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第2話 わけあり天才子役

アイドル部を設立するために元子役・春日野蕾実をスカウトしようと、歌恋は己太郎の妹・ゆかりと春日野邸へ。そこで蕾実の秘密を知ることに…!?

第2話 わけあり天才子役


 翌日の放課後、歌恋は蕾実に話しかける。

「あの…春日野さん」

「緒方さん?言っとくけど私は…」

「実は会って欲しい子がいるんです、一年生の女の子で」

「一年生?私のファンかしら」

「そういうところです」

 蕾実は歌恋の誘いに応じることにした。


 放課後、近所の公園で蕾実は歌恋に連れられ、大張ゆかりと対面する。

「はじめまして春日野蕾実さん、一年の大張ゆかりです」

「大張って…あの変な三年生の?」

「大張己太郎は私の兄です、この前は兄が大変失礼しました」

 ゆかりは頭を下げる。

「謝りに来たの?それとも今度は妹を使って勧誘とか…」

「い、いえ、私も春日野さんに入部して欲しいんですけど、春日野さんにも事情があると思うので、まずそれを聞きたいんです…それでも嫌なら諦めますが」

 ゆかりの申し訳なさそうな態度を見て、蕾実は語り出す。

「…嫌というより、不安なのよ」

「不安?」

「だって学校でアイドル活動だなんて突拍子もないこと、誰が思いついたの?」

 その問いに歌恋が応える。

「それは…彼女です」

 歌恋はスクールアイドル部を思いついたのはゆかりだと打ち明ける。

「この子が…ねえあなたたち、家で話さない?」

「えっいいんですか?」

「まあ緒方さんは今年のクラスメイトで初めて話しかけてくれたし、大張さんの妹さんは…」

 蕾実はゆかりの顔を見ながら呟く。

「あなた…どこかで見たことあるのよね」

「私が?」

「取りあえず私の家に行きましょう」

 三人は春日野宅へ向かうこととなった。


 春日野蕾実に自宅まで連れて来られた歌恋とゆかりは、洋風の屋敷のような春日野宅に目を奪われる。

「やはり人気者となると、自宅も大きくてきれいな家ですね」

「人気者たって…子役時代とオトロクでの人気よ」

 蕾実は歌恋に対して悲観的に受け応える。オトロクこと「大人の事情はろくでなし」のドラマシリーズが終了してからは迷走中なのである。

「お帰りなさい」

「ただいまお母さん」

 部屋の奥から出迎えてきた初老の女性は蕾実の母親らしい。

「あら、お友達連れてくるなんて珍しいわね」

「喫茶室まで行くわ」

 蕾実は二人を喫茶室まで案内する。


「ふああ…何だかホントに喫茶店みたい」

 歌恋の言うように、春日野亭の喫茶室は席が複数あり大きなカウンターもある。まるで喫茶店そのものに見える。

「以前は来客も多かったから、席がいくつもあるのよ」

 そう言いながら蕾実はカウンター席に座る。

「あなたたちもここに来て」

「は、はい」

 歌恋とゆかりも席に座る。

「結構広いですね、私も実家が喫茶店だけど、うちより広そう」

 歌恋は春日野宅の喫茶室に驚きを隠せない。

「どうぞごゆっくり」

 蕾実の母が三人に紅茶を持ってきた。

「この紅茶、良い香りですね」

「緒方さんの家では喫茶店を経営しているの?」

「はい、父は芸能誌の元記者、母は元アイドルでしたが、あるきっかけで辞めてしまって、結婚してからは夫婦で喫茶店を経営するようになったんです」

「そうですか…」

 歌恋はふと、ゆかりにも話を振ってみる。


「ところであの…ゆかりちゃん?」

「はい、なんでしょうか?」

「ご両親て…どんな方?」

「私の父は洋画家ですが、地主で不動産もやっていて、大きめのアパートの管理人で、それが主な収入になってます。私が住んでる自宅は、兄が管理人をしているアパートです」

「高校三年生でアパートの管理人…どっかの漫画やゲームにありそうな設定」

 歌恋は不思議そうに感心する。そして次は蕾実に尋ねる。

「春日野さんはお母さんと二人暮らし?あの…」

 少し言葉を詰まらせる歌恋だが、その質問に蕾実が答える。

「私の…本当の両親は」

「本当…の?」

 蕾実の口から語るニュアンスの違いに気付く歌恋。

「いえ、それより大張さん、私をアイドル部に勧誘しようとしたのはお兄さんではなく、あなただそうだけど?」

 ゆかりに問う蕾実。

「は、はい…」

「それはなぜかしら?」

「私も蕾実さんの出演番組よく見てるんですが、成長して美人になったとは思うんですけど、最近の蕾実さんは何だかいろいろ悩んでるように見えて、このままでは潰れてしまうんじゃないかと…」

