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悠久の宴にようこそ  作者: 夜櫻 雅織
第一章:森の覇者
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第10話 この手を掴む覚悟はあるか?

「やぁ、こんばんは。」


 まぁこの程度で起きる訳もないだろうが。


 夕食時を過ぎようとも昏々(こんこん)と眠り続ける小娘は今も尚、ベッドの中で意識を溶かして動かない。

 別にリアクションを貰えないと寂しい、なんて事を思うような年齢でもなければ性格でもないのだが、あんまりにも無防備なその様子は正直言って目に毒だ。思わず魔が差してしまう。

 消すつもりなどないが、こういう時に限って自然と足跡を消してしまいながらもベッドの裾に座り、するすると左手の包帯を丁寧に外していく。決して傷付けないように、決して破れないように気を付けながらも1層。2層とその膜を剥がしていく。

 やがて顔を出したガーゼも取っ払い、(あら)わになった傷口はかなりの物だ。今さっき私がガーゼを取り上げたのもあってじわじわと血が(にじ)み出しており、恐らくだが傷の治りが限界で意識が戻らないんだろう。


 ……。


 そんな傷口を優しく開くように触腕を動かして。小娘が(うめ)く事も気にしないで傷口から1本触腕を肉の間に滑り込ませて魔力と血を吸い上げる……が、それが良くなかった。

 予想はしていたが、予想以上に魔力の濃度が高い。それと同時に流れ込んでくる記憶のような物も随分と酷い。

 幼い頃から迫害されていたのか、それとも何らかの要因があったのか。まるで夢でも見ているかのように……いや、時を超え、幽体離脱でもしてその場に居合わせたかのような鮮明さでこの子が扉と壁のような物の間から繊細な光景を見ているのが確認出来る。

 この子が、と言うよりはこの子の家系のような物なのか、それとも両親の何方かが原因か。どうにも種族内で馴染めておらず、酷い迫害に遭っていたようだ。


「少なくともこの時は……。いや、これが要因で堕天化が進んだ、か?」


 まぁここで何を言った所で時間を戻せる訳でもなく、抉る事は出来ても過去を変える事は出来ない。余計な励ましは所詮、ただの煽りかナイフにしかなりえない。

 これ以上余計な物を見ないようにする為にも包帯やらガーゼやらを添え直し、布団も掛け直してやるが目を覚ます様子はない。当然だ、あの薬が効いているし、体は体で自己修復に忙しい。意識を保っている余裕などある訳もない。


 ……。


「……少しだけ遊ぼうか、小娘。チャンスだけはくれてやる。物にするかどうかはお前次第だ、お前の執念を見せてみろ。」

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