第7話 わけありグラビア活動
スクールアイドルとしての活動にグラビア撮影が持ち上がる、しかも水着グラビアもあり。慣れてるゆかり、美夢、リリカに対して、歌恋と蕾実は初めてで緊張する。そしてイベントでは初のステージライブも待っていた。
有分高校スクールアイドル部のユニット・桜乙女は歌のライブの他にも活動の場を広げようとしている。その一つがグラビア活動である。同人誌即売会であるコミックマーケットでグラビア写真集やオリジナルCDを頒布する以外にも、狙っている物販系イベントがあった。
「リリカたち桜乙女はアイアイプロジェクトに出店するぞ!」
「何それ?」
リリカの突然の宣言に呆然とするメンバー。それについて美夢が説明する。
「アイアイプロジェクトというのはね、私が所属するクリエイトフォースが企画して立ち上げたインディーズアイドルのイベントを主催する団体及びイベント名なの。インディーズアイドルやコスプレイヤーの物販イベントを主催し、写真集やCDやグッズの物販の他にもアイドルのライブステージも行われるという、私たち桜乙女にとってはうってつけのイベントよ!」
「それで今、みゆみゆが事務所に交渉中なのよ」
「物販の他にステージでライブできるんだ、物販はコミケとそのプロジェクトの分まで作らないとね」
「それだけじゃないのよ、アイアイプロ限定の写真集も出すのよ」
「写真集?」
写真集と聞いて質問する歌恋と蕾実。
「それならコミケにも出すんじゃなかったっけ?」
「コミケとは別に、そちら限定の写真集というと…」
リリカと美夢はメンバーへの説明を続ける。
「コミケはCDの特典で出す分、主に私服や制服そしてステージ衣装に定めておく。アイアイプロ限定写真集は、いろんなバリエーションや枚数もあって、何と水着グラビアもある!」
「み、水着!?」
「コミケだと未成年グラビアは色々条件厳しそうだが、アイアイプロは特に逸脱した表現がなければ、未成年の露出で水着までならオッケー!全てはアイアイプロの管理下で責任を持つというの」
「アイドルと言えばグラビアか…覚悟はしていたけどね」
グラビアと聞いて最初は驚くも、とうとう来たかと受け入れる歌恋。
「私もお兄ちゃんからそれとなく聞いていたから…」
そう呟くゆかりも、前世の姫乃友梨香の頃はグラビアに全力投球していたのを思い出していた。
「水着とか…そんな、私は…」
まさかスクールアイドルで水着グラビアやるとは思っていなかった、元子役の蕾実。
「はは~ん、さてはつぼみん水着NGなの?」
「えっそれは…」
「まさか蕾実さん、プロポーションに自信ないとか?」
多少ニヤけつつ蕾実に突っ込んでくる美夢。
「べ、別に良いわよ、水着くらい。芸能界いたときもいろいろ無茶ぶりされてきたし、せっかく新しいことやるなら水着グラビアだってやってみせるわ!」
「よし、そうこなくっちゃ!」
水着を含むグラビアに挑戦する決意をした蕾実。いよいよコミケとアイアイプロの写真集の撮影にクランクインするところである。
いよいよグラビア撮影の日。撮影場所はクリエイトフォースが直営するスタジオ。カメラマンはリリカの父の友人で、コスプレイヤーであるリリカの写真を多く撮影してきた。リリカの父もスタッフとして参加している。
「ほう、なかなか本式の撮影ですね」
アイドル部の部長・大張己太郎がスタジオ内でのあいさつをした。
「どうも、カメラマンの野村でチーフを担当してます」
「同じく伊藤です」
「木村です、よろしく」
「リリカの父のリョウマです」
スタッフがそれぞれあいさつをした。金髪ハーフの男性がリリカの父・リョウマである。リョウマはフランス人の父と日本人の母との間に生まれ、母の母国の文化を知ろうと日本の漫画やアニメに大いにハマって、自らコスプレするほどにアニメ好きとなった。コスプレイヤーとしてコミケで参加した際に、“リューコ”というペンネームで同人活動していたリリカの母と出会い意気投合し、やがて恋愛関係となり結婚。そこで生まれたのがリリカだ。両親の影響で古今東西の漫画やアニメをこよなく愛するリリカは、好きなアニメのコスプレにハマり、コスプレイヤー・リリカとして人気を博すようになった。ちなみに「流リリカ」は普段の通名であり、本名は流里梨香 。一種の読み間違いから流リリカと名乗るようになり、コスプレイヤーとしてはリリカで名が通ったいる。
