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第6話 わけありアイドル計画と謎

初ライブは好評に終わり、スクールアイドル部はそれぞれの企画に向けて動く。そんな中、蕾実がゆかりにある疑惑が…

 六月も終わる頃の休日、さくら荘にてスクールアイドル部、ユニット名『桜乙女』の今後の活動について会議が開かれようとしている。その前にアイドル達は先日の初ステージのビデオを見ていた。

「これ部長が撮影したのか…いつの間に?」

「スクールアイドルの初ライブは是非に記録しておかないとな、今後の活動に役立てるためにも」

 部長の己太郎の撮影したライブは鮮明に写っていた。

「うああ…リリカよく見ると下手じゃん」

「私もプロと比べればまだまだです」

 リリカと美夢は恥ずかしそうに自分達の振り付けを見ていた。

「それにしてもゆかりの歌と踊り、プロも顔負けね…これまで鍛練を積んだアイドルそのものだわ」

「蕾実ちゃん、会った頃から思ってたけど、なかなかのドルオタだよね」

「そ、そんなこと…」

 歌恋にドルオタと言われて動揺する蕾実。

「ところで皆それぞれの企画はできたかな?」

 己太郎の号令でメンバーは各書類を出す。


大張ゆかりはライブステージの企画書

流リリカは衣装デザインをまとめた書類

緒方歌恋は作曲の楽譜

春日野蕾実は作詞ノート

樹咲美夢はグラビア企画書


「よし、では緒方と春日野は共同で曲作り、流は衣装のオーダーは樹咲を通じてくれ」

 皆の書類に目を通した己太郎は、各自に指示する。

「そしてゆかり、ライブは『コスモス』で開催するなら、一緒に交渉に行こう」

「はい、了解です」

 ゆかりは即座に返事する。


 美夢とリリカは衣装や企画について話し合っていた。

「リリカちゃん絵上手いね~とても可愛い衣装になってる」

「リリカはママから絵の才能を受け継いでるんだよ」

 リリカの母は同人誌で漫画を描いており、即売会では名のある作家である。

「衣装のオーダーはみゆみゆを通すというんだけど?」

「私の所属事務所がオリジナル衣装をオーダーメイドしてくれる店を紹介してくれるのよ、しかも直属の」

 樹咲美夢が所属する事務所・クリエイトフォースはモデル中心のプロダクションで、モデル用の衣装を取引する製作所も抱えている。

「でも大丈夫?予算の方は…」

「系列店で結構安くて出来の良い衣装を製作してるところ紹介してくれるって、部費が足りなきゃ私がモデル時代に稼いでた貯金であてがうわよ」

「え~そんな悪いよ、リリカ達もカンパするからさあ」

 アイドル部では予算面でも検討中だ。

「ところでリリカちゃんの方で、グラビアのカメラマンその他スタッフの手配は?」

「パパの知り合いでコスプレグラビアのサークルに頼んでおくわ」

 リリカの父はアメリカ人と日本人のハーフであり、日本の漫画やアニメの大ファンでコスプレイヤーとして活躍していた。コミケことコミックマーケットでリリカの母と知り合って結婚してリリカが産まれた。そして両親のDNAを娘のリリカが受け継いでいた。

