第42話 供給元を抑えてしまえば
【前回】臣下希望のミュシェルを試す事にした
第42話 供給元を抑えてしまえば
――この手が届く全てを。
「カルストゥーラ様、ルイスさん、此方です!」
「あぁ、今行く。」
「ユユア、主様がお困りです。一体我々を何処へ連れていくおつもりで?」
「その扉の先ですわ!」
詳しい事はよく分からないが、ユユア曰く是非とも私に見てほしい物があるらしい。
一応はずっとユユアに対する洗脳が解けていないかの確認を行っているものの、今の所問題はない。むしろ、私がユユアに洗脳魔法を掛けた時よりもずっと侵食しているのが確認出来る。
そんなユユアは何故かどんどん王宮の地下へと我々を案内する。
ついさっき軽く聞いた話だと私に贈りたい物。かつ、どうしても見せたい物があるのだと言ってそれ以上は語らない。
「……主様、引き返しますか?」
「いや、罠だとしても興味がある。……だがもしもの時は頼む。」
「承りました、主。ではもうこれ以上は何も言いません。」
「着きましたわ!」
目の前に広がった、ユユアが開いた扉の先には幻想的な光景が拡がっていた。
青白く輝き、床全てを覆い尽くす水面に反射して壁も天井も芸術へ変えてしまう巨大なクリスタルが浮いている。
一目見ただけでも分かる程にこの室内の魔力濃度はとんでもなく高く、常に魔力を生産し。常に放出しを繰り返しているのが確認出来る。
「これ、は。」
「この国の魔力循環クリスタルです!」
「魔力循環?」
「はい! この国、魔道具が多かったでしょう? あれは全てこのクリスタルが循環させていますの! 人々から溢れる微量の魔力を住民届にサインを入れた人達からちゃんと許可を取って動いていますわ。」
「住民届にサインって、どういう事だ?」
「住民になる以上、国家に貢献せよと言う事で注意事項として記載されております。毎日ほんの少量だけ魔力を得て、元々この国の下にある大きな魔力の流れからも魔力を吸い上げて循環させていますわ。」
龍脈か。
龍脈というのは基本、何処にでも通っている大きな魔力の流れ。
これを利用する事で生物は魔法を行使する事が出来、利用する事が出来ている。そんな場所の上に循環装置を建てるとは……その影響力はかなりの物だろう。
「ユユア、でかしたぞ。これで計画のショートカットが出来る。ルイス、計画を最終段階まで飛び越す。」
「んな、さ、流石に危険ではありませんか? まだこの国の7割も掌握しておりませんのに幾ら何でも……。」
「安心しろ、ルイス。」
未だに魔力を循環し続ける、何も知らないクリスタルに触れて悪魔の力と私の契約の魔法 〈血烙の書〉を発動させる。
「私の魔法に最低限必要なのは “契約書と署名”。……別に血でも羊皮紙でもなくても構わない。だが、今度は契約書を守るのは私でも炎でもない、この国の者達だ。くく、難攻不落だとは思わんか?」
「……まさ、か。住民届を契約書として扱うおつもりですか!?」
「ああ。幸いな事にこのクリスタルに魔力供給する為に住民届にはこのクリスタルと何らかの関係を持つ魔法が常々発動している。ならば、貰うだけではなく与えてやらねばならんだろう? 契約とはgive and takeなのだから。もし何か異常があったとしても私に対するリバウンドはないが国を制圧してしまえば法律なり軍隊なりで此方側からは幾らでも制裁を下す事が出来る。そして、住民届は国家的に見てもとても重要度の高い物だ。……くく、何処の誰がそれに洗脳の魔法がかかっていると思う? 何処の誰がそれに隷属の魔法がかかっていると思う? 一体何処の誰が、それに魅了の魔法がかかっているなどと思おうか。しかも、都合の良い事に私も王に住民届を見せられたので少しは内容を覚えている。“国に貢献する証明として微量の魔力を日々納めよ”。……何をして国に貢献したかなど、何処にも詳しく定義されていないだろう?」
これで、傀儡国が誕生する。
青く美しいクリスタルは、時折その蒼を隠してしまう全てを呑み込まんばかりの影を落とした。
まるで、これから先の人間の国の未来を表しているかのように。
――次回「第43話 私だけの、傀儡国の誕生」
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