第9話 わけありバースデイパーティー
コミケも無事に終わり、桜乙女はメンバー同士の交流を深めてゆく。ゆかりの誕生バーティーを歌恋の実家の喫茶店で行うことになったが…
緒方歌恋の実家である喫茶店ビリーヴ。母親譲りのルックスに恵まれた歌恋は当店の看板娘でもある。夏休みの最中、歌恋はウエイトレスとして今日も働いている。
「アイスコーヒーお待たせ致しました」
「ありがとう歌恋ちゃん、今日も可愛いね」
「この前の桜乙女のステージ見たよ」
「ようやく歌恋ちゃんもアイドルになれたんだよね」
「センター取れるようにがんばって」
「ありがとうございます!」
お客さん達からのエールを受けて感謝の言葉を伝える歌恋。
「私もスクールアイドルという形でアイドルデビューしたけど、プロだとどんな感じなのかな…」
そう考える歌恋だが、彼女の両親の心意は…
「歌恋もスクールアイドルになってから生き生きしてるわね、ネットでも注目されてるし」
「ああ、だが心配なのがプロの世界から勧誘されることだ…」
歌恋の様子を母・沙織と父・智紀が心配そうに見ていた。
「プロの芸能界に入れば、自分の意志よりも事務所や業界の思考が優先される…結局は都合良く使い勝手の良いタレントをな」
「私は使い勝手が良くなかったのね…」
沙織は若い頃にアイドルと活躍していた。憧れの姫乃友梨香を目標にしており、期待のアイドルとして注目されていたが、友梨香の死へのショックと所属事務所の方針と合わずに芸能界を引退。雑誌のインタビューで知り合ってから良き相談相手となった智紀と結婚し、それから今に至る。
「姫乃友梨香の同期だったある男性歌手は、父親が彼の芸能界入りを反対し『芸能界ってのは猿まわしだ、お前は猿になるのか?』と言った。その父親もかつて役者を目指していたが、挫折して息子には同じ目に合わせたくないと思ったが、自分の意志を貫いて動くと表明して説得。その後は息長く芸能界で活躍しているが、彼のように自らの意志で動いている人は、ほんの一握りだからな…」
そう語らう智紀に、歌恋が声をかける。
「お父さん、お母さん、明日はゆかりちゃんお誕生パーティーだからよろしくね」
「わかってるって、お母さん特製のケーキ作るからね」
「もちろん私も手伝うよ」
「お父さんは…特にやることないか」
「お姉ちゃんも来てくれるしね」
親子間で明日のパーティーの話に盛り上がった。その後、両親は有る事を思い出して語る。
「そういやゆかりちゃんの誕生日って、姫乃友梨香の誕生日と同じだったな」
「ゆかりちゃんは容姿も友梨香ちゃんに似てるし、運命の巡り合わせ?もしかして…」
ゆかりの誕生日当日、パーティーは喫茶ビリーヴで開催。沙織お手製のケーキを囲んでゆかりを祝うアイドル部員達。
「大張ゆかりちゃん、誕生日おめでとう!」
「今日でゆかりも十六歳か」
「みんなありがとう」
笑顔で答えるゆかり。
(二度目の十六歳か~前世より満喫できる)
ゆかりは心の中で、十六歳でデビューした頃と今を比べながら、物思いにふける。
「それではプレゼントタイムだ」
己太郎が合図をする。
「ではまずリリカから、これ画材セット。ママの原稿を手伝ってくれたお礼も兼ねてね」 ゆかりは前世で絵を描く才能を持ち、現世でも受け継がれることに。コミケ発刊の原稿に追われるリリカの母・リューコのアシスタントをするほどの能力をゆかりは持っていた。
「ありがとうリリカちゃん、素敵な衣装を描くよ」
衣装デザインを担当するゆかりも、創作意欲に溢れてきた。続いては美夢からのプレゼントである。
「次は私から」
リリカの次は美夢からのプレゼント。ドライヤーやヘアアイロンなど、ヘアケアセットである。
「ゆかりちゃんて髪の毛いじる癖あるし、どんなヘアスタイルにするのかなと思って…」
「ありがとう、ちょうどヘアスタイル変えようかと思っていたところなの」
続いてはパーティー会場となった喫茶ビリーヴの看板娘である歌恋からのプレゼント。
「これペアのティーカップセットよ」
「歌恋さんありがとう、ペアだと相手は…」
