第19話 褪せた思い出はいつも苦しく辛く
【前回】シルアの所為で変質者扱いされてしまうカルストゥーラ
第19話 褪せた思い出はいつも苦しく辛く
――心では割り切ったつもりでも、切って切り離せない物もある。
竜人国、ギルジェディーラ。
人口の全体を見ても竜人が多く、この国の出身でありながら竜人の姿をしていない者はあまりにも酷く、悍ましさですらも覚える程の酷い差別に苦しめられる国。それが、私の知っているギルジェディーラ。
その差別さえなければ、この国は潔白その物だ。王を崇拝し、自分達に誇りを持ち、旅人にも優しく接する。……ただ、竜人でない者が永住するのはかなり難しい国だ。
「やーいっ、劣等種!!」
「王家の恥さらし!!」
遠くで、幼い私に向かって石を投げてくる竜人の子が見える。この国ではそれも当たり前の事で、幾ら王家の血が流れる私ですらもその容姿が蛇九尾と言うだけで誰も助けてくれやしない。
あの子供達の親ですらも、それを止めない。さもそれが当然とばかりに王族たる私に暴力を振る我が子を放置し、そして激化しようとも止めない。
そんな母国が、私は嫌いだった。
城内でも場外でも差別を受ける日々。そんな私が吹っ切れた時、意外にも私を止められる者は居なかった。
大方、見た目が竜人でないだけでその血には本当に竜人国ギルジェディーラ王家の血が流れていたんだろう。純血の竜人達を軽々と屠り、抉り、殺し、裂き、その通りを全て
「お嬢様!」
「……しる、あ……?」
「……お嬢様、魘されてましたよ。大丈夫ですか?」
「…………あぁ。」
……そうか。着いたのか。
大方、ここに移動している途中の馬車で眠ってそのまま起きなかったのだろう。そして、それに気を遣って起こそうとしなかったに違いない。
高級感溢れるベッドに調度品。膨大な魔力に蜥蜴臭さを隠す為か、随分と気が緩む柔らかで優しい匂いのするアロマの類。……間違いない。私が気に入っていた、あのホテルだ。
あのヤンデレ気質な愚弟にしては色々と考慮してくれたようで、ここならこの不愉快極まりないこの国で、唯一私が好んでいるあの花火もよく見える事だろう。こんな汚らわしい国とは裏腹に、あまりにも美し過ぎるあの花火が。
「お、お嬢様……! ま、まだお休みになられた方が……!」
「……問題ない。シルア、お前は分かってくれるだろうが今の私はいつの間にここへ来たのか、その記憶がない。全て説明しろ。」
「はい、お嬢様。お嬢様が馬車の中でお休みになられた後、お嬢様のご兄弟の方にご協力いただきましてそのまま真っ直ぐ此方のホテルの、今さっきまでお嬢様がお休みになられていたこのベッドへお運び致しました。……あまりわたしどもは詳しい話を存知えないのですが、ご兄弟の方が仰るにはここはこの国1番の最上階ワンフロアを全て貸し切っておられるとか。」
「……成程、理解した。それで、他には。」
「勲章という、竜人国ギルジェディーラに滞在している間に限り効力を成すという、証を戴きました。……彼曰く、この勲章を見せれば全ての買い物が無料になるのだとか。」
「……随分ときな臭い話だけどな。幾ら王族とはいえ、そんな事しないだろ。」
「ルーザ様、あの御方と主はご兄弟なのです。……それも、かなり以前より主の為と、ありとあらゆる物を貢いでおられました。」
「……成程。割と馬鹿に出来ないって事か。」
「……とにかく、私は疲れた。もう少し……休む。」
「はい、お嬢様。良い夢を。」
「えぇ、主。安らかな夢を。」
――次回「第20話 遅くなって、悪かった」
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