表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ちょっと怖い体験談。  作者: こゆき
2/2

02 黒い影

 私は、グループホームで6年仕事をしてきた。

 そのため、何回か不思議な体験をしたことがある。

 

 ……と言っても、そんなに大した事はない。

 某恐怖番組のような体験談はないので悪しからず。

 

 

 

 とある入居者さんがいた。

 認知症が酷く、体格の良いおじいちゃん。

 グループホームは家事も仕事という特性のため、目に見えて女性職員が多い。

 そのため、その入居者さん……Sさんには、とても困っていた。

 

 なんてったって、暴力を振るわれる方だったから。

 

 介護あるあるだけど、よくあるからってそれが好ましい訳がない。

 お年寄りとはいえ、理性の欠いた男性の全力の暴力というのはなかなかの脅威だ。

 どうしたものか、と職員同士で頭を悩ませていた。

 

 そんな時の、夜勤明け。

 午前4時くらいのこと。

 

 一通りのオムツ交換と、トイレ掃除が終わって、リビングルームで記録を書いていた時。

 早起きの入居者さん達は動き始める頃合だったから、電気を全部つけていた。

 そろそろ、春になる頃合だったと思う。

 

 ふと、横から気配を感じた。

 

 いつの間にか、Sさんが起きてきているのかと思った。

 気配を感じた場所が、よくSさんが立っている所だったから。

 

 そして、そっちを見て。

 

「!!!」

 

 

 そこに立っていたのは、真っ黒な人影だった。

 

 

 真っ黒な人影が、こちらに手を伸ばしている。

 

 ……一瞬しか見えなかった。

 直ぐに怖くて目を逸らしたから。

 ほんの一緒だったけど、確かにその時は『そこに黒い影がいる』と、そう思った。

 

 思いっきり飛び退いて、もう一度そこを見て、けれど何も居たりしなかった。

 物凄い心臓がバクバクとしていて、部屋の隅に落ちる暗がりが何だか不気味に思えて。

 急いで、普段付けないような間接照明も付けまくった。

 

 そして、怖いのはこの後。

 

 

 Sさんが、私がちょうど黒い影を見た数日後に、亡くなったのだ。

 

 

 さすがに思い違いだと思いたい。

 今思うと、黒い影なんて見なかったのかもしれない。

 夜勤で疲れて、幻覚を見たのかもしれない。

 

 けど、その時の私は、確実に『黒い影』を見たと思ったのだ。

 

 亡くなったのも偶然だろう。

 ──そう思いこむことにした。

 

 不確かで、誰にも言ったこともなかった体験。

 私が介護士をしていてハッキリと『何か』を見たことは、これが最初で最後だ。

 

 あれから、私が黒い影を見ることはない。

 

作者は零感です。幽霊とかも「まぁいるかもなぁ」くらいのタイプだけど、実際に体験したもんはしたもんで受け止めてるクチです。


信じるも信じないもあなた次第、ってやつですね!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