「お待たせしましたー」
張り切ってあいさつをするゆかりが先頭で登場した。魅惑的なビキニ姿で、豊満な胸を揺らしていた。
「ほほう、大張くんの妹さんはなかなかナイスバディだよねえ」
「ええまあ」
チーフカメラマンの野村の褒め言葉に、多少なりとも照れる己太郎。
「まさか…用意された水着がビキニだけだなんて」
「アイドルたる者覚悟していたけど、やっぱ恥ずかしい」
初水着に恥じらう蕾実と歌恋が続いて出てきた。
「リリカ達もお待たせ-」
「この手の水着撮影なんて一年ぶりかしら?」
リリカと美夢は慣れているのか堂々としている。
「ゆかりちゃん、私や蕾実ちゃんと同じく初めてのはずなのに堂々としてるね」
「そんなことないよ~歌恋さん」
ゆかりの前世がプロのアイドル・姫乃友梨香であることから、あの当時はもちろん水着グラビアも必須項目であった。今世も前世も巨乳であったことでビキニでの撮影が主流だった。
(あの頃は恥ずかしくて大変だったけど、とにかく全身全霊でグラビア撮影の仕事してたな~雑誌には勝手にビキニ党だなんて、適当かつデタラメ書かれて困ったけど…)
ゆかりは前世での撮影のことを思い出していたが、あの当時はカメラマンを始めとするスタッフも多めでプレッシャーも強かった。だが今世での撮影となると…
「おおっいいねー」
「次はこんなポーズして」
「初めてなのにプロ顔負けだよね」
プロの世界よりは規模は小さめだが、その分プレッシャーも少なくのびのびと撮影に応じるゆかりの姿であった。
「ゆかり…あの頃の姿より天真爛漫な感じ」
撮影中に横目でゆかりに見とれる蕾実。
「いいよ蕾実ちゃん、まるで恋する乙女が恥じらうような表情だ」
「え…?」
どうやら蕾実の姿は違った意味で解釈されたそうだ。
「いやー蕾実ちゃんのプロポーションはスレンダーで良いね」
「それ…褒めてるの?」
蕾実は自分の胸が他の四人より小さめなのを気にしていた。彼女らの方が均整の取れたプロポーションをしていたからだ。
「子役時代から幼児体型のままなんじゃないかと…」
「おっその困ったような表情良いよ」
カメラマンの解釈違いなのかそうでないのか、蕾実の撮影も順調に進む。
「ところで大張君」
「何ですか野村さん?」
野村チーフが己太郎にあることを尋ねた。
「この手の水着撮影、学校としては大丈夫なのかね?」
「学校からはスクールアイドル部の設立許可の条件として、校内はともかく外部では学校名は伏せるようにと言われてますし」
「じゃあネットの動画は…」
「一応部活アイドルですが、学校名は伏せてアップロードしています」
「でも制服で歌ってるから、もし特定されたらどうするの?」
「実は…そうなっても大丈夫なことになりそうなのです」
「というと?」
「我が学校が芸能方面に力を入れるそうです」
「何だって!」
己太郎らが通う有分高校は年々生徒数が減少してきたことを懸念し、学校側は廃校を回避するためにある事情から学校を離れることになったり、志望校には入れなかった生徒を集め転入させていた。アイドル部メンバーでは春日野蕾実も、当初は芸能人が通う高校に推薦入学するはずだったが、所属事務所の解散によるゴタゴタからお流れになり、入学先を有分高校に変えた。他のメンバーでは緒方歌恋の場合、かつて通っていた高校が廃校になってから有分高校へ転入した。樹咲美夢の場合では、ジュニアアイドル時代の過激な露出のグラビアをやってきたことから各高校に敬遠され、ようやく有分高校へと入学が出来た。
「そうしているうちにアマチュアタレントやインディーズのアーティスト、役者の卵など芸能活動をする生徒達が増えてきました」
「有分高校…まさに訳ありの生徒達を集めて請け負うのか」
