若き女王と婚約者〜巨乳の秘訣を知りたかっただけなのに何でこうなった?〜
年の差ラブラブカップルを書きたくてはじめたはずが、どうしてこうなった?
納豆の事、酷く言ってスミマセン。私は納豆好きです。
むかしむかしあるところに、小さな王国がありました。
その国にはひとりのお姫さまがおり、しあわせに暮らしていました。でもそれは、ある日突然壊れてしまいました。
お父さんとお母さんである、王様と王妃様が事故で死んでしまったのです。
その時のお姫さまの年齢は、わずか8歳。
まだ女王として国をまとめる力は、幼いお姫さまにはありませんでした。
この王国はどうなってしまうんだろう。
そう心配された時、死んでしまった王様の友人だった隣国の皇帝がある提案しました。
「若き女王を支える為には、執務経験がある成人した王配が必要だ。
我が息子である、第五皇子を王国へ送ろう」
この時、皇子ジークフリートは20歳。
女王となるアイリス姫との年の差は、12歳だった。
───······
───────············
「ジークフリートっ!」
ジークフリートの姿をみつけ駆けよると、わたくしに気付いたジークフリートが愛馬から飛び降りる。手網をそばに居た側近に預けると大きく腕を拡げた。
躊躇することなくその腕に飛び込む。ジークフリートはぎゅっと抱きしめてくれたあと、わたくしの顔を覗きこんだ。
「ただいま戻りました。アイリス様」
「おかえりなさい。ジークフリート」
微笑みあうとジークフリートはいつも通り腕を差出し、わたくしがその腕に手を絡めると城内へと足を進めた。
「視察はどうだったの?」
「2年前の水害が嘘のように復興していました。皆が頑張ったのでしょう。今年はまだ難しかったですが、来年には作物の収穫も見込めると思います」
「そう、良かったわ」
一週間もの間、城を留守にしていたジークフリートとその間にあった出来事をお互い報告しながら部屋に着くと、私をソファへ降ろした。
「帰りに立ち寄った町で、祭りが行われていたのでお土産を買ってきました」
「まぁ、なにかしら」
側近が、大きな箱をわたくしの前に置いた。
わくわくしながら箱を開けると、そこにはドレスを着たピンク色の大きめなうさぎのぬいぐるみ。
わたくしは箱からうさぎを取り出し見つめた。瞳は青色でキラキラしている。
「可愛いでしょう。最近、町で人気のぬいぐるみらしいです」
「そうなの······。ありがとう、ジークフリート」
わたくしはそう言って、うさぎのぬいぐるみを抱きしめた。
「······はぁ」
「どうされたのですか? せっかくジークフリート殿下が戻られたのに溜息などついて」
夕食前の身支度の時間。わたくしの髪を梳かす侍女のマリアが鏡越しに見つめ聞いてきた。
わたくしは横に置いていた先程ジークフリートから貰ったお土産······うさぎのぬいぐるみを見る。
「ジークフリートが、お土産にこの子をくれたの」
「とても可愛いうさぎさんですね」
「とっても可愛いわ。かわいいけど······」
「けど?」
「わたくしはもう13歳よ!? もう立派なレディーなのに、お土産がぬいぐるみなんて······」
そう言ってうさぎのぬいぐるみを手に取ったわたくしを、「あらあら」とマリアが笑う。
わたくしは縋り付くように、うさぎの頭に顔を埋めた。
「ジークフリートにとってはわたくしは······、まだまだ子供なんだわ」
ジークフリートがこの王国に来てくれてから早5年。その頃はジークフリートの腰ほどしかなかったわたくしの身長は、今は胸くらいの高さまで大きくなった。
だけど、私が成長した。ということはジークフリートも5歳、歳をとった訳で······。
今月にはジークフリートは誕生日を迎え、26歳になる。
出会った頃は若々しい青年という感じだったがこの5年でさらに素敵な、大人の男性になったと思う。
去年、わたくしの誕生日······。
やっと、自分の歳の倍という年の差ではなくなったわ!
と密かに喜んだのに、またもその差が開いてしまう事に複雑な気持ちになってしまう。
大好きな人の誕生日を素直に喜べないなんて······。と自己嫌悪しながら、うさぎから目線をあげ鏡越しのマリアを見る。
マリアは、いいなぁ。
この国では珍しい黒色の艶やかな髪を、今は仕事の邪魔にならないよう後ろで一本にまとめている。なんでもおばあ様が東の小さな島国の出身だとか。
女性にしては高めの身長で、歳は今年で23歳。マリアなら長身のジークフリートと歳も身長もバランスが取れていて、わたくしにとってはまさに理想だ。
それにスタイルだって、手脚は長く腰は細いのに······なんで胸だけ大きいのかしら?
