第14話 どんな土産を用意してやろうかな
やれやれ、いつの時代も命を軽く見ているらしいな。
私が眠る前も、そのもう一眠り前も。いつだって知的生命体というのは生贄を以て願いを叶えようとする事が殆どだ。
現に、今目の前にはかなり緊張した様子の男のエルフと。その傍で、酷くやせ細り、頭の上や白い着物の合間より顔を出す真っ白な肌やこけた肌の見えるそれは例のハイエルフだろう。長い耳に高度な知性、魔力を持つあの。
今世紀2匹目の奴隷、だな。お前には何が出来るが……実に楽しみだ。
「して、何の用だ?」
「お、お初にお目に掛かります、偉大なる森の覇者。本日は折り入って、偉大なる森の覇者にお願いがあり参りました。」
「願い。」
「近頃、エルフの子供が人間に攫われるのです。……しかし、使い魔達を遣おうと、魔法を使おうとも見つからず、酷く心配なのです。……どうか、お慈悲を。」
成程、その代わりがそれか。
まぁ確かにたかがノーマルなエルフの子供数名分の価値はある。むしろ、それ以上の価値があるというのにこのエルフ達にはハイエルフの存在価値や、その利用価値に対する認識は随分と狂っているのだろう。
「……それがその願いを叶えるにあたっての代償、か。」
「は、はい、偉大なる森の賢者。……聞くに、偉大なる森の賢者はハイエルフに興味があると伺いました。これは我々エルフが保有する中で “最も力を持つ個体” にございます。どうか、これの全てと引き換えに我々の些細な願いをお聞き届けください。」
やはり、現代のエルフにとってハイエルフは奴隷と同等か。はたまた、それ以下なのだろう。
少なくとも私が眠る前までは立場が逆だったのだが、その記録も残っていないのか。それとも反逆によって立場が逆転したのかどうかは分からないが、何方にせよこれは好都合だ。
彼の時よりも、ずっと楽に稀少な生き物を集める事が出来るのだから。
この法則性が他にどれだけ適用されているかは知らないが、楽に手に入るのであればそれに越した事はない。
「ルイス。」
「はい、ここに。」
「そこのハイエルフをシルアの部屋へ。」
「承りました。……ハイエルフの娘、此方へ。」
口が利けないのか、それとも利かないように命じられているのか。一言も話さず、何処か生気すらも感じられないハイエルフの小娘はルイスと共に廊下へと消えていく。
これで私は生贄を受け取った事になる。となれば多少面倒である物の、何の価値もないエルフを助けに行かなければならない。
まぁそれもこれも、こいつらを全て洗脳する計画を進めれば将来的にはなくなる徒労……か。
「子供が人間に攫われた、と言ったな。見つからない癖にどうやって人間だと?」
「目撃証言が、ございました。狩人の格好をした人間の群れがエルフの子供を6人攫って森の外へ消えた、と。……不思議な事に、我等エルフの足で追い付けないスピードで。」
……成程。上手く狐に抓まれた訳だ。
これだから変にプライドの高い生き物は頭が足りていない。簡素で楽な事ばかりに興味が向き、碌に何も出来ないで種族の縮小を手伝った。たったそれだけの話だ。
だというのに、それも気付かないでのうのうと生きるこのエルフ達を森の賢者などと評した愚かな人間もまた、知能が足りなかったという事だろう。
「……お前は村に帰ると良い。契約の対価は正当に支払われた。契約は完了した。私は結果を出すとしよう。」
「あ、ありがとうございます!」
元の形で返すとは言ってないがな。




