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悠久の宴にようこそ  作者: 夜櫻 雅織
第一章:森の覇者
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第28話 さぁ、もっとこの森を拡げておくれ

「気に入ってくれたようで何よりだよ。」


 そのままそこで苦しんで死ね。


 以前捕獲した、ルーナを追ってきた天使。そんな天使は今、ただの腐葉土代わりと成り果てた。

 屋敷の近くにある樹を1本植えられそうな場所へ魔法で熟睡させている天使を寝かし、その頭の近くに生物を養分とする寄恵樹(きけいじゅ)を植えた。結果として、この天使は寄恵樹のお眼鏡に適ったらしい。

 自分の根を伸ばせる範囲に居る獲物(天使)を求めて急激に成長し、今ではその脳が収まっている範囲の頭だけを幹に。根の中に呑み込み、自分が寄生するのではなく “天使を自分に寄生させ” て寄恵樹の役に立つよう洗脳し、その養分を吸って。時には寄生させている物からしか得られない栄養を作らせる為に寄恵樹から栄養を送る。

 それを繰り返していく事で寄生させられている側はどんどん自我を失い、思考する力を失い、ただただ寄恵樹の為に寄生させられている側しか生み出せない栄養。つまり、今回の場合は天使であるが故に魔力を宿した実を作る為の栄養。キノコのように寄恵樹の足元から天使の翼を作り出す為の栄養を送る。

 やがては寄生させられている側の栄養生産能力が、寿命が尽きるまでそのサイクルを繰り返した後に骨まで栄養に変えるのがこの寄恵樹だ。

 一度取り込まれればもう逃げる事は出来ない。今だって頭だけでなく耳、鼻の辺りまで樹の幹や根の部分に呑み込み、口の中にも大量の根が入り込んでいるのでかなり精神と神経の侵食は進んでいる事だろう。


「本当に何度見ても素晴らしい限りだな、この樹は。そのままもっともっと大きくなって、私の為に魔力の実と独自価値を産出してくれ。」


 この森はこうやって生まれた。

 元々はただの森だったがまだこの森に私が住み始めて少しの頃、面白半分で研究をしてみたらこういう事が出来た。その為、普通の樹を植えても面白くないからと侵入者を寄恵樹の餌にしたり、中には愚かな事に寄恵樹が自分から蒔いた種が偶然にもこの森で野宿だったり、少し仮眠を取っている間に新しい寄恵樹が生まれてを繰り返してここまで大きくなった。

 それ故、この森で生活するにはちゃんとした屋敷が必要になる。それも、寄恵樹に侵食されない結界の張られた屋敷が。

 それを知らない阿呆共のお陰で一気に大きくなったこの森はこの森の傍にあるシールクアーテとほぼ同規模の大きさとなっており、昔からここは森の魔女が住む死の森として有名だった。

 今でもそれは一切変わらない。

 そしてもう1つ面白い事に、この寄恵樹には自己防衛する能力がある。それに因り、何度かこの森を撤去しようと入ってきた者達が根に締め付けられたり、この寄恵樹達と共存関係にある特殊な自然進化を遂げた動物達によって惨殺され、また寄恵樹が増える。

 火で焼こうとしてもそもそもとして着火させる事が非常に難しく、火炎放射器やバーナー、何らかの火魔法を放ったとしても火が点く事はない。ただそれが森に対する荒らしだと思われて森に惨殺されるだけとなる。


 養分は養分らしくしていれば良い。所詮、私に喰われるか森に喰われるかの違いなのだから。

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