第21話 何にも怯える必要のない、仮初の楽園へ
「フリューデ、少し……散歩がしたい。背中に乗せてくれないか。」
『えぇ、勿論。』
竜人国ギルジェディーラは早々に後にした。確かにあそこは私が好きなホテルで、よくあそこに泊まってはいたが……あまり気分が宜しくなく、祭りが終わって直ぐに撤収した。
多少駄々を捏ねるのではと思っていたルーナも祭りを見れて、経験出来ただけでも満足したらしい。まぁ考えてみれば元々は天使だったルーナにとって、かなり貴重な体験が出来たであろう事は間違いない。
そう考えれば少しばかり無理をしてあの国に行ったのは多少なりとも価値があったのかもしれない。
「……何を考えているんだ、私は。」
『愛し子?』
「あぁいや、ただの独り言だ。……ただの。」
元々あの小娘を飼い慣らし、愚かにも私の言葉以外を信じられないぐらい。それこそ、宗教に嵌って受ける事が出来なくなった信者改め盲目な神の奴隷を作り出す事が目的だったはずだ。
なのに、あの小娘が嬉しそうで良かったなどと思うなど、随分やられているらしい。これはあまり良い兆候ではない。
それとは対象的に、ルーザとユルフは契約者。契約の重さ的にはルーザの方が全てを懸けているのでルイス達に近い、完全な新しい手足と呼んで良いだろう。ユルフの方ももしかすれば其方へ傾く可能性が高いものの、まだ断言は難しい。
まぁ、今回は以前ユルフが身を寄せていたエルフの集落での日常的な虐待や差別がかなり酷かった事により、少し服をずらしただけでもよく見える怪我を案じて旅行には行かせなかった。本人がそれを望んだというのも大きな理由の1つではあるが。
そんなユルフはここの所、私から見放されないようにと此方が対価と引き換えに用意してやった材料を使って実験の類を繰り返しているらしい。その結果がいつ出るかは分からないが楽しみは尽きない。
月明かりに照らされる森は、いつもよりも心地良い。
しかも今回はフリューデの背中に乗って森を走っているのもあり、呼吸もかなり楽に感じる。
『あ、愛し子。影拡げて。』
「影を……?」
『ほら、早く。』
フリューデに言われ、大人しく近くの大樹の近くに拡げているとラミア、ダークエルフの子が拡げてある影の中に足を踏み入れていくのを感じる。影と繋がっている足からは直接2人分の歩調……1人分の歩調と体を引き摺る感覚がする。
ラミアというのは下腿が蛇体、上体が女性である事がよく知られている種族だがちゃんと男性も居る。ただラミアの中で男性というのはかなり少なく、その上かなり珍しい事にラミアの男性はかなり体が弱かったり、体が短かったりする事から保護という意味でも子孫を残す為にも巫女のように何処かお堂のような場所に閉じ込められて文字通り種族に “飼われる” らしい。
今回見つけたラミアは残念ながら女性ではある物の、これだけまだ若い個体なら洗脳の類も上手くいくだろう。このまま引き摺り込んで、その為に用意した地下の施設に閉じ込めて少しずつ作り直していこう。
次に、ダークエルフ。ダークエルフもまぁ……エルフがこの森に住み着いていた事を考えればそこまでありえなくもない話ではあるが、エルフとダークエルフは以前よりそこまで仲の良い関係ではない。此方はエルフの中で禁忌とされている技術等を利用している事からそう言われ、肌が白銀ではなく漆黒である事からそう言われているそうだが私の方でもあまり詳しい事は分かっていない。
それも、今回得られるであろうこの個体で何とか研究してしまえるとかなり嬉しいが……やってみなければ分からない。
そんな彼らが仮にも絶対に逃げられない位置まで移動してからまずは足と蛇体を絡め取り、そのまま口を塞いでぴくりとも動けない程に拘束し。沼へ沈んでいくかのように呑み込みながらも記憶を、知識を吸い上げていればかくり、と意識を失う。
このまま最後まで吸いきれば、この子達は完全に私の玩具。それはもう大事に育てて飼い殺してしまおう。
私の手中でいつまでも、何処までも幸せに。