わたくしの前髪をセットする為に後ろから抱きしめるように、私の顔に手を回すマリアの大きいお胸が私の後頭部にあたる。
それに比べて······。うさぎを持ち上げて下を見ると、すっとーんとしていてるわたくしのお胸。
胸に思わず手を当てるが小さな手でもあまる······控えめがすぎる、わたくしのお胸。
揉んでみようにも············も、もめない!?
どうにかちょっと寄せ集めて触ってみるが、なんだか硬い。
男性はおっぱいが好きだと聞いた事があるけど、こんなの触って楽しいの??
「姫さま? 何をなさっているのですか?」
「マリア······わぶっ!!」
ぽよんっ
勢いよく振り返った為に、わたくしの顔がマリアの胸に埋まった。
抜け出すべく、マリアの胸に手をつくと······
「!!?」
ふわっふわだわ。程よく弾力があるのに、柔らかい!
これなら、男性がおっぱい好きと言うのも納得だわ······。わたくしの胸とは全然違う!!
「マリア!! どうすれば、マリアのような大きなお胸になるの!?」
「胸、ですか? 特に何もしていません。気付いたら大きくなっておりました」
わたくしにお胸を揉まれても、動じることなくマリアは淡々と答えた。
······綺麗な人は、綺麗な秘訣を聞いてもよくそう言うわよね。だけどっ! ある程度は生まれ持ったものかもしれないけど、大抵は意識してない自然にやってる生活習慣に秘訣があるのよ。
スタイル抜群で、お肌も髪も綺麗なマリア。何かがあるに違いないっ!
「好きな食べ物は? 何か、他の人が食べてない特別な物を食べてたりはしない??」
「食べ物でございますか? ······あ、もしかすると」
「何か心当たりがあるの!?」
───────······
夕食の時間。
会議が夕食の時間までに終われば一緒に食べよう。と約束したけど、1週間も城を空けていたジークフリートは、国の重役からその間の報告を受けたり、視察での結果報告・対策を話し合う必要がああったりと忙しく、やはり一緒に食べることは叶わなかった。
1週間ぶりに帰ってきたジークフリート。一緒に食べたかった。でも······、視察などで城を空けた後にこんなにもジークフリートが忙しくなるのは、本来は女王である私がすべき仕事をわたくしがまだ未成年である為に将来王配となる······婚約者であるジークフリートが請け負ってくれている為だ。
わたくしが成人してれば······、ジークフリートにこんなに負担をかけなくていいのに。ちゃんと結婚して彼を王配にする事が出来るのに。
もっと早く生まれたかった。
そうすれば、婚約者という中途半端な立場の彼に負担ばかりをかけずに、横に立って彼と支え合う事が出来るのに。
わかってる。こんな考えはタラレバであり、もしわたくしがジークフリート同い年だったとしたら、先王であるお父様が亡くなった時点で成人していた訳で······、そうだとすると本来臣下になるべく育てられて居た第五皇子のジークフリートと婚約・婚姻することは無かったはずだ。
お父様を早くに亡くし、幼く執務経験も無いわたくしだったからこそ、ジークフリートと婚約する事ができたのだ。
だけど、やはりわたくしは·····早く大人になりたい。
そう願わずには居られなかった。
「こ、これは······!?」
「私の祖母の国では国民食だという『納豆』と呼ばれている食べ物でございます」
一人寂しく食堂の広いテーブルに座ったわたくしの目の前に置かれたのは、納豆という食べ物。
······タベモノ? これが本当に食べ物なの!?
まるで腐ってるような臭いがするけど、本当に大丈夫!?
思わずそんな風に思ってしまうほど、その納豆は悪臭を放っていた。
見た目は茶色の豆。見た目からして美味しそうではない。でも、美しくなるため! お胸のため······っ!
そう決意してフォークで納豆を一粒、持ち上げると······。
!?!?!?
「糸っ!! 糸が出てきたわよ!? 臭いも凄いし、腐ってる······わけじゃないのよね?」
「大丈夫ですよ。腐ってる訳ではなく発酵です。これが納豆というものです」
マリアは納豆が入ってる皿を手に取ると長い棒を二本持ち納豆をかき混ぜた。
ひぃーーーー!!
ネチャネチャぐちゃぐちゃと嫌な音を出しながら、混ぜた事で臭いが更に酷くなる。脅えるわたくしに構うこと無く、マリアは納豆をしばらく混ぜた後、納豆を私の前に置いた。
「どうぞお召し上がりください」
······ごくり。
自分が唾を飲み込む音が、妙に大きく聞こえた。
たくさん混ぜられた納豆は、糸が更に増えて白い泡まで出てきて不気味さが増している。
おそるおそるフォークで納豆を掬い、口に近付ける。口に近付けるということは、鼻にも近くなるわけで······
ぐわぁぁぁっ!
心の中で正義の味方にやっつけられた悪役の断末魔のような声を、思わずあげた。
なんなのよ、コレは!? 罰ゲーム??