「芸能活動しやすくするための学校になるでしょうね。それには先ず、活動内容の報告するため届出をするようにします。今回のもちゃんと届出を済ませてます。実績を積めば、学校名も堂々と表に出せます」
「芸能人が通う学校として名門校になれると良いね」
野村チーフも期待をかける。
「こういう仕事は覚悟してたけど…恥ずかしいというか緊張するというか」
歌恋はフラッシュを浴びながら初の水着撮影で戸惑ってた。
「それにしても美夢ちゃんやリリカちゃんは堂々としてるなあ」
「ジュニアアイドル時代に鍛えているからね、その頃はこれよりもっと過激な水着だったけど」
「リリカはコスプレやってるから、露出度高いキャラのコスだってしてたし」
「ところで何故初っ端から水着撮影?」
歌恋の疑問に己太郎が答える。
「最初は皆が恥ずかしそうなことをやってからの方が、後々気楽に撮影できるだろうと思って」
「ああなるほど、この後は私服やステージ衣装の撮影もあるから、確かに面倒なことは最初に済ませれば…あの部長、あんまりジロジロ見ないで下さい」
「ああ済まんな、歌恋もなかなか良いプロポーションしてると思って」
「もう、恥ずかしいこと言わないで下さい!」
「おっ今のリアクション可愛くて良いよ!」
そう言ったカメラマンにとってはシャッターチャンスであった。こうして撮影は順調に進んだ。
水着撮影の後は、外でのロケでいろんなファッションの撮影が行われた。恥ずかしさと緊張から解放されたアイドル部員達は、己太郎の思惑通り解放されたようにのびのびとした気分で撮影に取り組んだ。
「ホント部長の言うとおり、恥ずかしいのを通り抜けたら、後の撮影が清々しい気分で進んだわ」
「そうよね歌恋、最初に難しい課題を済ませておけば後は楽という、映画やドラマの撮影でもよくあることだわ」
初の水着グラビア撮影を済ませてからの歌恋と蕾実は意気揚々していた。
「それにしてもゆかりちゃん、私達と同じく初めてのはずなのに、何だか慣れてるって感じ」
「ええ、まあそうね」
ゆかりは実はプロのアイドルが転生したものだというのは蕾実の胸の中に秘めていた。
「よし、撮影も順調に終わりそうだし、その後はプロモーションビデオの撮影に歌のレッスンだ!まだ忙しくなるぞ!」
「はい部長!了解しました」
イベントに向けて前進するスクールアイドル部であった。
いよいよアイアイプロジェクト当日、有分高校スクールアイドル部は「桜乙女」名義で出店していた。新調したアイドル衣装を着た桜乙女のメンバーが揃っていた。今時のメイド風のアイドル衣装だ。
「うあぁいろんなインディーズのアイドルがいるのね」
「後で私達もライブのステージあるというし」
「いよいよ公の場で初ステージか…今から緊張する」
「大丈夫よ歌恋、私達ならできるわ」
「そ、そうね蕾実ちゃん」
「ねえねえ、あそこのブースに長い行列ができてる」
「ブースではなく美人や美少女揃いだけどね、リリカ達も含めて」
「親父ギャグか!」
「まあ紛らわしいから、昔みたくサークルとかスペースとか言いましょうか?」
五人は内輪ではしゃぎつつ、イベントを楽しんでいた。
「これ下さい」
「はい、お手頃価格になっております」
「ありがとうございます」
写真集は順調に売れていった。
「おい、あれ春日野蕾実じゃないけ?」
「あっ本当だ!」
蕾実に気付いた客人が寄ってきた。
「引退したかと思ったけど、まさかアイドル活動していたとは」
「しかも写真集で初水着らしいぜ!」
たちまち桜乙女のサークルに行列ができる。
「あの~オトロク親と見てました」
「握手お願いします!」
「は、はい、ありがとうございます」
蕾実を目当てとした客も多数来た。
「おおっあれはグラビアでお世話になったジュニアアイドル“美夢”じゃないの?」
「高校生になってから、ますます色っぽくなった」
「コスプレイヤーのリリカもいるぞ!」
「他の二人もなかなか可愛いし!」
客はどんどん増えていった。
こうして写真集は冊子とROM、歌のCDも売れていった。
