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悠久の宴にようこそ  作者: 夜櫻 雅織
プロローグ
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第1話 何か良い事でもあれば良いのに

 時の流れが移ろうのは非常に早い。気付けば何十年、何百年と経っては時折捧腹絶倒(ほうふくぜっとう)しそうなぐらいに面白い事があったり、くだらなすぎて二度寝する事だってある。

 所詮、いつの日もそんな物だ。平穏という言葉はそう馬鹿にする事が非常に難しく、こうして口を開けて獲物が来る事を待っているだけの日々にはよくお似合いだ。目立った事はそうそうなく、あったとしても所詮はただの暇潰しで終わる。……そんな日々は、あまりにもつまらない。



 だからこそ、私は長く眠る事にした。



 人間共の語る御伽噺(おとぎばなし)に出てくるような、私が魔王で、その魔王を打ち滅ぼそうとした勇者が何とか命からがら私を封印する為に眠りの魔法を掛けた訳でもなく。何かの魔道具を解体している最中で返り討ちに遭い、情けない事にそのまま深く眠る羽目になった訳でもない。ただ、その生活習慣を人間共のサイクルやテンポから私が本来歩むべき時間の価値観へと戻しただけの事。

 私は、人間ではない。それ故に長寿な生き物と言うのは人間のような短命の生き物とは違い、気も長ければ知恵もあり、力もあり、そして何より土地を持つ。土地とは財産であり、人間のように何世代にも渡らなければ1国程度の土地を持つ事の出来ない脆弱な生命とは違う。

 それ故、何百年と眠りこけ、その隙に土地が一時奪われようとも再度それを引っ繰り返して取り戻し。私が眠っているからと頭に乗ってその汚らわしい土足で、知恵もなければ価値のない存在達が絶望に染まり、苦しみながら死んでいく様を眺め、生き残った者達を奴隷のように扱ったり、玩具にしてしまったりするのが最も楽しい。……非人間族というのは、そうやって長い一生の楽しみを得る。長い一生の、ほんの一幕にしかならない暇潰し。



 しかし、その暇潰しが非常に楽しいと言う点に関してはいつの時代も変わらない。



 研究に没頭して知識欲を満たす日々も、それを満たす為の。その為の好奇心を、その為の興味を惹くだけの研究ももう存在しない。ありとあらゆる物を研究し尽くし、以前まではその叡智を奪わんとする良いカモも居たというのに今では何もかもが学びやがって何も面白くない。


 ……あぁ、つまらない。



 書庫にある本を読むのも飽きてしまった。

 変化のない森を見るのも飽きてしまった。

 小動物達と話すのでさえ飽きてしまった。


 今の世は、何もかもがつまらない。



 愚かな人間共の他にも多種多様な他種族達が領地を、金を、奴隷を、財宝を、時には愛の為にくだらない戦争を繰り返すと言うのに私の周りは実につまらない事ばかり。何なら私の事など世界が忘れている可能性ですらある。



 以前は戦争が一度起これば召喚され、

 戦争が二度起これば供物が捧げられ、

 戦争が三度起これば元凶とされ、討伐隊が組まれて全員を夕食に変えた。



 何か、(たの)しい事でも起こらないかなぁ。

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