「リリカはアイドルアニメのキャラのコスプレもやっていて、よくイベントとかでも撮影されてるんだ~パパの仲間のサークルで写真集も出してるの」

「それはありがたい、それでこの企画書ではわが桜乙女の写真集を今年の夏コミに出すのだけれど」

「どれどれ…え?リリカ達こういうのやるの…」

 話はトントン拍子に進んでいるようだ。


 一方、己太郎は歌恋、蕾実、ゆかりと共にライブハウス・コスモスに来ていた。

「ここがライブハウス・コスモスか~ここで歌恋さんやお姉さんがライブしているんだね」

「主にライブをするのはお姉ちゃんのバンドだけれどね、私はたまに呼ばれるだけだけど」

「おや、オーナーが来たぞ」

 ステージの交渉に来た己太郎達の前に現れたのは、気立ての良さそうな年を召した白髪の入った女性だ。

「初めまして、コスモスのオーナーの(さくら)()(あき)()です」

「こちらこそ初めまして、有分高校スクールアイドル部の部長を務めております、大張己太郎と申します」

「そのアイドル部のユニット名が桜乙女というのね、私とは桜繋がりで」

「うちの祖母の名前が桜子で、自分が管理するアパート名も祖母の名前を取った『さくら荘』といいます。ちなみに桜乙女も『さくら荘に集う乙女』という意味もあるのです!」

「このコスモスも私の名前からでね、秋子の秋、桜井の桜で秋桜=コスモスで、宇宙のコスモからもかけてるのよ」

 己太郎との会話の後、桜井オーナーは歌恋に声をかけた。

「歌恋ちゃん、最近部活に頑張ってるそうだけど、まさか部活でアイドルしてるんだってね」

「はい、バンドではなくアイドルグループですけど、ステージに立たせてもらえますか?」

「ライブならなんでもこいよ!あら、そちらにいるのは…」

 桜井オーナーは蕾実に気付いた。

「春日野蕾実です、このたびスクールアイドルをやることになりました」

「やっぱりあの天才子役の春日野蕾実ちゃん!毎週『オトロク』見ていたわよ」

 桜井オーナーもまた、オトロクこと『大人の事情はろくでなし』というテレビドラマのファンであった。

「ありがとうございます」

「まさか歌恋ちゃんと同じ高校に通っていたとはね」

「今は前の事務所を辞めて、新たにスクールアイドルとして活動することになりました」

「ではスタジオまで案内するわね」


 スタジオに着いたアイドル部一行は打ち合わせを始める。

「あの…ゆかりちゃん、これ私が作った歌なんだけど」

 歌恋はスマホに収録してある自作の歌をゆかりに聴かせる。歌っているのはもちろん歌恋本人である。

「良い曲ですね、曲のタイトルは?」

「まあ…仮に『コスモスのテーマ』とつけたかな?」

 この曲はその名の通りライブハウス・コスモスのテーマとして作った曲で、バンドやってる姉・歌音の指導もあって仕上がった曲でもある。

「何回かライブで歌ったけど、反応は普通だったかな?」

「ぜひ歌ってみて下さい」

「歌ってみてだってさ、お姉ちゃん!」

 歌恋が後ろで楽器の調子を見ているバンドに呼びかけ、メンバーの一人が振り向いた。そのメンバーこそ歌恋の姉・緒方歌音であった。

「よっしゃ!演奏はこの“Kanon move”<カノン・ムーブ>に任せて」

 彼女が率いるバンド“Kanon move”<カノン・ムーブ>はコスモス専属のバンドで、ライブを開くかたわらスタッフも兼ねている。

「では緒方歌恋が歌います『コスモスのテーマ』どうぞ」


「歌恋さん、とても良かったです!」

「歌恋のソロ歌唱、素晴らしいわ」

 歌い終えた歌恋にゆかりと蕾実は称賛する。

「じゃあ次は桜乙女のセンター・ゆかりちゃん歌ってみて」

「え?私がですか」

「歌は同じく『コスモスのテーマ』で」

 歌音からゆかりに歌のリクエストをされた。

「ゆかり、桜乙女のセンターとして歌ってみろ!」

「それでは大張ゆかり歌います、バンドの皆さんよろしく」

 ゆかりは『コスモスのテーマ』を歌い出す。それを部長とアイドル部メンバー、スタッフらが聴き入る。

「凄い…プロ顔負けだ」

「この圧倒的なオーラは何だ」

「とてもキラキラ輝いてる」

「素敵よ!さすがグループのセンターやってるだけあるわ」

 すっかりゆかりの歌唱する姿に、周囲の人々は魅了されていった。

「よくやったゆかり」

 歌い終えたゆかりに己太郎がねぎらう。

「後はこの歌をよりアイドルソングらしく、いろいろとアレンジしよう。そしてタイトルも正式なのに決めねば…」

「曲名は“Cosmos Wave”<コスモス・ウェーブ>が良いかと思います」

 蕾実が早速曲名を思いついた。

「ゆかりの歌がまるで宇宙の波に乗るような表現でしたので、コスモスは宇宙の他に調和や秩序の意味でもありますし」

「なるほど、良いネーミングだ!よし蕾実に歌恋、この歌詞と曲のアレンジは任せたぞ!」

 己太郎はこの時点でアイドル部メンバーを下の名前で呼ぶようになった。


「歌恋、どうしたの?」

 呆然とする歌恋に姉の歌音が声をかける。