「何というファン心理!」

 ゆかりの分析に驚く歌恋。

「蕾実さん何でも抱え込んでしまう性格だし、その辺余り器用じゃないと…」

「ちょっと待ちなさい」

 すかさず蕾実がゆかりの口を止めた。

「あのね…ファンなのはいいけど、会ったことない人に性格まで理解してるようなこと言われるのはいい気がしないんだけど」

「でも今会ってますよね?」

「緒方さん、今日会ったばかりよ」

 歌恋の突っ込みに受け応える蕾実に、ゆかりが更に語る。

「すみません、それで…よろしければアイドル部に入って蕾実さんのやりたいことやりませんか?アイドル部は歌や踊りだけでなく、演劇も取り入れるつもりなんです!」

「私の…やりたいこと?」

 ゆかりの懇願にふと考え込む蕾実。

「私のやりたいことって…あるのかしら?」

「そういえば春日野さんが芸能界入りすることになったのは?子役からだと親に勧められてとか?」

 歌恋の問いに蕾実が答える。

「私は…なるべくしてなろうとしていたのよ」

「え!?」

 蕾実はそれまでの自分の生い立ちを語り出す。


「私は…俳優研究施設で生まれたのよ」

「施設生まれ?それは一体…」

「その研究所はアメリカの某所にあって、遺伝子操作による人工授精で俳優になる人間を生み出すプロジェクトがあったのよ。そこから俳優候補の子供達は世界中の人種別に作られ、世界各国の芸能事務所に送り込まれたの」

「何だって!?」

 蕾実が人工的に作られた人間だと知って驚く二人。

「そして日本の俳優として送り込まれたのがは私なの、ちなみに生まれたのも人間の体内ではなく、人造カプセルの中からなの」

「じゃああのお母さんは…」

「元研究員で私を育てる担当だったの、今は普通に母親しているけれど」

 その母親とは血縁関係こそないが、育てていくうちに母親としての情が芽生え、実の親子同然の仲になったらしい。

「こんなSFみたいなこと本当にあったなんて、にわかに信じられないけど、リリカちゃんが聞いたら喜ぶかも知れない」

 歌恋はアニメ好きの後輩でアイドル部に入ることになった、流リリカのことを思い出していた。

「まあ信じられなくても当然でしょうね」

「日本の芸能界に派遣されたのが蕾実さんなんですね、それからどうなったのですか?」

 今度はゆかりが蕾実に問う。

「私が送り込まれたのは大手の児童劇団で、数年後にミタニプロに引き抜かれたのよ」

「ミタニプロ…」

 蕾実の話にゆかりの顔色が変わった。それについて歌恋が語る

「ミタニプロていうと、あの(まつ)()()()()さんがいたところね。稼ぎ頭である彼女が独立してからいろいろ大変だったみたいだけど…」

 松樹留美子とはおよそ30年前よりトップアイドルとして人気を博した大スターである。

「ミタニプロはその稼ぎ頭が独立したり、若くして死を遂げたアイドルがいたりで、そのダメージで窮地に陥っていたのよ」

「死を遂げたアイドル…」

 蕾実の説明に再びゆかりの表情が変わった。

「そこで起死回生と言うことで、児童劇団から子役をスカウトして育てていこうというプロジェクトを立ち上げたのよ。その最初のスターが(あが)(つま)()()()さんなの」

 蕾実より先んじて子役からスターになった我妻真奈美は、テレビドラマやCM等で人気を博し、ミタニプロは勢いを盛り返していった。

「我妻さんに次いで二人目となる私は、俳優研究所お墨付きということで期待されてたの」

 子役スタートとして先陣を切った我妻真奈美だが、主演ドラマが今で言うコンプライアンス的に物議をかもし、映画にも出演したが出る度に不吉なトラブルに見舞われるなど、どこか歪みを生じて伸び悩んでいった。先人のしくじりを反省材料とし、春日野蕾実へのプロデュースが行われた。

「ミタニプロに入ってからはドラマや映画やCMはもちろん、歌や声優などいろんなことやらされたわ。そして決定打となる仕事が(はす)()()()()先生のドラマなの」

 数多くの名作ドラマを生み出したベテラン脚本家・蓮田志賀子の集大成となる長寿ホームドラマ「大人の事情はろくでなし」で途中から主人公の老夫婦の孫娘役で小学生の頃よりレギュラーとなり、蕾実の将来は安泰になったかと思われたが…

「でも中学に上がってから、ただ与えられた仕事をこなすだけで、そうしたら他の仕事がぱっとしなくなったの…そして去年、蓮田先生は亡くなられたわ」

 名脚本家のドラマ人気にすがるままで、更なる高みを目指さなかったことが原因で、蕾実が低迷期に入ってきたのだ。

「上からは『蕾実はただ与えられた仕事をやれば良いから任せて』と言い聞かされたから、私からの意見も言わせて貰えなかった…そして今ではもう、何をやればいいのか分からなくなってきたのよ」

 そうしているうちに所属していたミタニプロも解散し、蕾実はフリーの身となったが今後どうしたら良いか迷っていた。そんな蕾実の話を聞いたゆかりは再び誘う。

「そうだったの…ならそれこそ私たちと…」

「今度は部活でアイドルをやれと?また人に与えられたことをやりこなすだけなの?」

「え…」

 蕾実の反論にゆかりの言葉が詰まる。そこに歌恋が切り出す。

「いろいろ複雑な心境なんですね、でもこうして出会えたのも何かの縁ですし、どうかしら?私の店に来てお話ししませんか?」

「緒方さんの店?」

「うちの実家は喫茶店をやっているんです、お母さんの入れるコーヒーとても美味しいんですよ」

「行ってみてはいかがですか?ここでお友達が出来たことですし」

 そう言って蕾実の母が諭す。

「友達か…では行ってみます」

「じゃあ明日の放課後、一緒に直行よ」

 歌恋の誘いで彼女の実家の喫茶店に来ることになった蕾実。アイドル部勧誘への第2ラウンドが始まろうとしていた。


つづく

蕾実を実家の喫茶店へ招待することになった歌恋。スカウト第2ラウンドで、蕾実の出した答えは…

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