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悠久の宴にようこそ  作者: 夜櫻 雅織
第一章:森の覇者

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第11話 何処まで出来るか見物だな

【前回】ちょっとした味見のつもりが、少しだけ機会を与えてみる事にした

第11話 何処まで出来るか見物だな


――たまにはこういう遊びもしてみたいからな。


 しまった、あのまま寝てしまったのか。


 そこまで疲れるような事をした自覚は欠片もなかったのだが、どうやら私が自覚している以上に体へ負荷を掛けていたらしい。まぁ半世紀寝ていたのにいきなり大きな運動をすればそれも仕方ないのかもしれないが。

 徐に体を起こし、ゆっくりと伸びをしながら目を開ければ彼方もいつの間にやら目を覚ましていたらしい。先に目を覚ましたは良いが起こすのには抵抗があったようで、おろおろしている所についぞ私が起きてしまったという流れのようだ。

 このまま向こうが口を開くまで放置しても良いが、もう長らく待った身だ。小娘には悪いが、少し急かすのも良いかもしれない。


「おはよう。」

「お、おはよう……ござ、ございます。」


 栄養失調の類でも起こしているのか、それとも心境的な物が影響しているのか。ようやっと目を覚まし、これもこれで世にも珍しい水色の瞳を大きく開きながらも言葉を紡ぐ小娘は何処かたどたどしい。

 幸いにも怪我の方はもうそこまで過保護的に心配する必要はないようで、満足に体も起こせているので心配は要らないだろう。


 まぁ、お前が死を乞うなら全てが無駄にはなるが。


「体の具合はどうかね。」

「だ、大丈夫、です。それで、その。ここは……何処ですか?」


 落ちてきた時の記憶はなし、か。いや、一時的な物の可能性もあるか……?


「ここは私の屋敷だ。私も詳しい事情は知らんが……突如この屋敷の中庭に落ちてきたお前を家臣が保護してな。生憎と天使や堕天使によく効く治療薬の類はなかったが……手持ちの物でもちゃんと効果があって何よりだ。」

「な、かにわに……。……た、助けてくださってありがとう、ございます。治療まで……。」

「なぁに、そんな細かい事は気にしなくて良いさ。」


 それはそれで楽しませているからな。


 過去にも先にも、恐らくだがこの森に。しかも、私の屋敷の中庭に墜落してくる者などそう居ない。これはこれで貴重な体験だと楽しんでいる身だ、何もお礼を言われるような事はしていない。

 それに何より、この小娘はこの後でまだ生を謳歌出来るのか。それとも後数時間の命かですらも確定していない状況だ。そんな状況、そんな状態でお礼を言われるというのはどうにも愉快だ。


 だからこそ面白いんだがな。期待が強ければ強い程、返ってくる恐怖や絶望の旨さは他では味わえんからな。


「して、小娘。行く宛てがないならこの屋敷に住むか? この屋敷はあまりにも広くてな、同時にあまりにも寂しい。とはいえ此方としても何も出来ない者を置いておく訳にもいかん。もしここに留まる事を願うなら私の2人居る使用人達から色々聞いて学べば良い。……それプラス、もう1つ対価を払ってもらう事にはなるが。」

「たい、か?」

「あぁ、対価だ。その翼の羽、美しい2対の羽を定期的に我々へ提供してくれ。それとお前の働きがある限りはここでの生活を認める。……これでも私は研究者のような物でな、ただ使用人として働いてもらうだけでは足りなくてな。」

「そ、そんな事で良いんですか?」

「あぁ、構わない。勿論、わざわざ抜く必要はない。求めた際に応じて翼を羽搏(はばた)かせた結果に抜けた物で良い。」


 後でルイスとシルアに言い聞かせておかなければ……いや、ルイスの事だ。何処かで聞いてくれているか。


 神とやらの奴隷でもあり、下僕でもあり、駒である天使というものはその神が作った楽園という名の檻から出てくる事が少ない為、こうして対の翼を持つ存在がどれだけ稀少なのかを知るよしもない。

 だからこそ、天使というのは堕天し易い。無垢であるが故に転じ易く、酷く不安定な存在。それが天使という物。


「しかし……折角1つ屋根の元で過ごすんだ、“小娘” では味気ない。名前は何と言う?」

「る、ルーナです。」


 やはり無垢……いや無知、か。


 魔法使いの殆どはその真名を知る事で相手を支配下に置く事や奴隷として隷属する事が出来る。中には記憶を覗く事や本当に意思すらも持たない操り人形に出来るというのに、すれすらも知識にないのだろう。

 これで、この小娘。半堕天使のルーナは私の物となった。

 もしも私に反抗するようであればその名を以て隷属し直し、ただの資金源として可愛がれば良い。必要とあらば、その身で稼いでもらうのも良いかもしれない。


 まぁ全てはお前次第。せいぜい足掻くと良いさ。


「ではルーナ、幾つかこの屋敷でのルールを説明する。1つ、1人でこの屋敷から出ない事。ああ、中庭は自由に出ると良い。そして、この部屋もお前にやろう。2つ、ルイスとシルア、そして私以外の言葉を信じない事。……まあ、稀に客が来るがその時はルイスかシルアを呼びに行くと言ってその場を立ち去れ。この屋敷に居るとはいえ、お前の歳と力では対抗出来まい。決して近付くな。例え我々が親しくしていても、許可するまで近寄ってはならん。3つ、我々の言う事は必ず聞け。これが出来ねばこの屋敷から……いや、お前を喰う事になる。我々は生物である限り、言語を持つ生物である限り全て捕食対象だ。死にたくなければ忠誠と従順を示せ。」

「は、はい!」


 血、一滴ですら無駄にはしてやらんからな?

――次回「第12話 もっと、もっと玩具を」


ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。

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今後とも『悠久の宴にようこそ』をよろしくお願いいたします。


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