第15話 まるでそれが本能だとでも誤認識するように
【前回】フリューデも変態である事が確定した
第15話 まるでそれが本能だとでも誤認識するように
――新しい自分の姿を。
「うんうん、よくお似合いよ、愛し子。」
「……まぁ、シルアが用意したからな。」
自分でも簡単に折れてしまうんじゃないかと不安になる程に華奢で全く以て血の気のない肌の殆どは黒いローブのようなドレスに隠されて。その黒は夜空色の虹彩を夜空に見立て、その中にぽつんと紅の蛇のような月らしい瞳が浮かぶそれをより引き立てる。
半透明の脈動する蒼い鹿のような枝分かれした2本の角も、服が完全に月のない夜のような黒なので目立って仕方ない。まるでマントの長い裾が床を撫でるような尾も特徴的ではあるが、服も去る事ながら。この姿は魔女と言うよりも
「……魔王、だな。」
「ご不満?」
「いいや。……やってる事は魔王の所業その物だ。それこそ、このまま世界征服してしまう方が面白いんじゃないのか?」
「まぁ~ね。……私も愛し子がこの国を手に入れた日を境に堕落したもの。」
神及び神性の堕落によって得られる力はとんでもない。何せ堕落した神性の力というのは非公式な物ではあるが、実際世界には正の感情と負の感情を比べれば必然的に負の感情の方が多い。それ故、堕落した神性というのは必然的に爆発的な力を得る。
幾ら神がその数を増やそうと、幾ら神がその力を増そうと、負の感情というのはそれに総じてその力を増す。……誰かが幸せになる事で誰かが不幸になるからだ。
努力して何かを得ても、結局は才能を持っている者との差を疎んでしまったらその時点で堕落した神性の力となる。どれだけ誰かを愛していても、それが度を超えればそれは堕落した神性の力となる。要は、誰かが少しでもストレスを覚えたらその時点で堕落した神性の力へと変換されてしまう訳だ。
それ故、戦争と貧困。貧富の差や奴隷制度、階級制度に世界の何処を探しても何かしらの魔物的な脅威に牙を剥かれない国はないこの世界において、ただの神性よりも堕落した神性の方が強大な力を有している事は考えるまでもない。
そして何より、誰かを幸せにするよりも苦しめる方が簡単だというのも彼ら堕落した神性の強化に繋がっている。だから戦争はなくならないし、貧困も緩和されない。そうあってくれる事で得する奴が多数存在しているから。
その点、フリューデはとんでもないだろうな。
フリューデは一応九尾を象った神ではあるが、死や呪いと深い結びつきのある神でもある。九尾というのは吉兆の証であると言われている事もあるが、その吉兆を見出す為にしばしば不幸を己が身の9つの尾に溜め込み、それを奇跡に変換するとされている。それ故、九尾というのはただ吉兆の証という訳ではなく、正と負のバランスを保つ存在でしかない。
そんなフリューデはこの国が生まれ変わった際、この国中に大量発生した負の感情を餌に複数の力を得た事だろう。まぁそれがフリューデを堕落した神格へと変換させる理由ともなったのだが。
「安心しろ、フリューデ。これからこの国では未来永劫どんな時であろうと悲鳴と縁さの声が地上という蓋で隠されながらも日々続ける国になる。地上では何も知らぬ旅人達が我々に品定めされる中、着々と我々の手中に落ちて自我を少しずつ削がれ、やがては私とお前に対する信仰で魂が染め上げられて覆る事はない。……それ故、この国は常に優秀な者を集め続け、信者を増やし、国を拡げ続けなければならない。」
「害なる外の者達がその牙を研ぎ終えて喉元へ牙を突き立てる前に。」
「そうだ。……とりあえず、戦争したら必ず勝利を掴めるような強国に育てなければならない。それこそ、私が完全に裏方から出てくる必要がなくなるように。“そういう生態系”を作らなければならない。」
「やる事は多いわね、愛し子。」
「あぁ。だからこそフリューデ、お前にも存分に役に立ってもらう。」
「えぇ勿論。もっともっと私達の信者と駒と贄を増やしましょう、愛し子。その為ならばどんな事でも手伝ってあげる。」
――次回「第16話 敵を削ぐにはまず敵の味方を削ぐ事から」
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