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悠久の宴にようこそ  作者: 夜櫻 雅織
第一章:森の覇者

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第20話 遅くなって、悪かった

【前回】祖国、竜人国ギルジェディーラでのフラッシュバック

第20話 遅くなって、悪かった


――置いてきてしまった思い出はここにも。


「……来てしまった、か。」


 幼い頃によく訪れていたとある寂れた神社。

 竜種の納めるこの国家では時々私のような竜種ではない者が生まれる事があり、その大半が血を穢すと処刑された。そんな者達の恨みを恐れた者達が建てたそうだが今ではその文化も薄れ、管理する者も居なくなったここはいつの間にか廃墟と化している。

 だというのに、この神社に限らずこの神社のある森の中は不気味なぐらい、ずっと妙な気配がする。こっちを見ているような……タイミングを見てそのまま接触してきそうな、そんんな気配。


「……出てこい。他には誰も居ないから。」

『やっと、やっと帰ってきてくれたのね……!』


 ふわり、と背後から絡み付くように現れた真っ白な体に組み付かれ、撫でてと言わんばかりに頭を向けてくる様を見るとこれが神様だとは到底思えない。それでも、これが私を何度も救ってくれた神様である事は間違いなかった。

 ここを思い出したのは、少し薄情な話だが最近だった。

 二度と来ないと決めたはずのこの国に来る事が決まって、ふと「あの神様はどうしたんだろう」と強く思った。だから、こうして様子を見に来た。

 結果、当たってほしくなかった予想は当たってしまった。この神社には私しか居なかった、あの時この神社にこいつしか居なかったように。

 ただそんな事を欠片も気にした様子すらもない名も知らぬ九尾の神様はすりすりと甘えてきており、その毛並みに身を預けたり。顔を埋めたりするだけでもかなり満足する。


『ようやっと私の傍で生きてくれる決意をしてくれたの? だから、だからここまで来てくれたの?』

「……いいや。でも、大事な話をしに来たんだ。」

『大事な……話?』

「あぁ。……あの時私に寄り添ってくれたように、あの時私を助けてくれたように今度は私が力になりたい。実は、もう私はここに住んでないんだ。ここから遠く離れた所にある森の中で、その森を支配しながらそこで暮らしてる。……どうせここに居ても辛い事ばっかりだ、一緒に……来ないか? 他にも何人かは一緒に住んでるんだが、それでもこんな場所よりはずっと良いはずだ。」

『……。』

「駄目……か?」

『……ううん。あんなに弱々しくて、あんなにもずっと泣いてた子がまさか恩返しに来るなんて思ってなくって。そっか……そっか。もう、苦しめられてないんだね。』

「悩みの種は多いが……それでもあの時に比べれば幸せと呼べうる生活を送ってる。だからどうか、その輪の中に来てほしいんだ。」

『うん、うん! 貴方の頼みなら何処へでも行くよ。……。』

「……?」

『お名前、教えて。貴方の名前。それと、私にも名前を頂戴。』

「え……。な、まえ、ないのか。」

『うん。だから、貴方からの名前が欲しい。私だけの……大切な、名前。』


 名前……か。


 ずっと1人で生きてきて、少しでも豊かな暮らしや知識が欲しくてお金を稼がなければならないからと色んな契約等をこれまで行ってきた。その経過途中でルイスやシルアに出会い、彼らは永久の下僕とするような殺伐な生き方をしてきた私に名づけの経験などある訳がない。

 しかし、だからと言って目の前で私に撫でられながらもわくわくとしている様子のこの神様の願いを突っぱねる事など出来る訳がない。元々、私が散々救ってもらっていたというのに。


 ……じゃあ。


「……眠りと安らぎの言葉を掛け合わせて、フリューデなんてどうだ。昔言ってただろ、“私は眠りと安らぎと狐の神様なの” って。ならお前には似合うと思う。」

『フリューデ……。フリューデかぁ……! うん、良いと思う!』

「私はカルストゥーラ=ルエンティクだ。」

『カルストゥーラ、ルエンティク。』

「あぁ。」

『……。んふふ。愛し子って呼んで良い?』

「あ、あぁ……良いがそれだと名前を教えた意味がなくなるんじゃないか?」

『ううん、あるよ。ちゃんと、ちゃんとあるの。』

「……そうか。」

――次回「第21話 何にも怯える必要のない、仮初の楽園へ」


ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。

もし作品を気に入っていただけましたら、ブックマークやスタンプで応援いただけると嬉しいです。

感想なども励みになります。


今後とも『悠久の宴にようこそ』をよろしくお願いいたします。


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