「お兄さんである部長さんじゃないの?」
後ろから声出したのは歌恋の姉・歌音である。
「お姉ちゃん、帰ってきてたの?」
「妹の友達でスクールアイドルの誕生会なら来なきゃ行けないでしょ、うちのコスモスでもお馴染みだし~プレゼントは…コスモスからのペアルックTシャツよ」
歌音からはライブハウス・コスモスのロゴの入ったTシャツ二枚セットだ。
「あざとい宣伝してくるね~カレンちゃん姉は」
リリカがそう呟くと、リリカの兄・雄馬が入店してきた。
「ゆかりちゃん誕生日おめでとう、妹がいつもお世話になってます」
「お兄、どんなプレゼント?」
雄馬からのプレゼントはペアのブレスレットであった。
「お兄はゆかりんのペアは誰が良いと思ってる?」
「それはリリカと同じこと考えてる」
「もしかして…」
兄妹は口を揃えて言う。
「蕾実ちゃん」
「つぼみん」
それを聞いた蕾実は…
「えっ私が?」
「つぼみんをスクールアイドルに引き入れたのはゆかりんだからね、あれから内緒話するくらい親密になってるし」
「さすが我が妹、考えることは同じ!俺もリリカとはベアカップやペアルックもらってからズッと仲良し!」
「それ以前は知らないけどね」
「おいおい」
「そういえばリリカちゃんの誕生日は海外に行ってたんだよね?」
「パパの実家がフランスにあるの、そこで家族と一緒に旅行してバースデイパーティーしてたのよ」
リリカの誕生日はフランスの父の実家で過ごしていたのだ。
そして蕾実からのプレゼントはフラワーアレンジメントである。
「私からはゆかりの誕生花のアレンジメントよ」
「この花は…バラかな?」
「クルクマと言う名の花よ、花言葉は『あなたの姿に酔いしれる』よ」
「えっそんな…」
恥ずかしそうな表情を見せるゆかり。
「確かに話がスクール・アイドルの申し子に相応しい花言葉だな」
「もう!お兄ちゃんたら大げさよ」
周囲から笑い声が広まる。
「いいなあ、部長とゆかりちゃん、歌恋さんもリリカちゃんもきょうだい仲良くて…」
端から兄妹や姉妹のやり取りを見た美夢は何やら寂しそうな様子だ。
「さて、いよいよこの俺、大張己太郎から妹へのプレゼントは…」
己太郎は扉の方へ手を向ける。
「ゆかり、誕生日おめでとう!」
現れたのは己太郎とゆかりの両親、一と美紗であった。
「お父さん!お母さん!」
「ゆかりの歌ってる姿、いつも観てるわよ」
「仕事に忙しくて、ゆかりのことは己太郎に任せっきりだったからな」
「父さん母さん、ゆかりが生まれたときから俺がゆかりの夢を叶えようと決めたんだ」
家族と揃ったことを喜ぶゆかり。
「これはお父さんからのプレゼントだ」
「わあ~これ私?素敵!」
父のプレゼントはゆかりの歌う姿の油彩画であった。
父・大張一は『さくら不動産』の社長で、不動産業を設立した祖父や父の後を継いだ。元々は美大生であり、今も油彩を趣味としている。
「次は私から、ゆかりの新衣装よ」
「かわいい~お母さんありがとう!」
母からはアイドルとしてのステージ衣装で、母自身のデザインによるものだ。母・大張美紗は世界中を飛び回るファッションデザイナーである。不動産社長と世界的デザイナーの両親とは会えない日が多いが、家族仲はすこぶる良好だ。
「家族仲良くていいなあ…私の家族もあんな風に…」
大張一家の仲睦まじさを見て、美夢は物思いにふける。美夢は現在、ある事情で家族と離れて暮らし、モデル事務所の社長のお世話になっていた。
「みんなありがとう、こんなに楽しい誕生会は初めてです」
歓喜のあまり涙ぐむゆかり。その時であった…
「あの、こんにちは」
入ってきたのは五十くらいの壮年女性だった。
「あーユマおばさんだ」
女性の声に反応したリリカだが、どうやら親戚のようだ。
「ユマ…」
ゆかりがその名を聞いたとき、はっと思った。そしてユマという女性の方に目を向けた。
「ゆま…お姉ちゃん?」
それに気付いた女性も、ゆかりの顔を見て驚く。
「ま…マリちゃん?」
つづく
ゆかりが前世の姉と再会!?残された家族は今…