「初めてにしては、わりと順調じゃない?」
「これもつぼみんパワーのおかげだよね!」
「い、いえ、そんな…プロポーションでは皆のほうが…」
「ゆかりんの巨乳のおかげでもあるし」
「ちょっとリリカちゃん!」
「皆のもの、そろそろステージの時間だ!」
「部長!」
部長の己太郎がやってきた。いよいよ桜乙女がステージで歌を披露する時間である。
「サークルの方は俺がやるから、ステージで思う存分に歌ってこい!」
「はい部長!」
桜乙女はステージヘ向かった。
「それでは皆様、いよいよアイアイプロのステージライブが始まります!先ずトップバッターは今、ネットで話題のスクールアイドル『桜乙女』です!」
司会者が桜乙女を紹介する。
「曲は『コスモス・ウェイヴ』です!」
桜乙女のメンバー達はゆかりをセンターにめいっぱい歌唱する。
「おい、あれネットの動画で『アイドル』歌ってた娘たちじゃないか?」
「ついにオリジナル曲でデビューか」
「センターの娘かわいい~おっぱいも大きいし」
「あの名子役の春日野蕾実がアイドルに?しかもインディーズ系の」
「インディーズというよりスクールアイドルというんだぜ」
「ジュニアアイドルの美夢もいるぞ」
「レイヤーのリリカもね」
来客が桜乙女のライブに集まって騒ぎ出した。その中で女性客が呟く。
「この曲…確か『コスモスのテーマ』?」
「そういやその曲歌ってた娘がいるね?」
「センターは別の子…彼女も可愛い」
どうやら彼女らはライブハウス・コスモスに来ていた客だそうだ。
「おお、どんどん盛り上がってきてる!」
サークルから桜乙女のライブを見守る己太郎。ステージは大盛況となった。
「はい、桜乙女の皆さん、ありがとうございました~さてここでメンバーそれぞれの自己紹介があります」
歌を終えて司会者が、次はメンバーの自己紹介へと進める。
「センターを務めました大張ゆかりです、高校一年です」
「ようやくデビューしました緒方歌恋、高校二年生です」
「春日野蕾実、高校二年生です、現在スクールアイドルになりました」
「樹咲美夢、高校一年生です、ジュニアからスクールのアイドルになりました」
「流リリカ、高校一年生です、アニメ大好きでコスプレイヤーやってます」
「さて桜乙女の皆さんはスクールアイドルとして活動されてますが、学校のほうは?」
「ちょっとまだ…学校の名前出すのは許可降りてないので言えませんが」
「でもこれを期にいろんな芸能人の学生さんが来ると良いなと思ってます」
リーダーとなった蕾実とサブリーダーとして歌恋が司会者に受け答える。会場の来客達の桜乙女へのエールが熱く飛び交う。
桜乙女の初オリジナル曲の披露が大盛況に終わり、物販も完売となった。
「皆よくやった!おかげで写真集もCDも完売だ!」
「部長、コミケ用のは…」
「安心しろ、CDの在庫は抑えてるし、コミケ用のは発注済みで抜かりない」
己太郎は小声で応える。
「ともあれ桜乙女の初ステージ成功したね、お兄ちゃん」
「ああ、これもお前達ががんばったおかげだ!」
センターを務めたゆかりやメンバーに労いの言葉をかける己太郎。
「次はコミケだ、それまで健康に気をつけておくように!夏だしコミケ当日は猛暑が予測されてるからな!」
「そういや私、コミケ行くの初めて」
そう言う歌恋をはじめ蕾実や美夢も初コミケである。ゆかりは兄の己太郎と一般でコミケに参加しており、いろいろリサーチしていた。
「そんな時は小学生の頃からコミケに参加してるリリカに何でも聞いてね!」
「私も何回かお兄ちゃんとコミケ行ったけど、リリカちゃんならその辺もっとよく知ってそうだし頼むね」
「やれやれ、コミケではリリカの方が先輩か…俺もリリカやその家族とスタッフに教えられていたし」
いよいよコミックマーケットに桜乙女が侵出する…果たしてどうなるか?
つづく
グラビア写真集の頒布やライブも好評だった桜乙女。いよいよコミックマーケットに桜乙女が参加することになるが、思わぬ出会いが待っていた。




