」


上空から紅煉の声が降ってきた、と思う間もなく猛烈な熱とともに、両手の長く伸びた爪に赤黒い炎を纏わせた紅煉が落ちてきた。


「貴様を、消し炭にしてやろう。【赫爪(かくそう)】」


空気を熱で歪ませ、爪が黒い竜へと迫る。避けられる。再び踏み込み、爪で切り裂く。避けられる。

激しい攻防を繰り返しながら気づけば紅煉は敵を連れて遠ざかっていった。

僕はふと思い出し、白竜の方を振り向く。白竜もどうやら危機が去ったことを悟ったらしく、ゆっくりと頭をもたげる。そして、真っ白な光がほとばしり、その姿が縮んでいく。やがてその光の中から現れたのは、白髪に色の薄い瞳を持った細目の優しそうな少年だった。

先に口を開いたのは、その少年だった。


「助けてくれてありがとうございます。ボクは、白夜といいます。」


気弱そうな口調に、なぜか僕は意外な印象を受けた。


「ああ、いや、気にしないで。僕は黎、っていうらしい。実は記憶があんまりなくてさ。」


それを聞いて、白夜と名乗った少年は細い目をさらに細めた。


「奇遇ですね。ボクもなんですよ。実は、過去の記憶が全くなくて。」


この世界に来てから、初めて同じ境遇のモノと出会った。それが、僕の心を浮き立たせていた。そのせいで、気づかなかった。白夜の額に異常な量の汗が浮かんでおり、顔が異常に白いことに。

彼に背を向け、言う。


「僕についてきて。あのよくわからない敵は、紅煉が相手しててくれる。」


「いや、でも・・・・・・」


言葉が途絶え、僕は後ろを振り向く。

どこか不自然な音を立てて、白夜が倒れていくところだった。よくみると彼は右腕に大きな傷を負っており、それがまるで虫のように蠢いていた。

うかつだった。さっき戦っていたときもふらついており、今にも落ちそうだった。

白夜に駆け寄り、声をかける。しかし、一向に意識を取り戻す様子はない。いやな予感が強くなるが、無視して白夜の肩をつかみ、強く揺する。


「起きろ!まだ敵はいなくなってない!ここにいたらやられるぞ!」


そこで、ふと違和感を覚える。起きる?目覚めるべきは、僕じゃないのか?


目覚める めざめる メザメル・・・・・・


何の気なしに空を見上げると、星が瞬いていた。次の瞬間、星が回り出した。それにつれて、木々も、地面も、この世界の全てが。


【世界は、僕を中心に廻り出した】


今この世界の一節に、この言葉を綴ろう。


意識が、体から抜けていく。やがて、回る世界の中心に光が見えた。僕はそこに、飛び込んでいった。

序章も間も無く閉幕となります。書きたいことは山ほどありますが,文章力と時間が追いつきません。

夏休みも終わりますが,これからも不定期に投稿を続けます。


追記 作品全体のルビを修正しました

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