「ゆかりちゃん…私が作った曲をすっかり自分の歌にしている」

「そうね、なんだかプロの風格を醸し出していたわ」

 時折プロシンガーもライブをするのにコスモスへ訪れるため、歌音もバックバンドとしてプロの歌唱を何度か目の辺りにしている。なのでゆかりのプロの風格を感じ取れたのだ。

「ならそれより良い曲作りましょう、私も良い詩を書くから」

 蕾実が困惑する歌恋に呼びかける。

「そ、そうね!私も桜乙女のセンターを目指すからには、より良い曲を作らなきゃ」

「それは私も同じよ歌恋、私自身の歌も書いてみせるわ」

 そう言う蕾実も、ゆかりに関しては他に思うところがあった。


 明くる日のさくら荘、リリカと美夢が打ち合わせしているところに、蕾実はリリカにあることを尋ねる。

「リリカ、生まれ変わりって信じる?」

「生まれ変わり?いわゆる転生ものね」

「転生?」

「現世で死んだ主人公が異世界に転生して、魔法などのスキルで無双していくラノベやそれを原作としたアニメで良くあることね。しかも転生前の記憶を受け継いだまま…」

「そう言うのって実際ある?」

「えっつぼみんマジでそう考えてんの?」

「まあ蕾実さんは出生からして…」

 美夢とリリカも蕾実が俳優研究施設で人造的に生まれたのを知らされていた。

「でも科学的に生み出されたつぼみんと違って、転生は非科学的なものだしね」

「転生…現世なら数十年後でも別世界なものだし。ところで蕾実さんはなぜそう思ったの?生まれ変わりって…」

「ええちょっと思い当たる節が」

 蕾実はゆかりのいる部屋へ向かった。


 さくら荘でのゆかりの部屋で蕾実はゆかりと二人きりになった。

「ゆかり、聞きたいことがあるんだけど…」

「どうしました蕾実さん?」

「あなた…もしかして本当にあの姫乃友梨香の生まれ変わり?」

「えっどうして…」

「私、かつてミタニプロにいた頃、先輩達の活躍を録画したビデオや動画サイトで見て研究していたの、その中でも一番気になってみていたのが姫乃友梨香さんの歌っている姿なの…そう、私は姫乃友梨香のファンだったの!亡くなったのは私が生まれるずっと前だけれど、いろいろ調べたり見ていくうちにファンになったのよ」

「蕾実さんが私のファン…はっ!」

「やはりそうだったのね」

 ゆかりの発言から蕾実の予想は確信に近づいた。

「出来れば私に話してくれない?私も決して普通ではない生まれ方したんだし」

「そう、私は…姫乃友梨香の生まれ変わり、つまり転生者です」

 遂にゆかりは自らの正体を告白した。

「私は自分の夢をステージいっぱい描きたくて、周囲の反対を押し切って芸能界に足を踏み入れました」

「その頃は芸能界入りしようとすると、大抵は親とかに反対されるわね」

「でも、いざデビューしてみれば、事務所から言われたことしかできなかった。髪の長さ、普段の服装、休日の過ごし方、箸の上げ下ろしまで会議で決められ、その通りにしかできなかった。私が描きたいものとは、まるで違っていたの…」

「あの頃のミタニプロってガチガチにタレントを管理していたのね」

「歌では曲そのものはどれも特に不満なかったけど、シングルと同じくらいの枚数のアルバムも出すことになって、歌わされてる感があった…」

「いわゆる質より量の量産型ね」

「歌以外でも私の本意じゃない、自分から仕事を選べない立場で、とても息苦しかった」

「所詮は若輩者なのよね、私たちくらいの年齢だと」

「三谷社長は優しく接してくれたけど、その分こっちがちゃんとしなきゃと思って、なかなか逆らえなかった」

「飴と鞭を使い分けるのが上手かったのね…私の時もそういう感じだったし」

「そうして鬱になって、気がつけば私は事務所のあるビルから身を投げていた…」

 ゆかりこと姫乃友梨香は自らの最後を述べた。

「そうだったの…残されたファンはもちろん、家族もさぞ悲しかったでしょうね」

 蕾実のその発言にゆかりは大粒の涙を流した。

「ご、ごめんなさい、ドラマの中でしか家族を知らない私が家族を口にするべきではなかったわ」

 急いで蕾実はゆかりに謝った。

「ううん、いいの」

「それにしても…どうやって転生したの?」

「それには…長い話になるわ」

 ゆかりは前世の姫乃友梨香の頃について語り始める。

「あんな息詰まる世界に、実は一度だけ逃げ出したことがあったの」

「失踪?それも事務所が隠蔽していた…」

 公には知られていないが、ここで過去に姫乃友梨香は失踪していたという事実が明らかにされる。

「姫乃友梨香の謎の失踪…そこに大張ゆかりに転生した経緯が判明するのかしら」


つづく

大張ゆかりは伝説のアイドル・姫乃友梨香の転生した姿だった。そこで友梨香の隠された出来事が語られる…次回「前世編」

※短編「想い出のカケラ~Fragment~ 」を一部編集した物語です

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