でも、これを食べなければ······っ!
お胸の為っ! しいてはジークフリートの為よ。頑張れ、アイリス!!
と自分を鼓舞し、意を決して納豆を口に入れようとした時、軽いノックがされ扉が開いた。
入ってきたのは、ジークフリート!? と、笑顔で扉を見たが現れたのは彼の側近であるエドワードだった。エドワードは礼をしたあと、わたくしに話しかけてくる。
「お食事中に失礼致します、殿下が会議の後······」
私に近付き報告しようとしたようだが、途中で不自然に固まる。そして、鼻を押さえて崩れ落ちた。
「なんですか! この兵士が訓練をした後のブーツみたいな悪臭は!!」
「納豆。という食べ物でございます」
「食べ物!? こんな臭いなのに食べれるのですか!?」
エドワードは驚愕の表情でマリアを見て、先程わたくしが考えたことと、同じような事を叫ぶように言った。
「慣れない方には臭いや見た目が苦手かもしれませんが、味は美味しいですし体にもとても良いんですよ」
「そ、そうなんですか?」
「私は毎朝食べているのですが、そんなに臭いですか?」
目を伏せるマリア。黒髪美人なマリアがそうすると儚げにみえた。
そんなマリア見たエドワードは、顔を赤らめる。がばっと勢いよく立ち上がったと思うと、宣言した。
「マリアさんの好物なら、美味しいに違いありません! ぜひ、私にも食べさせて下さい!!」
「あら。本当ですか? ぜひ、お召し上がりくださいませ」
どうやら恋する男の目、······いや、鼻? にはフィルターがかかっているようだ。
わたくしが、隣の席をすすめる。 「臣下の自分が、陛下と同じテーブルに付くなんて」と遠慮したが、無理矢理座らせた。
だって今の彼は、ただの臣下ではない。
罰ゲームを受ける仲間······じゃなかった。納豆という未知の物体と戦う同士よ!!
わたくしがそんな事を考えている間に、優秀な侍女マリアは持っていた納豆を手早く皿に移し用意をすると「どうぞ」と、笑顔で彼の前に納豆を置いた。
「ありがとう······ございます」
ごくり。エドワードの喉が大きく動いた。
うんうん。わかるよ、その気持ち!!
黙ってわたしくたちが見守る中、彼のフォークを持つ手が震えているように見えるのはきっと見間違えではないであろう。
納豆をフォークで掬い、ゆっくりと口へ······ぱくん。
イッタ─────!!
わたくしとマリアが見つめる中、もぐもぐ、ごくん。と、咀嚼し飲み込んだ。
「お、おいしい······ですぅ」
そう言い残し、テーブルに顔を伏せた。泣いてる気がするけど、わたくしの気のせいかしら?
その後、わたくしも再チャレンジしてみたがやはり無理だった。臭いも見た目も無理だが、エドワードの様子をみて余計怖くなってしまったのだった。
─────
───────······
「え!? 今日、マリアの家で朝食たべてきたの?」
納豆事件から暫く経ったある日······、ふたりの会話から、登城前にエドワードがマリアの家に寄り、朝食をご馳走になったと知ったわたくしは思わず声を上げた。更に驚くことに今日がはじめてな訳でなく、あれからほぼ毎日マリアと朝食をとっていると得意げに胸を張ったエドワード。
「その朝ごはんって······」
「はい。納豆ですよ」
エドワードではなく、マリアが笑顔で答えた。
「凄いね。あの臭いに慣れたんだ」
「············。ワタシハ殿下ノトコロニ戻リマス、失礼シマス」
わたくしの質問には答えず、エドワードは去っていった。
「ねぇマリア、随分エドワードと仲良くなったのね。意外だわ」
「あら、そうですか?」
「だって、エドワードには悪いけど彼ってマリアの好みのタイプじゃないでしょ?」
「さすがは姫様。私の事をよく分かってらっしゃいますね」
どこか黒い笑顔でマリアが微笑む。そして頬に手をあて色っぽく、ほぅ······と息を吐いた。
「仰るとおりエドワードさんに興味はありませんでした。ですが、苦手な納豆を私の為に食べる姿をみたら······。毎日涙目になりながらも『おいしいです』って言って頑張る姿をみると······ゾクゾクするんです」
頬を染め、付き合いの長い私もあまり見たことない満面の笑顔でマリアが言った。
頑張れ、エドワード。私が巨乳の秘訣をきいたばかりにこんな事なって、ごめん! でも······、と先程の得意げに胸を張ったエドワードが脳裏によぎる。
······うん。なんだか幸せそうだったし、まあいっか。むしろお礼を言ってもらうべきだわ。
そう思いながら、マリアが入れてくれた紅茶を飲んだ。
────今日もこの国は平和である。
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婚約者の出番なくなってしまった······。需要あれば、いつかちゃんと書きたいな。
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